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 アメリカのロサンゼルスサンフランシスコは、どちらもカリフォルニア州にあるが、約540km離れていて、飛行時間は1時間15分、車では約7時間かかる。

 ロサンゼルスに住むビルさんは、同州の名門バークレー校での10か月間におよぶ工学修士課程プログラムに合格したが、ベイエリアで高い家賃を払うより飛行機で通学した方が安いことに気付いた。

 未明に起床し、空港へ行き飛行機に乗って、1日授業を受け、また飛行機で夜遅くにロサンゼルスに戻ってくる。

 ハードなスケジュールをだいたい週に3日のペースでこなしたビルさんは、1日も授業を休むことなく、無事にコースを修了させたという。

【画像】 高すぎる家賃に頭を悩ませていた大学院生

Grad student commutes to class by plane to save on rent

 そもそもアメリカの家賃は物価上昇を高騰を続け、昨年は中央値が2000ドル(29万5千円)を超えた。

 中でもサンフランシスコ・ベイエリアの家賃は、特に高いことで有名だ。

 ビルさんは、バークレー校での1年間の土木工学の修士課程プログラム(2022年8月から2023年5月)への入学を受け入れられたが、ベイエリアの高すぎる家賃に頭を悩ませていた。

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 バークレー校周辺の平均家賃は、月額 3500ドル(約51万円)以上だ。

 ロサンゼルスでは、割と手頃な家賃で快適に住んでいるビルさんは、コース終了後はどちらにしてもロサンゼルスに戻る予定だった。

飛行機で通学するほうが安上がりなことに気が付く

 そこで、“クレイジーなアイデア”として、ロサンゼルスからバークレーの大学院まで飛行機で通学する決心をしたのだ。

コースを修了して卒業したら、前の雇用主のもとに戻りたいので、卒業後はLAに戻るだろうと思っていました。

私は飛行機が大好きで、過去数年間飛行機に乗って、クレジットカードのサインアップボーナス飛行機で得たマイレージマイルやポイントをたくさん貯めています。

ベイエリアは全体的に家賃が高く、私のプログラムは10か月しかないので、飛行機で通学すればなんとか賄えると思いました。

 そして、ビルさんは飛行機通学を実践した。

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image credit: youtube

主に週3回の通学で238回飛行機に搭乗

 ビルさんは、最近になってパイロットフォーラムのウェブサイト『flyertalk.com』やSNSで飛行機通学を成し遂げたことをシェアしている。

 それによると、ロサンゼルスサンフランシスコ間を少なくとも週3回は行き来したという。

 授業は通常、月、水、金。ドアツードアの通学時間は、片道4~5時間かかったと話している。

授業が午前10時に始まる秋の間の典型的な月曜日と水曜日のスケジュールでは、ロサンゼルスの自宅で午前3時40分に起床し、6時発のアラスカ航空のフランシスコ国際空港 (SFO)行きの便に乗るために、ロサンゼルス国際空港(LAX)に向かいました。

サンフランシスコに到着すると、午前8時30分のベイエリア高速鉄道に乗り、カリフォルニア州バークレー校で午前10時からの授業に間に合うようにしていました。

金曜日の授業は午前8時からなので、午前5時30分のサウスウエスト航空でオークランド国際空港へ向かうというスケジュールを組んでいました。

丸一日授業を受けた後、友人と遊んだり、図書館で少し長くハードウェアやプロジェクトに取り組んだりする場合は、サウスウエストの最終便午後9時5分、アラスカ航空の午後10 時30分に乗って真夜中までに帰宅します。

クラスメートたちは、「今日の夕食は何?』と聞く代わりに、「帰りの飛行機は何時?」と尋ねるのが癖になっていました(笑)

でも、通常は午後6時か午後7時の飛行機に乗って、午後9時30分頃には家に到着します。

10か月のコースの間で、5日連続で往復する週が何週間かあり、その時はさすがに疲れ果てました。

 アラスカ航空とサウスウェスト航空の特典のおかげで、同日のフライト変更が可能だったビルさんは、その日の最も安いフライトを何か月も前に予約しておき、より良いスケジュールのフライトに変更するために、航空会社に電話していたそうだ。

その週、キャンパスに来る必要がない場合は、前夜にチケットをキャンセルすれば全額返金してもらえました。

 10か月の間で、ビルさんが飛行機に搭乗した回数は、238回。マイレージマイルは、9万2000マイル以上を記録した。

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交通費の合計はベイエリアの家賃の1.5か月分

 ビルさんは、2学期のプログラムが終わるまでに、駐車場と機内Wi-Fiを含めて通学に5592.66ドル(約82万円)を費やしたそうだが、これはベイエリアでの家賃の、約1.5か月分の金額になるという。

 2023年の全国低所得者住宅連合が発行した報告書によると、ベイエリアとその周辺地域は、賃貸人にとって米国内で最も高価な市場の一部にランクされている。

 2020年以降、家賃価格は5.4%上昇し、通常3080ドル(約45万円)になった。

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pixabay

 サンフランシスコで2ベッドルームの家を買う余裕を持つためには、時給61.31ドル(約9000円)を稼ぐ必要がある。

 ビルさんの通っていたバークレー校があるアラメダ郡では、1人当たり時給46.25ドル(約6800円)を稼がなければならない。

 『flyertalk.com』への投稿で、ビルさんはバークレー近郊の学生住宅に住むには、光熱費を含まず、少なくとも月1600ドル(約23万4000円)かかり、コースは厳密には10か月しかないにもかかわらず、賃貸契約として12か月間滞在しなければならないと綴った。

 毎日ベイエリアにいる必要がなく、卒業したらロサンゼルスに戻ることが分かっていたビルさんにとって、ベイエリアで法外な家賃を払うのはどうしても避けたかったことだった。

 ビルさんは、自身の体験が注目を集めた後、メディアの取材でこのように語っている。

これは、おそらく私が人生でやった中で、最もクレイジーなことの1つです。でもなにより、授業を一切休まずやり遂げることができて、とてもうれしい。それ自体が、奇跡です。
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 現在、学位を取得し、ロサンゼルスで輸送エンジニアとしてフルタイムで働いているビルさんは、いつかピート・ブティジェッジのような米国運輸省長官になるのが夢だそうだ。

References:Grad student commuted from LA to Bay Area 3 times a week to avoid expensive rents / written by Scarlet / edited by parumo

 
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家賃より飛行機代の方が安いから。大学に通うため飛行機通学した学生