ニール・サイモンの傑作『ビロクシー・ブルース』に出演する濱田龍臣、宮崎秋人、松田凌、鳥越裕貴が顔を揃えた。4人が演じるのは、第二次世界大戦中の新兵訓練所の若者たち。ブロードウェイを代表する喜劇作家が描くユーモアたっぷりの青春グラフィティをどう見せるのか。3年前に初舞台を踏んだばかりの濱田と、数多くの舞台を経験していて普段から親交のある宮崎、松田、鳥越が混じり合っていく様は、想像するだけで楽しそう!

久しぶりの共演は「変な緊張感」「小っ恥ずかしい」

──濱田さんは全員と初共演で、宮崎さん、松田さん、鳥越さんはそれぞれ一度共演を経験しておられます。この顔合わせについての感想から聞かせてください。

濱田 僕はお三方とも今日が初めましてなんです。だから、今も緊張して、どうしようと思っています(笑)。

松田 でも、俺たち3人も共演経験はありますけど、秋人とは7年ぶり、裕貴とは10年ぶりくらいで、久しぶりなんです。

宮崎 プライベートではよく会ってますけど。

松田 2日前にも会いました。

鳥越 仲良しすぎるのよ(笑)。

宮崎 (松田とは)養成所の同期ですから。裕貴とも昔は仲良かったんですけど……。

鳥越 そう、一回いろんなことがあったんです。そこは深く掘らないでください……。

松田 いやいやいや、裕貴くんともずっと仲良しですから(笑)。だから、俺たちが濱田くんを少しでも盛り立てていけたらなと。ご迷惑おかけするかもしれないですけど。

宮崎 年上組が好き勝手やって(笑)。

松田 (濱田に)今おいくつなんですか。

濱田 8月で23歳になりました。

松田 えっ、嘘!? この貫禄たるやっていう感じがしますね。

鳥越 僕らの10コ下だ。

宮崎 僕と裕貴は同学年なんです。

鳥越 好き勝手やるって言ったのは考え直そう。頑張る。頑張ります(笑)。

──お三方は、久しぶりの共演についてどんな思いがありますか。

鳥越 変な緊張感があるというか、それぞれがどう歩いてきたのかがここで出るのかなと思うと、イヤ〜な感じがします(笑)。

宮崎 正直、手放しで「やった!」という感じではないですね。嬉しいんですけど、プレッシャーというか小っ恥ずかしさがある。それこそ裕貴が言うように、「お前ちゃんと成長した?」っていう見られ方をするのかなと。

松田 同じ思いです。でも、年月を重ねて得た新しい感度みたいなものは絶対あるでしょうし。それが演出の小山ゆうなさんにどう映ってどう演出していただけるかによって、自分たちの新しい色を見出だしていければいいなとは思います。

──濱田さんは初めて共演する方々ばかりの現場はいかがですか。

濱田 どういう人なのかなとか、お芝居をどうぶつけてくれるのかなとか、何もかもが楽しみです。特に僕が演じるユージンは全員と同じくらいの熱量で対話するんですが、自分がどうぶつけていくのか、それをどう受け止めてもらえるのか、日々試行錯誤しながらの稽古期間になると思うので。仲良くしていただければいいなと思っています(笑)。

ユージンの恋愛シーンにキュンキュン

──この『ビロクシー・ブルース』は、ニール・サイモンの自伝的戯曲ですが、どんなところに面白さや魅力を感じられましたか。

宮崎 第二次世界大戦の頃の物語で時代背景は今とは違うんですけど、ニール・サイモンが若い頃に抱いていた感覚は、今の若者とまったく変わらないんだなと思いました。ユージンの念頭にあるのは童貞を卒業することだったり、特に男はずっとそういう生き物なんだなっていうのは感じましたね。

松田 戦争という状況にもかかわらず、笑えるんですよね。もちろんその立場になってみないとわからないですけど、同年代の男の子たちが集まってみんなでくだらない夢の話をしたり、本を読んでいると自然に笑えるシーンがたくさんあって。これを客席で観るとどういう思いになるんだろうなと、過去に上演されたときにすごく気になってはいたので、皆さんにもそういう期待を持って観に来ていただけるような魅力のある作品だと思います。

鳥越 セリフの素敵さ、面白さというのをすごく感じます。喜劇ってこういうことなんだって、改めて勉強になったというか。このツッコミができたら面白いなと思いながら本を読みましたね。それだけに、セリフの意図をちゃんと伝えられるかっていうプレッシャーがすごくあるんですけど。あと、ユージンの恋愛のところはもうキュンキュンして。あれはお酒とツマミを用意してずっと観ていたい。「頑張れ」って応援していたいです。

宮崎 ユージン、かわいいよね。

鳥越 ね。こういう自分が最初に抱いた感覚を、しっかり届けたいです。

濱田 僕はまだ2回くらいしか戯曲に目を通せてなくてすべてを拾えているわけではないんですけど、ワードセンスがすごく的確だなということは感じていて。確かにこう言われたらこの時代背景の深いところまで見えてくるよなとか、どういう人間なのかがわかるなという言葉遣いがなされていると思うんです。

ユージンは最初にビロクシーの新兵訓練所に送られる仲間たちの様子を語っていて、その言葉が後にそれぞれのキャラクターを際立たせるものになっていくと思うので。なおさら、言葉をしっかり表現して、この物語の世界観とそれぞれの人物の人間性を伝えなければなと。だから、ここを一番気張らなきゃと思っていたら、最後にももうひとつ膨大なセリフがあって、ちょっと震えています(笑)。でも、さらに読み込んで自分なりに解釈を広げて、稽古に向かいたいと思います。

──そのキャラクターについても教えてください。自分と似ているところや、演じるにあたって課題になりそうなところは?

