多くのロールプレイングゲームでは、倒したモンスターからお金を手に入れるのがお決まり。けれど、人間の通貨を魔物が持っているのはどうして?そんな疑問に鮮やかに答える創作4コマ漫画の結末に「天才」「目から鱗」「この発想はなかった」とX(旧Twitter)にて4.4万件のいいねと多くの反響が集まっている。

【漫画】4コマ「お金」を読む

作者は、同作をはじめオリジナルの4コマ漫画をSNSに投稿し、たびたび反響を集める留々家(@ruru_ie)さん。その中でも特に人気を集めた作品を紹介するとともに、留々家さんの4コマ漫画への作り方や向き合い方について話を訊いた。

■モンスターがお金を出すのではなく…?逆転の発想冴える4コマに反響

冒頭で取り上げたのは、2023年5月にX(当時はTwitter)上で公開された4コマ「お金」。魔物を退治する剣士が「モンスターには必要ないのに…」と、体内からお金が出てくるのを不思議に思うところからはじまる。

その問いの答えはその世界の歴史にあった。鋼の剣ではなく石器で戦っていた時代、同じようにモンスターを倒していた男がいた。

魔物は今と変わらずお金を落としていたが、それを見て「死んだときに出すきれいな石」とつぶやく男。何かに使えないかと思った男は、薬草売りに石と商品の交換を持ちかける――、というオチ。

モンスターとお金の順序が実は逆だったという発想に、「逆転の発想」「説得力ある」と多くの読者の反響を呼んだ。

また、留々家さんが2023年上半期の自選作品に選んだ4コマ「想い」は、思わせぶりに呼び出された男子ともじもじする女子からはじまる作品。

いかにも告白しようかというシーンから、「あなたにあげたいものがあるんです…」と女の子が突き出したのは刀。バトル漫画の導入のようになった展開だが、男の子は刀を握る女の子を見てあることに気付く。

それは、両手いっぱいに貼られた絆創膏。刀を首筋に切りつけるシチュエーションを「いっぱい練習してくれたんだ…」と、女の子の真剣な想いに気付くというオチだ。

■「物語を完璧に制御しうる」「最適解を目指すゲーム性」わずか4コマだからこその魅力

柔軟な発想や、1コマごとに見え方が転がっていくような構成で数々の話題作を作る留々家さん。動画投稿サイトやイラストSNSでの二次創作に刺激され、10年ほど前から4コマ漫画をネット上で発表するようになったという。

そんな留々家さんが4コマ漫画という形式を選んだのは、「飽き性で完璧性」だったからとのこと。長い漫画だと描ききれず、加えて完璧なストーリーを求めるがゆえにつじつまの合わないところが気になってしまうが、「ごく短い4コマ漫画においては、物語の辻褄を完璧に制御しうるので、自分に合っています」と、4コマというフォーマットとの相性を語る。

また、作品を継続して制作するのもなかなか難しいもの。留々家さんは1時間4コマ会という、1時間で作品で作り発表するいわゆる「ワンドロ」という有志の取り組みに参加。「どんなに忙しくても最低でも週一本は4コマ漫画をアウトプットできるという利点があります」と、ルーティンに取り入れて4コマ制作を習慣化しているという。

そうして日々描かれる作品のアイデアの生み出し方について訊くと、留々家さんは「『お約束』を見つけて、そこから発想するようにしています」と話す。「例えば『財布』という単語から考えるよりも『財布を拾ったら天使と悪魔が現れる』というお約束から考える方が、ネタを考えやすくなります。どんな4コマ漫画も多かれ少なかれ、お約束によって成り立っているものなので、結果的には、誰しもがネタ作りのときにはやっていることです。しかし、お約束からスタートすることを意識することで、ネタ作りはかなりラクになると考えています」

“4コマ漫画を極めるべく研鑽しております”と話し、作品制作だけでなく4コマ漫画の研究も取り組んでいきたいと話す留々家さん。最後に、留々家さんから見た4コマ漫画の魅力を訊いた。

「自分がおもしろいと思うアイデアを、いかに効率よく読み手に伝えることができるか。その最適解を目指すゲーム性が4コマ漫画の魅力であると思っています」

取材協力:留々家(@ruru_ie)

必要ないはずのないお金をモンスターはどうして持っているのか…?RPGあるあるな疑問が腑に落ちるオチが話題に/画像提供:留々家(@ruru_ie)