大阪・関西万博で商用運航に間に合わないと報じられ話題となった「空飛ぶクルマ」。世界で初めて実用化されたとされるモデルのデビューは70年以上前に遡ります。この機の仕様は、かなり「自動車寄り」のものでした。

車体に翼ついてるぞ!

2025年の大阪・関西万博で運航を予定していたものの、量産化・ならびに商用運航に間に合わない見込みであると報じられたことでも話題となった「空飛ぶクルマ」。この始まりはどのようなものだったのでしょうか。初めて実用化されたといわれている「空飛ぶクルマ」は、現代のそれとは大きく異なるものでした。

現代の「空飛ぶクルマ」は一般的に、ヘリコプター・固定翼機のようなルックスを持ち、電気を主な動力源とし、垂直離着陸機能を有す「eVTOL」機が多数です。しかし、「クルマ」の愛称がついているものの、地上走行には対応していないものがほとんど。

また、動力のほか、設計の違い、ヘリポートなどの大掛かりな設備を必要としないなどの差はあるものの、機能的にはほとんどヘリコプターと変わらず、実質的な機能の面で見ると「電動ヘリ」もしくは、「人が乗れるドローン」といっても差し支えないものが多数といえるでしょう。

しかし、初めて「空飛ぶクルマ」の量産機とされたことで知られる「テイラー・エアロカー」は、現在のそれよりも遥かにクルマらしいものとなっています。一般的な乗用車の車体の後ろに、折りたたみ式の翼とプロペラがついているのです。

開発は1940年代から始まったそうで、計6機が製造。最終号機である6号機は、シアトルの航空博物館に展示されています。

実際飛べた! しかもけっこう長く!

この「テイラー・エアロカー」は、地上走行と飛行の両方に対応し、自動車モードから飛行機モードへの切り替えは15分ほどで可能だったとのこと。

離着陸は固定翼機のように滑走を必要するものの、最終号機の場合、地上走行時の最高速度は96km/h、飛行時の最高巡航速度は224km/hで、高度3600mを巡航し、800kmの航続距離をもっていたそうです。

ちなみに、現在の「空飛ぶクルマ」のなかにも、自動車のようなルックスをもち、地上走行・飛行の両方に対応できるよう開発されているモデルも存在します。

アメリカのスタートアップAlef Aeronautics社が開発を進めているこの機体は、2025年に実用化することを目標に開発が進められており、キャビンを除くボンネットからドア上部、トランクにかけてボディ上面全体がグリルのようなシースルー構造になっています。飛行する際は、車体の角度を変え、ボンネットとトランクの部分を“翼”として使用。車体内部には、推進力を生むプロペラが入っており、それを回すことで空中を前進するとしています。

「テイラー・エアロカー」(乗りものニュース編集部撮影)。