鳥越 セルリッジは自分ではユーモアがあると思っているヤツなので、僕の特性が活かせる役だなと思っています。僕も一応自分を面白いと思っているんですけど、ウケていないときもあるのはわかっているので(笑)。

あと、意外と軍人として成功している人なので、そうやって面白くわちゃわちゃしながらも、水面下ではちゃんと動いているところをどう見せるか。そのフックをどれだけちゃんと置けるかというのは重要になるなと思っています。

松田 僕の課題は歌ですね。シーンの移り変わりや節目となる場所でカーニーが歌を口ずさむんですけど、僕は歌を得意としているタイプではないので、お芝居とは別に頑張らなきゃいけないところだなと。役と似ているところはわからないですけど、この年代の若者の気持ちはずっと持ち続けているので共感はできます。カーニーに似てるねと言われるようになればいいなと思います。

宮崎 今まで僕は骨太で熱血漢というような役柄が多かったので、それとは真逆のエプスタインの役づくりは大変だろうなと思っています。似ているのはお腹を壊しがちなところぐらいですかね。

鳥越 たまに鋭い発言をするところは似ているよね。

宮崎 あー確かに。僕も慇懃無礼なところがあるんです(笑)。

濱田 僕はユージンほどではないですけど、この人はどんなお酒を飲むんだろうとか、人のことを勝手に想像することがあるので、そこは似ているかなと思います。課題はストーリーテラーの役割も担うことですね。未来から過去を語るのではなく、そこで生きながら今起きていることを客席に語りかけるので、その二面性を使い分ける難しさはちょっと怖いなと思います。

4人それぞれの「舞台」への想い

──ユージンがストーリーテラーでもあるその構造も舞台ならではだと思いますが、舞台という場所についての思いを改めて聞かせてください。

鳥越 コロナ禍で、公演が中止になったり無観客配信になったり、すごくつらい思いをしたからこそわかったことがあって。舞台ってお客さんありきで成立するものであり、皆さんにお見せするために、スタッフさんを含めみんなで一生懸命あの空間を作り上げてるんだなと思うと、とんでもない仕事をさせてもらってるんだなと改めて思うんです。だから本当にちゃんとしようと引き締まります。

松田 僕にとって生きている実感が得られるのは、舞台に立って拍手をいただいているときなんです。初めての舞台でそう感じたから、僕は俳優という人生を選びました。だから今も、拍手は鳴り止むまで絶対に聞くようにしていて、拍手をいただける俳優でいられるようにと毎日必死になっています。

宮崎 近いかもしれないですけど、僕はずっと新人気分ですね。舞台は10年以上やってきましたが、作品に入る度に「こんなにたくさんのセリフどうやって覚えるんだっけ」と思いますし、初日になれば緊張しますし、千穐楽には寂しいなと思いますし、慣れはまったくありません。これだけやってきたという事実が自信につながりはしますけど、じゃあ具体的にこれができるようになったということもないですし。だからこそずっと追い続けていけるな、ずっと舞台に立つ人として演劇ファンでいられるなと思っています。

濱田 僕は20歳になった2020年から舞台のお仕事をいただく機会が増えてきました。ただ、役を演じる上で大切にしたいことは映像も舞台も変わりはなくて。その役のプロローグエピローグを想像して、ここに至るまでにどんな生活をしていたんだろう、この後はどんな人生を送るんだろうと考えて、ちょっとでもその役を理解したいと思っているんです。そしてなかでも、そうやって自分の中に落とし込んでいった人物を直接お客様に観ていただける舞台は、あー芝居をやっているなという実感にもつながってすごく楽しいんですよね。もちろん責任もありますけど、やっぱり楽しんでお芝居ができるのが一番なので。今回も、この物語の前のユージンは、毎日何時に起きて何をしてたんだろうとか、そういうところまで考えて、楽しみたいと思います。

取材・文:大内弓子 撮影:杉映貴子

ヘアメイク:(濱田)白銀一太(TENT MANAGEMENT)/(宮崎)野中真紀子(éclat) /(松田)西村裕司(earch) /(鳥越)GLEAM
スタイリスト:(濱田)前田順弘 /(宮崎)上田 リサ /(松田)ヨシダミホ /(鳥越)金野春奈
衣装協力:(濱田)VICTIM(VTM)・CASPER JOHN(Sian PR) /(宮崎)ANEI / (鳥越)EKCOOKIES

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<公演情報>
『ビロクシー・ブルース』

作:ニール・サイモン
翻訳:鳴海四郎(早川書房/2009
上演台本・演出:小山ゆうな

出演:
ジーン濱田龍臣
エプスタイン:宮崎秋人
カーニー:松田凌
セルリッジ:鳥越裕貴
ヘネシー:木戸邑弥
ワイコフスキ:大山真志
デイジー:岡本夏美

ロウィーナ:小島聖

トゥーミー:新納慎也

2023年11月3日(金・祝)~11月19日(日)
会場:東京・シアタークリエ

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/biloxi-blues/

公式サイト:
https://www.tohostage.com/biloxi_blues/

左から)鳥越裕貴、宮崎秋人、濱田龍臣、松田凌