大河ドラマ「どうする家康」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)の第40回「天下人家康」(10月22日放送)でついに政治の中心に立ち、少しずつ“狸”らしい抜け目のなさを見せ始めた家康(松本潤)。その裏であれこれ考えを巡らせるシーンでは、家康の参謀である本多正信(松山ケンイチ)や阿茶(松本若菜)ら個性ゆたかなキャラクターが存在感を発揮している。(以下、第40回のネタバレがあります)

【写真】対峙(たいじ)する家康(松本潤)と石田三成(中村七之助)

石田三成、志半ばで隠居へ

どうする家康」は、誰もが知る戦国武将・徳川家康(松本潤)の人生を新たな視点で描く物語。「リーガル・ハイ」シリーズ(2012年ほか、フジテレビ系)の古沢良太が脚本を務める。第40回では秀吉(ムロツヨシ)の死後、政(まつりごと)の舵取りが大きく混乱する展開が描かれた。

石田三成(中村七之助)の発案で五奉行・五大老の十人衆による合議制が導入されたが、実際の政権運営はうまくいかない。三成も家康への不信感を募らせ、結局三成は悔いを残したまま、混乱の責任を取る形で政務を退いた。

■「強くなりすぎた」家康を支える3人

石高250万石の大大名となっていた家康は、前田利家(宅麻伸)も「貴公は強くなりすぎた」と語るほど大きな力を持つようになっていた。それだけに、一挙一動が政権運営に与える影響も大きい。“どうする”と思案する局面が続く中で存在感を強めているのが、家康を側で支える正信と阿茶、そして四天王のひとり本多忠勝(山田裕貴)だ。

■「そういう危なっかしいことをすると…」

正信と阿茶は家康を支える参謀のような存在。一方、忠勝は若い頃から家康と共に苦難を乗り越えてきた。そんな3人が三者三様の立場から家康に意見を投げかける様子は、“チーム家康”とでも言いたくなる安定感がある。

第40回でも、そんな3人のバランスの良さが垣間見える場面があった。三成が豊臣家中をまとめ切れず政治が混乱する中、血の気の多い忠勝は「殿が表舞台に立ち、すべてを引き受けるべき時では」とあくまで強気。対して正信は「そういう勇ましいことをすると危ない。裏で危なっかしい者どもの首根っこを押さえるぐらいにしておくのがよろしいかと」と、策がある様子。そんな正信に阿茶が「明るみに出れば、殿が糾弾されましょう」と不安要素を指摘し…と、家康の立ち振る舞いについて検討。絶妙なチームワークを見せた。

■「後戻りできぬ」家康の決意を受け止める忠勝

忠勝は、家康との絆が最も深く描かれている人物のひとり。若き日の家康に「主君とは認めぬ!」と言い切った忠勝が家康への忠誠心を強めていく過程は、そのまま武将・徳川家康の成長とも重なる。政治を預かることを決めた家康が「やるからには、後戻りできぬ。あるいは修羅の道をいくことになろうぞ」と決意を打ち明けた相手も忠勝だ。攻めの姿勢で家康を引っ張る忠勝を、「おんな城主 直虎」(2017年)に続き2度目の大河出演の山田が豪胆に演じている。

伊賀越えを機に家臣団に復帰した正信は、今や家康の信頼もあつい参謀。演じる松山が大河ドラマ主演経験者ということもあって、安定感ある佇まいで場面を引き締めている。堂々とした物言いと、ふすまからひょっこり顔を出したり何かをモグモグ口にしていたりといった愛嬌あるしぐさの緩急も面白い。

■阿茶は“若々しく明瞭な存在”

そして阿茶は、家康の側室ながら実務でも重用された女性。美しさと才覚を兼ね備えていて政治にも深い理解があり、豊臣家との最終決戦の際には重要な交渉役を担うことになる。この時代には極めて珍しい、自立した女性だ。

演じる松本若菜は「やんごとなき一族」(2022年、フジテレビ系)の演技で注目を集めた実力派。於大の方を演じた「麒麟がくる」(2020年)に続き2度目の大河ドラマで、凛とした佇まいを見せている。美しい青の打ち掛けも目を引くが、これには「(家康・正信と)あれこれ相談する場面が増えていきます。そこでは家康は紺色、正信は渋みのある色ですから、その中で阿茶は『若々しく明瞭な存在』にしたいと考えました」(人物デザイン監修・柘植伊佐夫氏『どうする家康』公式サイトより)との思いが込められているという。

次回第41回からは、家康が大阪城・西ノ丸に入り、政治を意のままに行うことになる。政権の中枢に立つことになった家康をそばで支える個性あふれる3人の挙動にも注目したい。

家康(松本潤)を支える3人に注目/(C)NHK