「1位指名の公表」について、コミッショナー通達で禁止にしてはと投げかけた岡田監督の言葉が話題を呼んだ(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 18年ぶりとなるセ・リーグ優勝を果たした阪神金本知憲監督時代にスケールの大きい選手を積極的に狙う方針に転換したことが奏功し、近年獲得した選手の多くが主力に定着している。顔ぶれを見ても投手の最年長が33歳の西勇輝、野手の最年長が32歳の梅野隆太郎とベテランと言われる年代の選手は非常に少なく、投手も野手もこれからの成長が見込める有望株が多い。現時点の戦力だけでなく、若手の充実度においてもセ・リーグではトップと言えるだろう。

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 そんなチーム状況を考えると、無理に即戦力を求める必要性は高くないのではないだろうか。報道では豊作と言われている大学生の投手を1位指名する方針と言われているが、無理に完成度にこだわるのではなく、将来性を含めた総合的に最も高い評価をした投手を指名するのが得策だろう。具体的な名前としては常廣羽也斗(青山学院大)、細野晴希(東洋大)、武内夏暉(国学院大)、西舘勇陽中央大)の4人が筆頭候補として挙がるが、将来性という意味では常廣と細野がわずかにリードしているように見える。この2人のどちらかを抽選覚悟で入札し、外した場合には大学生であれば西舘滉汰(専修大)、もしくは高校生に方針転換して木村優人(霞ケ浦)、坂井陽翔(滝川二)など、モノになった時のスケールの大きさを重視すべきだろう。

 野手で気になるポジションは捕手だ。梅野と坂本誠志郎の2人がともに30歳を超えており、彼らに続く正捕手候補は不透明な状況である。先日の報道では岡田彰布監督が捕手は高校生を獲得して育てるのが良いのではないかという発言も出ていたが、その方針に最もマッチしそうな人材となると堀柊那(報徳学園)になるだろう。下級生の頃から不動の正捕手として活躍しており、今年春の選抜高校野球でもチームの準優勝に大きく貢献。まだスローイングに力みはあるものの、地肩の強さと脚力を生かしたフットワークは圧倒的なものがあり、スローイングに関してはともに1位でプロ入りした松川虎生ロッテ)や松尾汐恩(DeNA)の高校時代と比べても上回っているように見える。打撃も粗さはあるものの振る力はあり、積極的な走塁も魅力だ。2位か3位の高い順位を使ってでも指名する価値のある素材である。

 他で補強ポイントと言えるのはリリーフ投手だ。湯浅京己が長期離脱となり、岩崎優岩貞祐太加治屋蓮島本浩也の4人もすでに今年で30歳以上となっているだけに、最低でも1人はリリーフタイプを獲得しておきたい。4位以降で獲得できそうな選手としては木村仁(九州共立大)を挙げたい。150キロ前後のストレートで押す投球が持ち味の本格派右腕で、今年は大学日本代表にも選ばれた。チームでは先発を任されているが、初回からエンジン全開で投げられるのを見ると、リリーフとしての適性も高いように見える。サウスポーであれば石原勇輝(明治大)も面白い。層の厚いチームで3年春まではなかなか登板機会がなかったが、昨年秋にリリーフとして台頭。高校、大学とエース格ではなかったため、まだまだ成長も期待できる。岩崎、岩貞、島本の後継者として4位以降で残っていればぜひおすすめしたい投手だ。

[文:西尾典文]

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。

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