代替テキスト
薫(浅野温子)の元恋人役を熱演した長谷川初範

青春時代に夢中になったドラマの裏には私たちの知らない“ドラマ”がいっぱい。出演者ご本人を直撃し、今だから話せるエピソードをこっそりお届け!

【『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系・’91年)】

交通事故で亡くなった婚約者・真壁(長谷川初範)を忘れられない矢吹薫(浅野温子)と、さえないサラリーマンの星野達郎(武田鉄矢)の純愛ラブストーリー。トレンディドラマらしからぬ武田鉄矢のいちずな思いが共感を呼び、主題歌の「SAY YES」とともに大ヒット!

「『101回目のプロポーズ』では、主演の浅野温子さん演じる薫の亡くなった恋人役でしたが、当初は回想シーンだけの出演予定だったため、第1話がオンエアされる前に撮影は終了していたんです」

こう語るのは、俳優の長谷川初範さん(68)。

回想シーンの撮影期間もわずか2日ほど。ピアニストという設定のため、撮影現場では本番ギリギリまでピアノの練習をして、浅野の準備が整うのを待っていた。

「しばらくすると、スタジオの2階から浅野さんが下りてきたので、練習を止めてごあいさつしようと思ったんです。ところが、浅野さんはいきなりピアノの前に座る私を背後から抱きしめ、頭を撫でてきました。そんな二人を見て、監督が手持ちの8ミリビデオカメラを回し始めたんですよ」

無事に出番を終えたが、第3話の放送が終わったころに、フジテレビのプロデューサー・大多亮氏から連絡が入った。

「大多さんと脚本の野島伸司さんが相談しながら、達郎(武田鉄矢)の恋のライバル役として、亡き恋人・真壁に生き写しの藤井克巳を登場させることになったとのことでした」

■浅野温子とは今でも恋人同士のようにハグを

思わぬ再登板となった撮影でのことだった。

「メーク室にいると浅野さんがやってきて、今度は『アル・パチーノみたいなオールバックにしてください』ってアイデアを出されました。それでスーツ姿にオールバックという藤井のイメージができあがったんです」

そんな藤井に引かれながらも、薫の中で達郎の存在が大きくなり、別れを決意する。

「広い公園で二人きり。このワンシーンのために、昼からセッティングやリハをして、薄暗くなった夕方6時くらいから本番という、半日もかけた撮影でした」

望遠カメラで撮影しており、周囲にはスタッフも含めて誰もいない。涙ぐみながら別れのセリフを言い合っていると、完全に二人だけの世界に入り込んでしまったという。

「撮影が終わっても、浅野さんは、本当に失恋したような感覚になって『私、このままでは帰れないわ』と言いだしたくらい。じつは私も、帰りの車を運転している途中で、涙があふれてしまいました」

名シーンを演じた浅野とは、今でも舞台を観る際などに出会うことがあるそう。

「本当に“恋人だった”感覚があるせいなのか、お会いするたびに、ハグし合います(笑)。こんなに入り込める作品に出合えたなんて、幸せですよね」

PROFILE

長谷川初範

’55年、北海道生まれ。’78年に本格的なデビューを果たして以降、多くの映画やドラマに出演。11月6日よりNetflix配信の映画『クレイジークルーズ』に出演する