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昨今増加する、痴漢や盗撮犯を捕まえて警察官に引き渡す、“犯罪撲滅系”YouTuber。行き過ぎた取り締まりに対して“やりすぎ”という指摘も寄せられるなか、ある動画が波紋を呼んでいる。

問題となっているのは、YouTubeチャンネル「ガッツch」に、“覚醒剤の売人を捕まえる”というテーマで10月14日に公開された動画。匿名の情報提供者から「覚醒剤の取引が行われる」とのタレコミがあったことを受けて、警察署に電話で通報するところから始まる。

ガッツchを運営する中島蓮氏は「警察を介入させるってことがどういうことかわかっているので、信憑性の高いものじゃないとこうやってお電話しないです」として、取引場所と時間、服の特徴を伝えると、警察署の担当者は「近くの交番に伝えた」と対応。しかし、その対応に不服だったのか中島氏は「捕まえる気ないっすね、バカや」と話し、「もう俺たちが声かけて…」と取引予定現場へ向かう。

駅の券売機の前にいる、取引する人物らしき男性を見つけ「〇〇さんですか?」と声をかけると、男性は「そうそうそう」と反応。次の瞬間に「交番行きましょう」と中島氏が言い、男性は「え?」と驚く。その後、唐突に「何も持ってないですよ?」「〇〇さんって何?」と慌てる。

しかし「〇〇さんじゃないんですか?」と問われると男性は「違います」と否定。すると中島氏は「じゃあ警察の方呼んで事情を説明して」と告げ、混乱する男性に「持ってるの、濃厚じゃないですか」と詰め寄る。「何なんですか、触らないでください」とその場を離れようとする男性の行く手を投稿者らが前後で囲み「交番に行きますよ」と言って服を掴み、逃げようとする男性の首を抱え、地面に押し倒す。そこに警察官がやってきて、投稿者は「この人です。覚醒剤です」と伝える。

交番に移動し、男性が交番内で取調べを受ける間に、投稿者らは外で別の警察官に「羽交い締めにした奴は誰?」「なんでそこまでするの?」と聞かれると、「何回もいったのに逃げるから」と説明。それに対し、何の嫌疑か聞かれると「覚醒剤です」と答え、なぜわかるか聞かれれば「匿名の情報」だから。「嘘だったら?」と聞かれれば、「信憑性かなり高いと思ったから」。暴行に当たる可能性を指摘されると「それならそれで結構なんで、覚醒剤撲滅できればそれでいいです」と言い切った。

別の警察官が再び「我々も今調べてますが、彼が確実にそういうことをしてるってのがわかってるんですか?」と聞くと「情報提供に信憑性を感じたからやってます」と同様に回答。「あなたたちが信憑性を感じただけですよね」と指摘されると、「何が言いたいんですか?」と声を荒げる。警察官が「あなたたちが道を歩いてる人に職務質問をすることはできないでしょ? 我々とは違うことはわかってます? 今回あなたたちはそういうことをしたってことなんですよ」と諭そうとすると、中島氏は「何が言いたいんですか、マジで」「圧倒的に俺たちの方が(警察の到着より)早かったんですよ」と主張した。

さらに中島氏は「声をかけて警察行こうって言ったけど逃走したんで、ある程度の実力行使はしますよ、当然」とし、警察官も思わず無言になるが「あなたはどういう権限を持ってやってるんですか?」と再び問うと、「覚醒剤所持の現行犯じゃないかなと思ったから」と回答。

「“思った”からってこと?」と確認されると、「何が言いたいんですか?」と警察官を牽制。「だって見てるわけじゃないでしょ」と追求されると、「だから何が言いたいんですかって!」と声を荒げ、「見てないんですよね。あなたたち職務質問する権限・・・」と私人逮捕の要件のひとつである”現行犯”ではないことを指摘しようとする警察官に「だから何が言いたいんですか」と食ってかかった。

中島氏は苛立った様子を見せながら大声でまくし立て、20分前に通報したのに来なかった警察が悪いとの持論を展開。さらに警察官に対し、「覚醒剤撲滅させる気ないでしょ」「お前そんなんで協力すると思うなよ、バカか」と吐き捨て、「こういう態度で協力する人はいないですよ、肝に銘じてください」などと指摘。最終的には「もういい、話したくないんで」と会話を打ち切り、その場を後にした警察官のことを「やばいでしょ、やばすぎ」と批判した。

この投稿者のYouTubeのコメント欄には、いつもは賞賛の声が多く集まるのだが、今回ばかりは批判的なコメントも散見された。

《前々から私人逮捕の要件満たしてないのにやりすぎだろみたいなこと言われてたけど
今回ようやく警察側からもその話が出てよかった》
《警察が圧倒的に正しい。現行犯なら分かるが、証拠も何もない状態で匿名の情報を鵜呑みにして正義を振りかざすのは自己満に過ぎない。何の権限があってやっているのか全く分からない》
《こんな私人逮捕が許されてたら法治国家としての根幹が揺るがされる》