第36回東京国際映画祭(TIFF)が10月23日に開幕し、東京宝塚劇場でオープニングセレモニーが開催。フェスティバルナビゲーターを務める安藤桃子監督やオープニング作品『PERFECT DAYS』(12月22日公開)の監督で審査委員長も務めるヴィム・ヴェンダース監督、主演の役所広司をはじめ、多数の豪華ゲストが登壇した。

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セレモニーは、オープニングアクトとして、川井郁子と五重奏のパフォーマンスからスタート。西村康稔経済産業大臣が挨拶したあと、岸田文雄内閣総理大臣から開催を祝したビデオメッセージも上映された。

続いてフェスティバルナビゲーターの安藤監督が登壇。映画祭に期待することを尋ねられると「映画界は撮影の技法から、配信など、観る側の進化も始まっていますが、変わらない本質があります。それはコロナがあり、生きてるという不変です。映画は近々で観られる作品ですが、いまの時代を象徴してるものが集まっているので、きっと未来を照らしていく10日間になるのではないかと」と熱い想いを口にした。

その後、安藤裕康チェアマンから、中国映画界の巨匠、チャン・イーモウ監督に特別功労賞が送られた。ガラ・セレクション部門で監督最新作『満江紅』(23)も上映されるチャン・イーモウ監督だが、実は1986年にはウー・ティエンミン監督作『古井戸』(87)に主演し、第2回東京国際映画祭で男優賞を受賞している。

「35年前に、私は主演男優賞を受賞しましたが、そのときはまだ映画監督ではありませんでした。その後、18年経ちまして、再び東京国際映画祭へやってきて、当時の審査委員長を務めました(第18回のコンペティション国際審査委員)。再び18年が立って、この賞を受賞しました」としみじみ語る。

チャン・イーモウ監督は「今日これから新しいスタートとして、いろいろ仕事をしていきたいと思います。中国的にはまさに“循環”“サークル”のようで、終わりではなく始まりだと思っています。私のことを評価してくださって心から感謝します。これからも一生懸命頑張っていい作品を携え、またみなさんとお会いしたいと思います」と締めくくった。

その後、各部門の作品や特集上映などの内容が紹介され、ヴィム・ヴェンダース監督をはじめ、審査員たちも登場。最後にオープニング作品である『PERFECT DAYS』で、再びヴェンダース監督、役所、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和、制作の柳井康治、共同脚本を手掛け、プロデューサーでもある高崎卓馬が登壇。

ヴェンダース監督は「少し前に夢を見ました。日本で映画を撮りたい、主演は役所さんにお願いしたいと。また、田中泯さんたちとすばらしい映画を撮りたい、カンヌにも出たい、この映画で最優秀男優賞を撮りたいという夢でした。(米アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表となったが)オスカーについての夢は見てなかったのですが、東京国際映画祭でオープニング上映したいという夢は見ました。日本のみなさんに、最初の観客になってもらいたいと。そしていま目が覚めて、ここにいます」とおちゃめにスピーチし、拍手に包まれた。

役所は「安藤桃子さんもおっしゃってましたが、“命”です。この『PERFECT DAYS』には、命のある人間たちや樹木、東京の風景があり、命が宿っています。生きているものを、ヴェンダース監督の温かい眼差しによって、キャメラに収められたドキュメンタリーのような作品になってると思います」とアピールした。

最後に安藤チェアマンが「昨年よりも上映作品が25%増えました。また、昨年は海外から104名の方が参加されましたが、今年は海外マーケットも含め2000人近い方々が海外からきていただけました」と喜びを口にし、力強く開会宣言をした。

第36回東京国際映画祭は、10月23日(月)~11月1日(水)の10日間にわたり、シネスイッチ銀座、丸の内TOEI、角川シネマ有楽町TOHOシネマズシャンテTOHOシネマズ日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューリックホール東京などで開催中。

取材・文/山崎伸子

安藤裕康チェアマンから、チャン・イーモウ監督に特別功労賞が送られた