10月13日から10月15日の北米興収ランキングは、およそ2か月ぶりに週末3日間の総興収が1億ドルを突破。その立役者となったのが、2023年3月にスタートした世界的歌姫テイラー・スウィフトの世界ツアーの模様を記録したライブフィルム『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』(日本公開中)だ。

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8月末に急遽劇場公開が発表され、その時点で10月に公開を予定した大作映画のスケジュールに大きな影響を与えるほど注目を集めていた『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』。初日から3日間の興収9280万ドルは、10月公開作品としては『ジョーカー』(19)とわずか340万ドル差で歴代2位。北米での歴代オープニング週末成績としては86位だが、劇映画ではない作品としてはぶっちぎりの新記録を叩きだした。

これまでのライブフィルムや舞台収録作品のヒット作と比較してみよう。『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』(09)がオープニング興収2323万ドルで最終興収は7209万ドル。『ジャスティン・ビーバー ネヴァー・セイ・ネヴァー』(11)はオープニング興収2951万ドルで最終興収は7301万ドルと、この2作がこのジャンルの興行記録を牽引していた。

しかし『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』は初日の前売りチケットが発売されて24時間で2600万ドルの売り上げを記録し、あっさりと(おそらく日曜日の午前中の段階で)両作の最終興収を上回ってしまったのだから恐るべし。また全世界興収は1億3000万ドル目前。『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』は海外での興行が大当たりで全世界興収2億6000万ドルを記録しているので、そこに届くかどうかが今後の注目すべきポイントだ。

そんな“台風の目”の公開に備えてビッグタイトルの公開がずらされたこともあり、2位以下の順位は前週から一つずつ落ちただけで大きな変動はない。ベストテン圏外へと目を向けてみると、23位に第76回カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いたジュスティーヌ・トリエ監督の『Anatomy of a Fall』がランクインしている。5館での限定公開ながら、1館あたりのアベレージは2万3569ドルと上々の成績だ。

近年、カンヌ国際映画祭は外国映画がアカデミー賞に駒を進めるための重要なステップになりつつある。パルムドール受賞作に限れば『パラサイト 半地下の家族』(19)が作品賞を受賞し、昨年も『逆転のトライアングル』(22)が作品賞と監督賞にノミネート。となると、フランス映画である本作も賞レースへの参戦が期待されるのは必然の流れ。批評家からの評価は言わずもがな高く、北米配給は先に挙げた2作品を賞レースへ送り込んだNEONという点も心強い。現時点で主要部門へのノミネート当落線上にあると考えてもいいだろう。

文/久保田 和馬

公開前から大きな話題を集めていた『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』が北米興行の台風の目に/[c]2023 Trafalgar Releasing. ALL RIGHT RESERVED.