『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ
『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ

ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では「漫画」について語った。

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★今週のひと言「漫画家を本気で志した僕の人生に影響を与えた漫画4選」

僕は幼少期から大学を卒業してラッパーになる直前まで漫画家を志していた。そこで今回は、僕の人格形成にも大きな影響を与えたであろう漫画作品を文字数の許す限り紹介していく。

まずは山口貴由たかゆき)先生の『覚悟のススメ』だ。今からおよそ30年前、行きつけの銭湯で『週刊少年チャンピオン』をたまたま手に取ったのがキッカケだった。

当時、『週刊少年ジャンプ』ではスレンダーな主人公が活躍し始めていた一方、筋肉絶対主義を貫く『週刊少年チャンピオン』の誌面では、『グラップラー刃牙(バキ)』や『覚悟のススメ』などで生々しい筋肉の躍動が輝きを放ち続けていた。特に『覚悟のススメ』においては、今では考えられないが、当時としてもなぜそれがまかり通っていたのか謎なのだが、女性の陰毛などの描写が許されており、小学生だった僕はそのとっぴなストーリーとともに大きな衝撃を受けた。

当時『週刊少年ジャンプ』が主流だったため、『週刊少年チャンピオン』を愛読するようになってからは、学校のクラスに漫画の話ができる相手は一切いなくなってしまったが......。

そして中学生になり、依然プロの漫画家を志していた僕に多大な影響を与えると同時に、致命的な勘違いをさせたのは、『週刊少年チャンピオン』と間違えて購入した『月刊少年チャンピオン』で出合った高橋ヒロシ先生の『クローズ』。

この作品から受けた「女性キャラクター抜きでも作品が成立する」という勘違いのもと、武骨な男を描くことだけに特化してしまった僕は、自身の男性キャラクターの画風に見合った女性を描けなくなってしまったのだ。

登場するのは筋肉質な男性のみ、という大きなハンディを背負った上でのストーリー展開はやはり無理があり、大学生の頃、初めて描き上げた短編を『週刊ヤングジャンプ』の月間賞に投稿するも、箸にも棒にもかからなかったのはわれながら因果を感じる。

そして、これは今後また改めてテーマとするつもりだが、僕は近い将来、自身の肉体をサイボーグ化して不死の肉体を得るつもりでいる。その思想の根っこにあるのが、中学生のときに古本屋で出合った、木城ゆきと先生の『銃夢(ガンム)』だ。ゴミだめのスラムに暮らし、改造され機械のカラダに生身の脳を持つサイボーグたち。その一方で、憧れの空中都市に暮らす天上人たちはカラダこそ生身だが、脳は生まれると同時に電子チップと交換されている。

僕はそのいいとこ取りで、生きているうちにカラダをサイボーグにして、脳も僕の記憶や思考パターンを書き込んだチップに交換してもらいたいと思っている。これは冗談ではない。

そして最後に、ラッパーとして、呂布カルマとして、僕に最も影響を与えたのは、新井英樹先生の作品群だ。

特に思い入れが強い作品は、僕が大学を卒業し、長年志していた漫画家になる夢からコロッと乗り換え、ラッパーとして活動を開始したタイミングで古本屋で出合った『ザ・ワールド・イズ・マイン』である。

その頃は2001年9月11日に発生した「アメリカ同時多発テロ事件」から間もなく、世の中がテロリズムに対して最高に敏感になっていたときで、すでに連載は終了し、絶版となっていたこの作品を僕は古本屋を駆けずり回るようにして少しずつ集めて読んだ。

駆け出しのラッパーとしてとがりまくり、無駄に殺気立っていた僕は、『ザ・ワールド・イズ・マイン』の目まいがするほどの圧倒的な暴力性と理不尽のとりこになったのだった。

●呂布カルマ(Ryoff Karma 
1983年1月7日生まれ、兵庫県出身。名古屋市在住。JET CITY PEOPLE代表。ラッパーとして活躍する一方、グラビアディガー、コメンテーターとしても異彩を放つ。 公式X(旧Twitter)【@Yakamashiwa

撮影/田中智久

『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