子どもに大人気のアニメキャラクターといえばアンパンマン。困っている人を助け、悪いことをするばいきんまんをやっつけるみんなのヒーローです。

アニメ『それいけ!アンパンマン』として有名なキャラクターですが、一方で大人向けに描かれた「怪傑アンパンマンというヒーローが存在することをご存知ですか? 今回は、お馴染みのアンパンマンとは一風変わった「怪傑アンパンマン」をご紹介します。

DVD『それいけ! アンパンマン きらめけ! アイスの国のバニラ姫』(バップ)

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『怪傑アンパンマン』はヒーローのアンチテーゼから生まれた

「怪傑アンパンマン」は、やなせたかしさんが1975年から雑誌『詩とメルヘン』に1年半に渡って連載した長編作品『熱血メルヘン 怪傑アンパンマンに登場する主人公です。

正義のためであれば建物も壊し、本当に困っている人を助けないアメリカンコミックヒーローへのアンチテーゼとして描かれました。

 

そもそもアニメのアンパンマンと「怪傑アンパンマン」とは、誕生するエピソードからして異なります。

アニメのアンパンマンジャムおじさんあんぱんを焼いているとき、たくさんの流れ星が空から降り注ぎ、光を浴びたあんぱんからアンパンマンが誕生しました。

かたや「怪傑アンパンマン」は、ジャムおじさんが人形の形に作ったパンに雷が落ちたことによって誕生したのです。この誕生エピソードは、メアリー・シェリーのホラー小説『フランケンシュタイン』から考えついたそう。このことからも「怪傑アンパンマン」のダークなイメージが伺えます。

ハッピーエンドとは限らない。逮捕に不合格…ダークな一面が

アニメではジャムおじさんバタコさんに誕生を祝福され、愛と勇気のヒーローとしてアンパンマンが大活躍します。しかし「怪傑アンパンマン」はさまざまな災難に巻き込まれ、その結末は必ずしもハッピーエンドを迎えるわけではありません。

まず物語の序盤では偶然入ってしまったテレビ番組の「スーパーマンNO1審査会場」で、実在するヒーローにもかかわらず審査員にけなされ不合格にされてしまいます。

アンパンマンがヒーローだと認められず、漫画界から追放されそうになるエピソードも。批難のポスターが逆に購買欲をそそり大ヒットするアンパンマンの漫画でしたが、「現代では正義感だって商品になるのさ」と編集長は笑います。

悪者として登場するのは、ばいきんまんではなく悪徳食品産業会社の社長クロカワ。そのクロカワと「怪傑アンパンマン」の間でも数々の事件が発生します。クロカワはジャムおじさんパン工場の買収を企てたり、パン工場がある平和の森に火をつけたりと好き勝手な行動に出るのです。

そして反撃に出た「怪傑アンパンマン」は、クロカワの策略により残念ながら逮捕されてしまいました。のちに悪を憎んでいることや娘に慕われる家庭的なところなど、クロカワの新たな一面がわかるのですが、これらのエピソードからもアニメのアンパンマンとはかなり違った印象が残ります。

 

加えて作中では「怪傑アンパンマン」が僕は何のために生きるのだろうと生きる意味を模索したり、パンを人に与えることは「飢えた人を救うのではなく、飢えた人の中にぼくが生きるのだ」と人生について独自の解釈を見つけたりする姿も描かれています。

ストーリーを読むと、ブラックな内容が特徴的な『熱血メルヘン 怪傑アンパンマン』。ネット上では「パロディじゃないんだ。アンパンマンと同じ作者で驚き!」「壮絶すぎるだろ」「波乱に満ちた人生…… 重たい話だな」「アウトローな扱いで泣ける」といった声が上がっていました。

現在は絶版している同作品の復刊を望む読者も少なからずいるよう。「怪傑アンパンマン」は香美市立やなせたかし記念館にて2023年7月5日から10月2日まで展示中です。

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