「こんなトム・クルーズが見たかった!」と映画ファンをこの夏うならせた、映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』。今年7月に日本公開され、10月18日より早くも配信がスタートし再び盛り上がりを見せている。シリーズ7作目となる本作だが、おなじみのアクションはいつも以上の大迫力で“やりすぎ”と言ってもいいレベル。今回はトムの“やりすぎ”アクションについて深掘りしていこう。

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 本作は、トム・クルーズが満を持して全世界に贈る「ミッション:インポッシブル」シリーズ最新作。欧州市街地での激しいカーチェイスや、断崖絶壁からの大ジャンプ、そして激走する列車上での格闘など、トム史上最も危険なアクションのみならず、シリーズの随所に張り巡らされた伏線が交差する“集大成”となる。キャストにはおなじみのメンバーが顔をそろえるほか、前作『ミッション:インポッシブルフォールアウト』から参加となった謎に包まれたキャラクター、ホワイト・ウィドウ役のヴァネッサカービーが続投。また、シリーズ1作目以来の登場で再びイーサンを追い詰めるユージーン・キットリッジ役のヘンリー・ツェーニーがカムバックする。さらに新キャストとして、イーサンと共闘するヒロイン役ヘイリー・アトウェル、最強のヴィラン役でポム・クレメンティエフとイーサイ・モラレスが初参戦する。


■息つく間もない2時間43分 世界中が“ミッション”の舞台に

 本作で繰り広げられるのは、使いこなせば世界を丸ごとひっくりかえせるようなAI「Entity」を操る“鍵”の争奪戦。さまざまな思惑が渦巻く中、イーサン(トム)たちは世界を救うため鍵を追う。

 世界の命運を掛けた争奪戦の舞台は“世界中”。アブダビの砂漠を馬で駆け巡りながら銃撃戦を繰り広げ、ローマの街中で激しいカーチェイスを行い、ヴェネツィアの橋の上では敵とナイフを交わし、そしてヨーロッパの大自然を駆け抜ける列車に崖からバイクで飛び移る。各国のシーンごとにスクリーンの色味も分けられているように感じるほど、舞台が変わるごとにその雰囲気もがらりと変化するのが印象的だ。常に追うか追われているかしているイーサンたちの姿を見ていると、2時間43分という長めの上映時間があっという間に過ぎていく。

 中でもアブダビでの撮影についてクリストファー・マッカリー監督は、「砂漠での撮影が長年の夢だった」と語っていて、彼にとって「これまでで最も巨大」だったというセットを組み、スタントを使うことなく馬を乗りこなすトムを撮影。物語前半に登場するアブダビのシーンは、非常に壮大で美しく仕上がっている。


■AIも舌を巻く? “生身”で空飛ぶトム・クルーズ

 AI技術の発達によって、スタントマンの顔を俳優ソックリに加工もできるし、俳優自身がものすごいアクションをしている映像だって作れてしまう時代に、トム・クルーズは今作も生身でアクションに挑む。それも、誰がどう見ても命懸けなレベル。そしてそんなシーンが何度も登場するのだ。

 今作の“目玉”の1つといえるアクションが、バイクで崖から大ジャンプするシーン。イーサンも劇中で、崖からのバイクジャンプを提案された際には「ここじゃ無理だ!」と猛抗議していたが、この“無理”なジャンプを成功させるためにトムは500回以上のスカイダイビングと1万3000回以上のバイクジャンプをして臨んだという。彼自身も「俳優人生で最も危険なスタント」と振り返るこのジャンプによって物語は最後の戦いへと動き出す。

 百戦錬磨のイーサンにも、このシーンでは恐怖の色が浮かんでいたように思われたが、それは演技ではなかったよう。ニューヨークで行われたワールドプレミアの際にトムは「バイクジャンプの時に覚えているのは、タイヤの感触と、身体に空気があたる感触だけだ。ただ、バイクが身体に当たらないことを祈った」と必死だったことを明かしている。しかしジャンプ後には「撮影のために十分に深く落ちることを考えた。落ちていく映像を撮りたいのだから、深く落ちれば落ちるほどいい映像になることは分かっていた」とすでに作品のことを気に掛ける思考になっていたというから驚きだ。

 この、あまりに体当たりすぎるトムの姿勢が、「ミッション:インポッシブル」シリーズが“本物”のアクション映画と言われる所以だろう。フェイクでいくらでも作ることができる時代だからこそ、この“本物”の表情や空気感がより際立ち、唯一無二の作品となっている。

■PART2はAI vsイーサン? 公開が待ち遠しい

 AI「Entity」を巡って敵味方入り混じり争奪戦を繰り広げたPART1だったが、PART2ではいよいよEntityご本人との対決となるのだろうか。人知を超え、自我をも持ったと言われるEntityが、イーサンたちにどんな試練を投げかけるのか今から気になって仕方ない。AIが仕掛けてくるのだから、きっと我々には予測もできない展開になることは間違いないが、きっとトムならまた超絶アクションでそれを乗り越えていくだろう。生身の人間の強さや可能性を感じさせてくれるトムの姿を次に見られるのはしばらく先になるかもしれないが、それまでは配信がスタートしたPART1をおさらいしつつ、“その時”を待ちたい。(文:小島萌寧)

 『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』はデジタル配信中。

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』 (C)2023 Paramount Pictures.