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YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeの、10月6日から12日にかけて集計されたミュージックビデオランキングのトップ100の中から要注目トピックをピックアップします。

【動画はこちら】シナモンのかわいすぎる「寝起きヤシの木」

文 / 真貝聡

YouTubeのミュージックビデオランキングにて、現在1位の「唱」をはじめ「向日葵」や「DIGNITY」など、ここ数カ月に発表してきた楽曲が軒並み100位以内に入っているAdoの最新曲「クラクラ」が初登場で14位にランクイン。24位のVaundy「トドメの一撃 feat. Cory Wong」とともに、現在放送中のテレビアニメ「SPY×FAMILY」Season 2のオープニング&エンディング主題歌が上位に初登場する結果となった。

そのほか、12位には年明けより東名阪ドームツアーを控えているNCT127の「Fact Check」、13位にはポケットモスターと初音ミクのコラボ「Project VOLTAGE」第2弾となる稲葉曇「電気予報」が初登場。18位に入ったIVE「Off The Record」のMVは“愛”について想像をめぐらせる少女たちの様子を描いた内容で、まるで映画のような映像美が魅力だ。20位のジェニ(BLACKPINK)「You & Me」は、BLACKPINKのワールドツアー「BLACKPINK WORLD TOUR [BORN PINK]」のソロステージで披露された楽曲で、本映像は満月をバックに踊るしなやかで妖艶なダンスパフォーマンスが大きな反響を呼んでいる。そんな今週は、下記の3曲に注目した。

Snow Man「D.D.」

※YouTubeミュージックビデオランキング初登場4位。

3年半前に発表されたSnow Manのデビュー曲が、圏外から一気に4位へと浮上。「なぜ急に、このタイミングで?」と疑問に感じた方もいると思うが、これはYouTubeでの1億回再生を目指すべく「#DD1億回再生チャレンジ」という運動が起きたのがきっかけ。実は去年の8月頃からこのハッシュタグは一部ファンの間で広まっていたが、「10月16日ジャニーズ事務所が社名変更するまでに達成させたい」という目標にたくさんのファンが賛同し、今年9月下旬からMVを改めて視聴する人が急増。ファンの熱い思いによって再生数の勢いが一気に加速し、10月12日に見事1億再生を達成した。

デビュー曲が1億回再生を突破するのは、ジャニーズ事務所の所属グループでは初めてのこと。事務所の解体によって最初で最後の事例となった。この結果を受けてX(Twitter)のSnow Man公式アカウントでは「たくさんの人に愛していただいたおかげです」「これからもさらに進化する9人を見守ってください」と感謝の意が伝えられた。楽曲の魅力については、NONA REEVES西寺郷太による音楽ナタリーの連載「西寺郷太のPOP FOCUS」の第4回(参照:Snow Man「D.D.」 ~ 逆・光GENJIのツンデレな親孝行)で詳しく解説しているので、ぜひチェックいただきたい。

すりぃ「バカになって」

※YouTubeミュージックビデオランキング初登場53位。

すりぃは活動5年目のボカロP / シンガーソングライターで、それ以前はバンド活動やコンペに参加するなどの作家活動をしていた。あるときから、周囲からの見られ方や期待に応えるのがしんどくなり、自分の本音を吐き出すための方法を考えた結果、行き着いたのが素性を明かさずに思いの丈を楽曲に昇華する今のスタイル。そんなすりぃの最新作「バカになって」が大きな話題になっており、投稿される“歌ってみた”や“弾いてみた”動画も急増している。

その理由として考えられることの1つに、すりぃ本人が「スーパーダンスナンバー」とX(Twitter)で投稿したように、聴いていて自然と体が動き出す楽曲となっていることが挙げられる。何より曲の構成が秀逸だ。超アッパーなギターリフで始まったかと思えば、歌い出しでは心地いい一定のビートに切り替わり、曲が進むに従ってどんどん聴き手の高揚感を創出。サビで盛り上がりの最高点を叩き出すという、作曲家としての確かな技術とセンスを感じる。話題になっている2つ目の理由は、現代人が抱えるストレスを見事に表現した歌詞。他人に対して厳しい声を飛ばすSNS、集団の輪に入れない孤独感などを想起させるネガティブな気持ちを見事に言語化しつつ、サビで思い詰めてしまう思考をシャットダウンさせ「バカになって バカになって」と歌い上げるのは痛快でしかない。最後の3つ目は、コミカルなダンスが目を引くアニメーションのMV。特に、サビの振付はキャッチーで独創性があって思わず真似したくなる。曲、歌詞、MVのどれを取ってもバズる要素が詰まっている。

Yukopi「寝起きヤシの木(feat.歌愛ユキ)」

※YouTubeミュージックビデオランキング初登場71位 / 楽曲ランキング初登場88位。

7月28日に投稿された「寝起きヤシの木」は、その直後からものすごい勢いで拡散され、わずか9時間弱で100万再生を突破。すでに1700万回も再生されているため、この連載で扱うのは今さらかもしれないが、この週に初めてYouTubeミュージックビデオチャート、および楽曲チャートにランクインしたので、今回最後に紹介する。

ボカロPのYukopiが今年3月に発表した前作「強風オールバック」は、外に出たら風が強すぎてオールバックになってしまった、というかわいらしい内容の歌で、投稿1カ月でYouTubeの再生回数1000万回、10月現在は6800万回再生以上を記録するほどの大ヒットとなった。

7月には「強風オールバック」の替え歌バージョンが日清食品カップヌードル」のCM「夏は食っとけシーフード 篇」で流れ、ネットユーザーの枠を越えてたくさんの人々にこの曲が知られることに。そんな中でYukopiが新たに公開したのが、今回紹介する「寝起きヤシの木」だった。これは「寝起きのボサボサした髪をどうするか」という、ある意味で「強風オールバック」の前段階を描いたような曲だ。

10月13日にはサンリオの人気キャラクター・シナモンが「寝起きヤシの木」の“歌ってみた”動画を投稿し、「かわいすぎる!」と今まさに話題になっている。「寝起きヤシの木」の魅力はなんと言っても、何度も聴きたくなるような気持ちのいいビートと、一発で覚えてしまうキャッチーなアニメーションMV。それらの魅力に取り憑かれたクリエイターたちが、今もいろいろな“歌ってみた”動画を上げており、この曲の人気はまだまだ広がっていきそうだ。

再生数急上昇ソング定点観測