ソフトバンクホークス小久保裕紀新監督が10月23日、就任会見を行った。3年連続V逸の「現実と向き合って、日本一を目指して戦う」と語った。今季は2軍監督だったが、クライマックスシリーズ(CS)敗退翌日の17日に球団から就任要請を受けたことを明かしたが、

「とにかく自分にも他人にも厳しくて、指導者になってからは『鬼軍曹』そのもの」(ソフトバンク担当記者)

 という。早くもその片鱗を見せたのは会見の前日22日。元リリーフエースの森唯斗ら、他球団なら主力として働ける実績ある7人の選手に「戦力外通告」を行った。その厳しさのモデルは、就任会見でも同席したソフトバンク王貞治会長である。小久保監督は「私がプロで成功した一番の理由は、王監督との出会いがあったからです」と公言してはばからない。

 2人の究極な「師弟関係」はプロ野球界では有名だ。小久保監督が王監督の凄さを初めて知ったのは、1996年5月9日、日生球場で行われた最後のプロ野球公式戦の時だった。2-3と敗退したダイエー(現ソフトバンク)の選手がファンに囲まれ生卵を投げつけられたことがあった。就任1年目は5位、2年目も不振のスタートとなった王ダイエーに向けたファンの抗議行動だった。

 あまりに多くの卵が投げつけられたことでバスの中からは外も見えない状況になった。球界では「王ダイエー卵事件」と名付けられたが、バスに乗車していた小久保監督は微塵も動かない王監督の背中を一生忘れないという。この騒動の後、王監督はミーティングで「今夜のように本気で怒ってくれることが、本当のファンなんだ。彼らを喜ばせる。これこそが俺らの仕事なんだ」と力説した。

 また、王監督からは何度も叱責を受けている。不振に喘ぎエラーで敗退した際、担当記者に「書きたいように書いてくれ」と投げやりな対応をすると翌日に呼び出しを受け、「お前、こんなコメントをしたのか?これを読んだファンはお前に夢を抱けるか?記者の向こうにはたくさんのファンがいるんだ。二度とこんなコメントをするな」と、鬼の形相で言われたという。

 ただ、小久保監督は巨人時代、王監督の厳しさについて主力選手に「それは王監督だからできること…」と言われ閉口する場面が何度もあったという。

 今のホークスの現状に「強いことも大切だが、美しさが欠ける」と語った小久保新監督。来季は「王イズム」が継承されるが、果たして今の選手たちにそれが通用するのか否か。一つ間違えば「小久保ホークス卵事件」も起きかねない。

(小田龍司)

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