金利と物価の関係、金利が動くと為替や株価がどうなるのか、低金利の今は何に投資したらいいのか、金利が上がったら投資活動をどう変えたらいいのか、など。「金利」を理解すれば、資産の増やし方を自分で考えて決められるようになる、とFPコンシェル株式会社代表取締役でFP兼マネーコンシェルジュである福本眞也氏は言います。本稿は、福本氏の著書『お金は「金利」で増やすのです』(大和書房)より、一部抜粋して紹介します。

ビッグマック1個の価格、韓国は30位、日本は…

日本では物価が高くなっていますが、それでもアメリカやヨーロッパの国々から見れば、まだまだ日本の物価は安いのが現実です。今の日本は、世界的に見て非常に物価が安い国なのです。昔は日本に出稼ぎに来る外国人も多かったのですが、今は逆に日本からオーストラリアニュージーランドといった海外に出稼ぎに行く人も多いほどです。

中国や韓国などからの観光客が日本で大量の商品を買う「爆買い」がニュースなどでもよく報道されていました。彼らがなぜ日本で爆買いをするかと言うと、当たり前のことですが、商品が安いからですね。自分の国で購入するよりも安いから、たくさん購入して帰国していくわけです。

各国の物価を比較する指標として、よくマクドナルドのビッグマック1個の価格が使われます。2023年1月26日に発表になったビッグマックの価格ランキング(イギリスの経済専門誌「エコノミスト」のレポート)では、1位はスイスで日本円にして944円、2位はウルグアイで891円、3位はノルウェーで857円、4位はスウェーデンで731円、5位はデンマークで704円となっています。アメリカは6位で、日本円にして697円です。一方の日本は、410円で41位。ちなみに韓国は30位で516円、中国は36位で460円です。

いかに日本の物価が安いかわかってもらえると思います。アジア圏の人々だけでなく、ヨーロッパ圏の人々からも観光地として日本が人気なのも頷けます。

政府は、日本を観光立国とする政策を打ち出し、2020年までに訪日外国人観光客数を2000万人にするという目標を掲げました。観光業を日本の力強い経済を取り戻すための重要な成長分野と位置づけたわけです。

施策は想像以上に功を奏し、2019年には年間の訪日観光客が3000万人を突破しました。その後、残念ながら新型コロナウイルスが蔓延したために観光客は激減しましたが、パンデミック前までは順調に観光客が増加していたわけです。観光客を受け入れるためのホテルが競い合うように建設され、インバウンドという言葉が一般的になるほど、小売業や飲食店も盛況でした。

これほど多くの外国人観光客が日本を訪れるようになったのは、宣伝やプロモーションがうまくいったこと、格安航空会社が台頭してきたこと、東京オリンピックの開催が近づいていたことなど、様々な要因が絡み合っていますが、日本の物価が安いというのも、大きな要因だと考えられます。

日本の物価が安いワケ

では、なぜ日本の物価は安いのでしょうか?

それは、円安だからです。円の価値が低いからです。 今はアメリカの金利と日本の金利の差が開いているため、円安ドル高になっています。そこにロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格高騰が加わり貿易収支は大きな赤字が続き、外国との取引における日本の儲けを示す経常収支も減り続けています。これは日本の国力が弱体化している証ですので、さらに円安の要因にもなります。

世界の基軸通貨である米ドルに対して、円の価値が下がっているわけですから、当然ながらユーロや中国人民元といった他の通貨に対しても円安になります。

アメリカの金利と日本の金利の差が大きい→円安になる→世界から見ると日本の物価が安くなる

実際には日本国内では物価が上がっていますから、日本に暮らしていると実感できないかもしれませんが、世界から見れば日本は物価の安い国なのです。

円安になると、 輸入品の価格が高くなる

外国人の旅行者にとっては、日本は物価が安いわけですが、日本人にとってはどうでしょうか。円安に振れている今、日本国内に住む私たちにとって、物価はどういった動きをするでしょうか。確実に言えることは、輸入品が高くなる、ということです。例えば、ワインやチーズといった嗜好品はかなり高騰しています。1年半ほどで約1.3倍になったものも多く、中には倍近く値上がりしたワインもあります。

また日頃の飲食料品も物価高に見舞われています。日本は、大豆や小麦といった原材料を輸入に頼っています。小麦は政府が一旦買い取って、価格を抑えて卸しているのですが、それでも食パンは1.05〜1.1倍に、菓子パンでは実質1.1倍になったモノがあります。

大豆は円安の影響をもろに受けて、価格が高騰しています。大豆を原材料とする醤油や味噌といった調味料は価格を上げざるを得ない状況です。納豆の値段が高くなったことを実感している人も多いのではないでしょうか。私が好きな銘柄は悲しいかな1.3倍になってしまいました。

他の輸入品に目を向けると珈琲は1.1〜1.2倍、ケチャップマーガリンは1.2〜1.3倍になりました。なたね油もほとんど輸入に頼っているわけですが、その影響を受けてマヨネーズも値上がりしました。キユーピーは、2023年4月からマヨネーズの価格を最大で21%値上げすると発表しています。マヨラーの私には痛手です。

家畜の飼料もほぼ輸入に頼っています。国産の肉(鶏肉、豚肉、牛肉)であっても、輸入しているエサが高くなれば、結果的に販売価格に反映させざるを得ないわけです。卵も同じですね。

値上げするのは、食料品だけではありません。今はあらゆる製品の原材料が輸入されています。わかりやすい例では、半導体もそうですし、アルミニウムの原料であるボーキサイトもそうです。そもそも製品をつくるために必要な電気の資源(天然ガスや石炭など)も輸入に頼っています。国産と言っても原材料を輸入に頼っているものは、値上げが必至だということです。

一方で、日本の金利が上がるか、上がらずともアメリカの金利が下がり、日本とアメリカとの金利差が縮まってくると、今度は円高に方向転換します。輸入品は安くなりますし、原材料も安くなります。ただし、輸出企業にとっては海外での価格が低くなるため、打撃を受けることになります。当然ながら、円安とは逆の動きになるのです。

・円安になれば、輸入品や原材料などが高くなる。

・円高になれば、輸入品や原材料などが安くなる。

私たちの生活に直結している商品の価格(物価)は、為替(円相場)に大きな影響を受けているわけです。それもこれも大本は金利です。主にアメリカの金利と日本の金利の差によって、円安もしくは円高に動くからです。

だからこそ、金利をもっと身近な存在だと感じてほしいと思います。

福本 眞也

FPコンシェル株式会社 代表取締役

1級ファイナンシャル・プランニング技能士

画像:PIXTA