『バイオハザード RE:4』(以下、RE:4)のダウンロードコンテンツである「セパレート ウェイズ」が、9月21日に配信された。本コンテンツは、レオン・S・ケネディを主人公にした『RE:4』のストーリーを、作中の別キャラクターであるエイダ・ウォンの視点から描いたもの。オリジナル版では“アナザーオーダー”という名前で収録されていた。

【画像】『バイオRE:4』DLC「セパレート ウェイズ」のスクリーンショット

 エイダの目的は、ルイスという協力者が持っている“アンバー”の回収。古城で落ち合うふたりだが、ルイスはアンバーをなかなか渡そうとせず、やがてエイダは厄介ごとに巻き込まれてしまう。というのがおおまかな流れだ。

 本稿では、そんな「セパレート ウェイズ」をレビュー。リメイク要素を中心に、その再現度や次回作を匂わせるシーンなどについて解説していきたい。

※本稿には『バイオハザード RE:4』のDLC「セパレート ウェイズ」のネタバレが含まれます。

レオン編にはなかった原作要素がてんこもり

 筆者がクリアにかかった時間は4時間半ほど。古城や村、研究施設といった本編のフィールドが再登場するが、ボリュームはそれなりで完成度も高い。

 第一に、リメイク版の本編には収録されていなかった原作要素が詰め込まれている。思い当たるだけでも、上下する臼のようなものが設置されたトラップ地帯や、長い通路から迫りくるレーザー、ボウガンを持った敵が襲ってくるゴンドラなど、オリジナル版の『バイオハザード4』を遊んだ人には見覚えのあるフィールドが数多く登場した。

 原作と比べると登場する順番は大きく変わっているものの、「セパレート ウェイズ」の展開に合うよう調整されており、リメイク版の本編で取りこぼしたものを詰め込もうという、開発側の熱意が感じられる。

 ほかにも、エイダ編では“右腕”が大ボスになるのだが、これについてはある程度予想はできた。“右腕”は、『RE:4』に登場する古城の主・サラザールの付き人。“魔犬ペサンタ(あるいはU-III)”と呼ばれる通称“右腕”と、“ヴェルデューゴ”という名の通称“左腕”で、それぞれ別の付き人がいる。ヴェルデューゴはレオン編で戦うが、魔犬ペサンタはストーリーの途中から姿を消していた。

 とはいえ、付き人である魔犬ペサンタと戦うのは予想できても、それ自体が原作版のU-IIIに相当するのは驚いた。サラザールの付き人とU-IIIはオリジナル版では別個体であり、本作では戦うにしても個別に用意されていると思ったからだ。

 ヴェルデューゴの片割れ(今作でいう魔犬ペサンタ)は、オリジナル版『バイオハザード4』では化け物になったサラザールに取り込まれてしまう。ラスボスであるサドラーよりも強いヴェルデューゴが強烈な印象を残していたのに対し、こちらは大した出番もなかった。「セパレート ウェイズ」ではU-III戦を再現しつつ、同時に脇役だった“右腕”を大ボスに格上げしたことになる。

レオンとエイダ、ふたりの物語を互いに補完する仕上がりに

 専用のムービーなどもあるが、「セパレート ウェイズ」ではレオン編でエイダが登場したイベントシーンも交えられている。大統領令嬢を救うために戦うレオンの裏で動いていたエイダが、どのように本編に絡んでくるのかを確かめるうえでとても分かりやすい。

 エイダの暗躍ぶりや魔犬ペサンタのその後など、メインストーリーを進めるだけでは分からなかった部分がつまびらかになるため、『RE:4』の理解も深まる。耐久値を加える代わりに攻撃だけでなく防御も可能になったナイフのバランスや、弾丸を作れる代わりにその素材の収納スペースを考えなくてはならないシビアなリソース管理の導入により、リメイク版は原作で物足りなかったサバイバル要素を完璧に補完した名作だが、「セパレート ウェイズ」でもって物語や世界観にも十分手が届いた。過去の『バイオハザード』作品を再構築する『RE』シリーズは粒ぞろいだが、『RE:4』はそのなかでも最高傑作と言ってもいいのではないだろうか。

■『RE:5』はあるのか?

 「セパレート ウェイズ」には、エイダの依頼主としてアルバート・ウェスカーが登場する。エイダとは別行動で現地に向かっており、窮地に陥った彼女を助けたり、作戦内容を伝達したりと、ウェスカーもまた違う形で暗躍していた。

 物語終盤では、ウェスカーが巨大な船を拠点に活動していたことが明かされるのと同時に、ジャッククラウザーの遺体を回収しているシーンが出てくる。クラウザーレオンの元同僚で、『RE:4』ではアシュリーをさらったロス・イルミナドス教団の配下として行動。レオンを倒すために寄生虫のプラーガを使って挑むも、返り討ちにあった。

 原作版の「セパレート ウェイズ」では、ラスボスであるサドラーの前にクラウザーと戦うのだが、今回はカットされていた。その理由が、彼の遺体の回収なのだろう。一連のシーンは完全新規なので、なにか意味があるのは間違いない。考えられるのは、『バイオハザード RE:5』の存在だ。

 『バイオハザード5』の主人公は、初代『バイオハザード』で登場したクリス・レッドフィールドと、本作の新キャラクターであるシェバ・アローマ。アメリカやヨーロッパから一転、舞台をアフリカに移し、ふたりは生物兵器の闇取引を阻止するために戦う。今作の敵はアルバート・ウェスカーなので、前作に当たる『バイオハザード4』の物語で彼を出したのはその布石とも受け取れる。また、「セパレート ウェイズ」の最後に映ったモニターに、『バイオハザード5』の登場人物であるエクセラや、人をゾンビ化させる“T-ウィルス”の元なった“始祖ウィルス”と思しき画像も確認できるので、可能性は高いだろう。

 『RE:4』のストーリーを補完できるだけでなく、本編で取りこぼしていたであろう原作要素の再現、さらに『バイオハザード RE:5』の可能性など、「セパレート ウェイズ」はさまざまな面が垣間見えるDLCだった。国内外で評価の高い「RE」シリーズを鑑みれば、仮に『RE5』が出るにしても、そのクオリティには期待できそうだ。

(文=夏無内好)

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