株式会社サイキンソー(本社:東京都渋谷区、代表取締役:沢井 悠)は、京都大学大学院教育学研究科の藤原秀朗研究員、明和政子教授との共同研究により、幼児期における腸内細菌叢の組成と感情制御*1の困難さとの関連性を示しました。本研究の成果は、2023年9月6日付けで『Microorganisms』に掲載されました(URL:https://www.mdpi.com/2076-2607/11/9/2245)。

  • 論文概要

タイトル

Altered gut microbiota composition is associated with difficulty in explicit emotion regulation in young children

(和訳:幼児期における腸内細菌叢の組成は、感情制御の困難さと関連している)

  • 研究概要

【背景と目的】

自己の目標に向けて感情や思考を制御・調整する認知機能は「実行機能」と呼ばれており、生後3~4歳ごろにとくに発達することが知られています。実行機能の中でも、この時期から就学期の感情制御は、生涯にわたる心身の健康の予測因子であることが示されています。しかし、感情制御の発達に関連する生物学的要因については、いまだ未解明のままです。そこで、サイキンソーは京都大学大学院教育学研究科の藤原秀朗研究員、明和政子教授との共同研究により、幼児期の腸内細菌叢が実行機能の発達とどのように関連するかを調べました。

【方法】

今回の研究では、研究への協力に同意いただいた日本全国の保育園・幼稚園・子ども園を通じて、3~4歳の日本人幼児257人のデータを解析しました。具体的には、各家庭で実施されたお子さんの実行機能や食生活習慣に関するアンケートの結果と、便から抽出した腸内細菌の配列を解析して得られた腸内細菌組成比を用いて、主に腸内細菌叢と実行機能との関係に焦点をあてて調べました。

【結果】

実行機能のうち、感情を抑制する認知機能(抑制的自己制御*2)に発達リスクを有する幼児の腸内細菌叢においては、Actinomyces属とSutterella属の相対量が高いことが示されました。事後的分析の結果、このリスク群では緑黄色野菜の摂食頻度が低いこと、偏食の割合が高いことも分かりました。

「抑制的自己制御(ISC)」のリスク群と対照群で相対量に違いのあった腸内細菌に関する比較図

【まとめ】

今回の研究により、幼児の実行機能のうち、感情制御の発達に腸内細菌叢が関連することが示されました。この成果により、生涯にわたる心身の健康を守るためには、生後早期から認知発達のリスクに対処するための介入が有効であることが示唆されました。今後は、幼児の日常の食習慣を軸に腸内細菌叢の発達を可視化し、個々人に効果的となる介入手法を開発するためのエビデンスを収集していく予定です。本研究に関して、藤原秀朗研究員、明和政子教授からも以下のようなコメントをいただきました。

・藤原秀朗研究員からのコメント

「幼児期の感情制御の重要性は10年前から指摘されてきましたが、その発達の個人差を生み出す要因やその機序についてはほとんどわかっていませんでした。感情制御と腸内細菌叢との関連性を示した本研究の結果は、この現状に新しい視点を提供する可能性があります。今後の課題としては、得られた知見(仮説)の因果関係を動物実験で検証し、さらにヒトの感情制御の発達とその個人差を腸内細菌叢や食習慣との関係で長期縦断的に調査する必要があります。この研究の進展により、将来的には個人の生体データに基づいた「個別型」の認知発達支援法の開発が期待されます。」

・明和政子教授からのコメント

「一人ひとりの多様な幸せを実現するために、人間科学が貢献できることは何かを問い続けながら、産学連携で研究を進めています。こうした活動を軸に、個々の親子の日常に寄り添い、薬に頼らず親子の成長を支援しうるヘルスケアイノベーションに貢献していきたいと考えています。」

サイキンソーは今後もマイキンソーコホート*3を拡大しながら腸内細菌叢と健康の関わりについて研究し、腸内フローラ検査などのサービスを通じて、一人ひとりがより健康的な生活を送るための情報を発信してまいります。

【用語説明】
*1 感情制御とは、目標に向けて感情の意識的なコントロール・切り替えを行う認知機能のことを指します。

*2 抑制的自己制御とは、感情制御の一部であり、感情をコントロールする機能のことを指します。家庭や保育園の食事場面を例にとると、子どもは「いただきます」を待ちきれずに大好きな料理に手を伸ばしたくなることがあるかもしれません。しかし、「みんなが揃って『いただきます』と言ってから食べる」という社会的なルールを遵守するため、子どもは食事を開始するまで我慢します。このような感情的な反応にブレーキをかける機能が抑制的自己制御です。

*3 マイキンソーコホートとは、サイキンソーが展開している腸内フローラ検査サービス「マイキンソー」の受検者を対象とした研究プロジェクトにおける研究対象者であり、2023年10月時点で5万人を超えています。

【謝辞】
本研究にご参加いただいた皆様に感謝いたします。
本研究はサイキンソーが実施している研究プロジェクト「マイキンソーコホート研究」の一環として実施いたしました。ご参加いただいた皆様に深く感謝いたします。

  • 人材募集

株式会社サイキンソーでは「細菌叢で人々を健康に」というミッションを共に実現する仲間を募集しています。お気軽にご連絡ください。

・ 研究プロジェクトマネージャー

https://herp.careers/v1/cykinso/-tiZHQyYp4U8

・ 研究支援 &学術

https://herp.careers/v1/cykinso/q4MRB4i_6HoQ

・ データサイエンティスト

https://herp.careers/v1/cykinso/q9p-OxbHcl92

募集ページはこちら:https://cykinso.co.jp/recruit

  • 会社概要

「細菌叢で人々を健康に」を企業理念として、腸内フローラをはじめとする人体の常在細菌叢をデータサイエンスの力で解き明かし、ヘルスケアに貢献することを目指しています。

・会社名:株式会社サイキンソー

・設立 : 2014 年 11 月 19 日

・所在地:東京都渋谷区代々木 1 - 36 - 1 オダカビル 2 階

・代表者:代表取締役 沢井 悠

・主な共同研究先:大阪大学微生物病研究所

・HP :https://cykinso.co.jp/

配信元企業:株式会社サイキンソー

企業プレスリリース詳細へ

PR TIMESトップへ