オレゴン州立大学カスケード校の研究者たちが、野生のオオカミから見つかった腸内細菌が、飼い犬によく見られる衰弱性胃腸疾患を緩和するカギになる可能性を発見した。
『Applied Microbiology』誌に発表された論文では、宿主に健康上の利点を与える微生物「プロバイオティクス」の特徴をもつパエニバシラス属の新たな株について報告している。
犬にみられる炎症性腸疾患(慢性腸症)はこれまで決定的な治療法がなかったが、野生のオオカミから見つかった腸内微生物を利用すれば、症状を改善させることができるかもしれないという。
犬が炎症性腸疾患(慢性腸症)にかかると、あまり食べない、吐く、体重減少、腹部の膨満、便が緩いなどの症状が3週間以上にわたって続く。これは、腸に炎症の細胞が集まり、持続的な炎症を引き起こす病気だ。早めに動物病院に連れて行く必要がある。
レゴン州立大学カスケード校のブルース・シール氏によると、現時点では、こうした消化管の継続的な症状に対する決定的な治療法はなく、治療の選択肢も限られているという。
この病気になる原因は現段階ではまだはっきりとわかっていない。
遺伝的なもの、食べ物などの環境要因、消化管の免疫状態などが関係しているとされているが、シール氏は、最も重要なのは腸内細菌の状態の変化なのではないかと考えている。
野生のオオカミの腸内細菌を調査
オレゴン大学カスケード校とオレゴン州カールソン獣医学部のこの共同研究では、犬の腸内細菌組成を、共通の祖先を持つオオカミの組成と比較された。
「犬は、最初に家畜化された動物でした」シール氏は言う。
現代の犬の食事は、炭水化物が多く、オオカミの食事とは違います。例えば、加工されたドッグフードに含まれるデンプンは消化されにくいため、飼い犬の腸内細菌叢に悪影響を与える可能性があります
つまり現代の飼い犬の食事が腸内細菌叢に影響を与えている可能性があるというのだ。
研究では、車とぶつかった怪我がもとで死んだオオカミから、消化管内の物質を採取した。そこから、予備的な遺伝子分析によって、プロバイオティクス(体に良い影響を与える微生物)の性質をもつ20種の異なる腸内細菌を分離し、パエニバシラス属の新株について全ゲノム解読を行った。
オオカミの腸内細菌を利用して犬の病気を改善できる可能性
この新株は、デンプンなどの複雑な炭水化物を消化することができる酵素をもっているという。さらに、抗菌性を発現する遺伝子システムもあるらしいことがわかった。
非毒性の胞子形成性細菌は、腸内で抗炎症性免疫反応を促進させ、病原体の増殖を阻止する。ということはこの細菌分離株を飼い犬が取り入れることで、有益なプロバイオティクスとなる可能性があるというのだ。
分離した20株のうち、ほかにも4~5種の細菌について、ゲノム解読を行う予定だという。
References:Gut bacteria found in wild wolves may be key to improving domestic dogs' health | ScienceDaily / Gut bacteria found in wild wolves may be key to improving domestic dogs' health / written by konohazuku / edited by / parumo
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