スズキの世界戦略EV第一弾の「eVX」
スズキの世界戦略EV第一弾の「eVX」

スズキ東京ビッグサイト東京都江東区)で開催される「ジャパンモビリティショー2023」(10月26日11月5日まで)に出展するモデルを発表。スズキが描く近未来とは? 長年、スズキを取材してきたカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏に特濃解説してもらった。

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渡辺 スズキが「ジャパンモビリティショー2023」へ出展するモデルなどを発表しました。

――かなり興味深い発表だったそうですね?

渡辺 スズキの"近未来"が見える内容でしたね。

――スズキというと、軽自動車のイメージが強くあります。具体的にはどんなモデルが出展されるんスか?

渡辺 EV、軽、新型スイフト、次世代四脚モビリティを筆頭とした複数の電動小型モビリティなどですね。

近未来にも程があるeVXの内装
近未来にも程があるeVXの内装

――テンコ盛りですね。それではEVから解説をオナシャス

渡辺 スズキのEV世界戦略車第一弾が「eVX」になります。今年1月にインドで公開されたEVで、航続距離は500㎞を誇ります。外観は力強いSUVのスタイルで、全長は4300㎜と短く、全幅は1800㎜とワイドです。運転のしやすさと走行安定性を両立させています。SUVですから全高は1600㎜と高く、EVのパワーユニットを搭載しても居住空間は広い。

スズキの軽EV「eWX」
スズキの軽EV「eWX」

――そのほかのEVは?

渡辺 スズキが得意な軽自動車サイズでは「eWX」が披露されました。EVでも従来の軽自動車と同様、便利に使える機能を重視しています。

――渡辺さん、eWXはどこかで見たことがあるようなデザインですよね?

渡辺 水平基調の外観、SUV風のボディサイドなど、ハスラーに似ていますよね。真っ直ぐなインパネも同様です。スズキではワゴンRもフルモデルチェンジの時期に来ており、このデザインコンセプトをベースに、EVと共通のプラットフォームで新型のワゴンRハスラーを造るかも知れませんよ。

軽EV「eWX」の内装。このまま発売してほしい
軽EV「eWX」の内装。このまま発売してほしい

――なるほど。ちなみにeWXの性能は?

渡辺 1回の充電で230㎞を走行できます。日産の軽EV「サクラ」の180㎞を軽く上まわります。街乗りが中心の軽自動車では十分な航続距離だと思いますね。

――そのほかのEVは?

渡辺 商用車の「eエブリイ」も出品されます。このモデルはスズキダイハツトヨタの共同開発車です。EVは開発と製造のコストが高く価格も高騰しやすい。そこでライバル同士のスズキダイハツが手を組みました。

商用車EV「eエブリイ」
商用車EV「eエブリイ」

――EV以外のクルマは?

渡辺 市販が迫った「スペーシアコンセプト」&「スペーシアカスタムコンセプト」、「スイフトコンセプト」が発表されました。

――まずスペーシアから解説してください。

渡辺 スズキの国内最多販売車種で、全高が1700㎜を超えるスライドドアを備えた軽自動車です。新型の外観は「コンテナ」をモチーフにデザインされ、水平基調のボディなどにより大容量の室内を表現しています。

軽自動車「スペーシアコンセプト」
軽自動車「スペーシアコンセプト」
軽自動車「スペーシアカスタムコンセプト」
軽自動車「スペーシアカスタムコンセプト」

――新型の特徴は?

渡辺 まず安全装備が進化します。従来型のデュアルカメラブレーキサポートが、デュアルセンサーブレーキサポートⅡに発展して、自転車や2輪車も検知します。右左折時には横断歩道上の歩行者にも対応します。前後両方向の低速時ブレーキサポートも加わります。車内では後席の座面の前端にマルチユースフラップを装着しました。ミニバンのオットマンに似た装備で、乗員のふくらはぎを支えて快適性を高めます。

――発売時期を予想すると?

渡辺 販売店によると、10月7日頃から見積書を作製している店舗もあります。正式発表は11月下旬で、12月に入ると試乗も可能でしょう。来年1月3日から始まる「スズキの初売り」はスペーシアが主役です。

走りが楽しみな「スイフトコンセプト」
走りが楽しみな「スイフトコンセプト」

――スイフトはいかがです?

渡辺 次期型はボンネットを低めに抑えて、視界を向上させながら躍動感も表現します。後席のサイドウインドーの形状も変わり、後方視界も向上しました。今から試乗が楽しみなモデルですね。

――スズキのパーソナルモビリティがおもしろいらしいスね。

渡辺 はい。ご存じのように今年7月に道路交通法の一部が改正され、新たに特定小型原動機付自転車の区分が設定されました。速度が時速20㎞に制限され、今は電動キックボードが主な商品ですが、正直言って走りが不安定です。そこでスズキは、このカテゴリーに属するスズライドとスズカーゴを開発! ひとり乗りの小さなEVになります。

電動パーソナルモビリティ「スズライド」
電動パーソナルモビリティ「スズライド」
電動マルチユースモビリティ「スズカーゴ」
電動マルチユースモビリティ「スズカーゴ」
電動新モビリティ「スズキゴー」
電動新モビリティ「スズキゴー」

――具体的なスペックは?

渡辺 スズライドは全長が1300㎜で、座席の下は収納ボックスです。スズカーゴは全長が1900㎜と長く、ひとり乗りの小さなトラックという感じで実にカッコイイ!ホイールベースも長く安定性も良さそうですよ。高齢者向けの小さなEVは既にありますが、率直にいってカッコ良くない。福祉関連のグッズは、車椅子からステッキまで、プライドを持って使えるカッコ良さが重要です。その意味でスズキゴーも秀逸ですね。

――そして、激アツなのがアニメの世界から飛び出したような見た目のモクバです!

渡辺 自在に動く4本の足にホイールが装着され、階段の上り下りもできます。アタッチメントにより、ユーザーが跨がって乗るほか、担架として使う救命救急仕様、荷物の運搬も可能とのこと。デコボコを乗り越えるので災害時にも役立つでしょうね。

階段も段差もシームレスに移動できる次世代四脚モビリティ「モクバ」
階段も段差もシームレスに移動できる次世代四脚モビリティ「モクバ」

――最後に総括を!

渡辺 スズキは長年、軽自動車造りで積み重ねてきた知見や技術を活用し、近未来モビリティなどをコンパクトかつカッコ良くスマートに仕上げていました。これからさまざまな分野にこの"スズキ流"が生かされていくと思います。

●渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう) 
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

写真提供/スズキ

【写真】eVXの内装や「スイフトコンセプト」なども公開!

スズキの世界戦略EV第一弾の「eVX」