うるさい」「近所迷惑だ」という苦情を受け、救急車サイレンを鳴らさずに緊急走行してもよいのでしょうか。2023年10月には、周囲へ配慮し低音モードのサイレンを搭載した救急車が、山口県下関市消防局へ導入されました。

法律に規定あり

救急車サイレンを鳴らさないで」というご要望にお応えすることはできません。出動する救急車緊急車両で、必ずサイレンを鳴らす必要があります。ご理解をお願いします――

東京消防庁が2023年10月、公式X(旧Twitter)へこのように投稿しました。救急車を呼んだ人からは一定数、サイレンを鳴らさずに来るよう依頼があるといいます。理由は「目立ちたくない」「近所迷惑になる」といったものだそう。

ただ東京消防庁がいうように、出動時はサイレンを鳴らす必要があります。なぜなら緊急車両として走行する場合には、サイレンを鳴らし、かつ赤色の警告灯を点灯しなければならないと法律で定められているからで、サイレンの音量も決められています。救急車が赤信号でも進行でき、ほかの車両を追い越して現場に急行できるのも、この要件を満たしてこそ可能。そもそも救急車は、そうした緊急性が高い場合に利用できるものです。

うるさい」「近所迷惑だ」といった苦情は、救急車を呼んだ本人以外からも寄せられているようです。そこで山口県下関市の消防局は2023年10月、サイレンを法律で定められた範囲内で低音モードにできる救急車を導入しました。

同じタイプの救急車を所有する別の自治体によると、低音モードは「夜間などで交通量が少なく、支障がないと判断された時」に用いるとしています。

このように近隣住民への一定の配慮もしつつ、全国の消防当局では、救急車サイレンへの理解を呼び掛けています。

熊本市消防局が2022年11月にYouTubeで公開した啓発動画、『No Siren, No Ambulance ~サイレンは命のために鳴らしています~』では、119番通報時に「サイレンを鳴らさないで来て」と依頼した人へ、それはできないと消防隊員が伝えると、「じゃあ自分で(病院へ)行こうかな」と言い出す様子が収められています。それでも消防隊員は、その人へ救急車を差し向けようとします。もしかすると、一刻を争うケースの可能性もあるからです。

住宅街に駆け付けた救急車のイメージ(画像:写真AC)。