「けむたい姉とずるい妹」(毎週月曜夜11:06-11:55、テレビ東京系)の第3話10月23日に放送された。じゅん(栗山千明)の元カレで、じゅんの妹・らん(馬場ふみか)の夫・律(柳俊太郎)のつらい生い立ちが明かされ、前回までどっちつかずの彼に対して「クズ男」「サイテー」などと非難ごうごうだった視聴者が一転、同情ムードになった。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】律をめぐり、バトルが激化していく、じゅん(栗山千明)とらん(馬場ふみか)姉妹

■律の愛情に不安を覚え始めたらん…

同ドラマは、ばったんによる同名のマンガが原作。妹の略奪愛が原因で音信不通の不仲となった姉妹が母の死をきっかけに同居する事になり、姉の元カレで、現在は妹の夫である男性を巡って壮絶なバトルを繰り広げるストーリーだ。

家の外で思わず熱いキスを交わしてしまったじゅんと律。2人は時間差で家に入り、「表でバッタリ会った」と律はらんに告げたが、らんは一抹の不安がよぎるのだった。

翌日、「昨夜、電話でらんに招待された」と、律の母親が家に来た。だが、律は母を見るなり不機嫌になった。そこへじゅんがやって来て、律の母が来ている事を知り、気まずい思いでいっぱいになった。挨拶もそこそこにその場を去ろうとしたじゅんをらんは引き止め、一緒に昼食を食べよう、と誘った。「お姉ちゃんの分も用意してるよ」と、作り笑顔を見せるらん。普段は、食事は別々に作っているのに…。じゅんをいたたまれない気持ちにさせようと計画していたのは明らかだった。

夫婦と姑、そして“よそ者”での昼食。律の母はらんを褒めちぎり、仲良し嫁姑の会話が続く。そんな中、律の母は知ってか知らずか、じゅんに「お姉さんは、いつまでここに? 今はたまたま遊びに来ているだけでしょ?」と問いかけた。それを聞いて、「じゅんちゃんは…」と言いかけた律をさえぎって、「ここは、私の実家ですから」と強い口調で答えて、じゅんは席を立った。そして、律もじゅんを追いかけるように「オレも仕事があるから」と、席を立った。

■律と母の壮絶な関係が明らかに

律は母親との関係がうまくいっていなかった。子供の頃、父親が家を出ていき、それ以来、母は律に依存するようになっていった。「お母さんの言う事さえ聞いてれば、間違いない」と、彼を支配し、次々に彼の自由を奪っていった。律は小説を書く事でつらさを紛らわすようになり、小説を書いている間だけは母親から逃げられる気がしたし、「頭の中のものは誰にも取り上げられない」と信じ、それが心のより処となっていた。だが、それさえも母は否定した。

耐えられなくなった律は家を飛び出そうとしたが、母は半狂乱で彼を引きとめ、挙句の果てには「お母さんの事、1人にしないって約束したじゃない!」と、カッターで手首を切ろうとした。

その時、幼い律は、おかしくなった母親から自分を守るには「諦める事」しかない、と悟った。それ以来、彼は何か欲求が生まれても、じっとやり過ごして忘れる術を身につけてしまったのだった。

■「自分の意見は自分だけのものでしょ」

そうして、いつのまにか自分の意志を持たない性格になっていったのだが、そんな彼を目覚めさせたのが、じゅんだった。高校時代、「オレが意見を言ったって、何も変わらない」と言った彼に対し、「自分の意見は自分だけのものでしょ」と、じゅんは怒ったのだった。これは、きっと律がずっと欲しかった言葉だったはずだ。

以来、2人は接近し、交際が始まった。律にとって、じゅんは“初めて手に入れた大切な人”だった。しかし律の母は、どこか一線を引いたようなじゅんの態度が気に入らず、交際を快く思わなかった。じゅんだけは奪われてはいけない、そう思った律はバイトを始め、彼女と住む為の資金を稼ぎ始めるのだった。

じゅんと律の破局の真相

しかし、そんなある日、じゅんが律に「らんとホテルに行ったんだって!?」と怒りをぶつけてきた。律はらんと浮気などしていなかった。だが、今までさんざん自分の物を妹に取られてきたじゅんは、律の愛情を信じられなくなっていた。

律は、誤解を解こうとじゅんを追いかけたが、その時、病院から連絡が。律の部屋で物件のチラシを見つけた母が息子に捨てられると悲観し、睡眠薬を大量摂取して運ばれたのだ。律は、それ以上じゅんを追いかける事ができず、「やっぱり好きなものは手に入らないんだ…」と痛感した。彼はまた、諦めてしまった。

じゅんと律の破局の真相と、律のつらい生い立ちが明かされると、視聴者はSNSに「毒親すぎる」「律にこんな過去があったとは…」と感想を寄せ、前回までのアンチコメントから一転、同情ムードになった。

■再燃したじゅんと律の愛は、もう止まらない

律は、高校時代と変わらずに、今も欲しい言葉をくれるじゅんに対し、諦めたはずの想いが後悔と共に再燃する。そして、じゅんも律への想いはもう止まらない。一方、律の愛情に不安を抱え始めたらんは、依存と執着が激しくなってくる。このまま行けば、律の母親のようにらんも壊れてしまうだろう。それぞれの痛みが明らかになり、単純に「誰が悪い」とは言えなくなってきた。この複雑な三角関係は、どう着地するのか見守りたい。

※柳俊太郎の柳は正しくは「木へんに夘」

◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部

ただのクズ男ではなかった つらい過去を抱えていた律(柳俊太郎)/(C)「けむたい姉とずるい妹」製作委員会