実在の競走馬をモチーフにした少女たちが苛烈なレースを繰り広げる「ウマ娘 プリティーダービー」のテレビアニメシーズン3が、10月より放送スタート。シーズン2では幼い姿で登場していたキタサンブラックとサトノダイヤモンドがトレセン学園に入学し、それぞれのあこがれの存在であるトウカイテイオーとメジロマックイーンを目指し、レースに挑んでいく。
【画像を見る】第1話放送後に解禁されたキービジュアル。右下にドゥラメンテが追加された
正式アナウンスがあったのは今年2月だが、キタサンブラックとサトノダイヤモンドが主役のアニメが制作されることへは早くから期待が寄せられていた。ゆえに待望の本編であるが、毎話視聴者を驚かせるサプライズが仕込まれていることも大きな話題に。本稿では放送済みの第1~3話を振り返っていく。
■開始1分でのトンデモサプライズ!
デビューから無傷の3連勝を果たしたキタサンブラック(声:矢野妃菜喜)。彼女がクラシック競走の第一冠、皐月賞にまさに挑んでいるところから第1話は始まる。
そんな第1話でなんといっても大きな衝撃を与えたのが、開始わずか1分で登場した“ドゥラメンテ”だ。事前に発表されていなかったこともあり、X(旧Twitter)ではトレンド1位になった。
キタサンブラックと同世代のこのウマ娘。実際の競走馬も同じ世代で、皐月賞と日本ダービーを圧巻のパフォーマンスで制している。アニメでも描かれた通り、ダービー後はケガによって戦線を離脱。三冠目の菊花賞への挑戦は叶わず、その最後の一冠をキタサンブラックが奪取することになる。
このドゥラメンテの実名登場のなにが驚きかというと、実際のドゥラメンテの馬主であるサンデーレーシングの所有馬はこれまで一度もウマ娘化されていなかったことにある。競走馬の権利は馬主にあり、彼らからの許可が下りなければウマ娘化はできない。かのディープインパクトがウマ娘の世界にいないのもそのためで、すでに100人近くのウマ娘が存在するが、それでもなお数多いる名馬がウマ娘化されていないのにはそういった理由がある。
加えて、ゲームではドゥラメンテと思しき馬が“ブリュスクマン”の名で存在していたことも大きな理由だ。実名で出すことが不可能だったからこその対応と思われていたので、視聴者としては「出るわけがない」と思っていたところでのサプライズだった。
なお、このドゥラメンテ世代にはもう一頭、サンデーレーシングの所有馬でクラシックを沸かせた“リアルスティール”という馬がいるが、アニメでは実名で登場しておらず、“ゲンジツスチール”と呼称される馬がそれにあたると思われる(皐月賞ではドゥラメンテに次ぐ2着に入り、第2話で描かれた菊花賞ではキタサンブラックと最後まで熱戦を演じ、何度もその名が叫ばれていた)。ドゥラメンテもリアルスティールもすでに競走馬としては引退しているが、前者はすでに亡くなっていること、後者は種牡馬として現役で活躍していることが、実装/未実装の理由ではないかと考えられている。
第1話ではほかにも、ドゥラメンテの勝利に歓喜する外国人が、実際の競馬でドゥラメンテに騎乗していたミルコ・デムーロ騎手だと思われる描写があったり(隣の客の頭を叩いているのは、同騎手が初めて皐月賞を制した時の挙動)、ダービー前日の縁日でたい焼きのカスタード味を買おうとしたキタサンブラックがうっかり「カスケー…」と言ってしまう(おそらく「みどりのマキバオー」に登場する競走馬カスケードが元ネタ)など、細部でのこだわりやネタ投下があり、話題になっていた。
サトノダイヤモンド(声:立花日菜)のデビュー戦からスタートした第3話。キタサンブラックが所属するチーム<スピカ>の先輩であるゴールドシップ(声:上田瞳)が主役を食う勢いで活躍した回であったが、最大の話題を呼んだのも彼女の発言だ。
物語の中盤、近走の不振から有マ記念をラストランとすることを表明したゴールドシップ。皐月賞と菊花賞を制した年に初めての有マ記念を勝った彼女だが、その後2年間は、「暴君」と「貴婦人」に持っていかれたことをキタサンブラックに話す。
史実でこれに該当するのが、暴君=“オルフェーヴル”、貴婦人=“ジェンティルドンナ”だ。騎手を振り落としたり、レース中に逸走し大幅なロスがあったにもかかわらず勝ち馬に迫ったりといったエピソードから「暴君」と称された三冠馬オルフェーヴル、イタリア語で「貴婦人」の意味の名を持つ三冠牝馬ジェンティルドンナ。この2頭もサンデーレーシングの所有馬で、ゲームでは未実装である。
多くの視聴者が、「ああ、やっぱり実名は出せないんだ」と思ったことだろう。しかし、よもやの終盤で、この2頭の馬名がゴールドシップの口から発せられる――「待ってろよ、オルフェーヴル、ジェンティルドンナ!トゥインクル・シリーズでの借りは、ドリームトロフィーリーグで必ず返す!」
前述のリアルスティールがゲンジツスチールになっていたり、キタサンブラックを破り有マ記念を制した馬がオールハイユウ(史実ではゴールドアクター)となっていたりと、許可が下りていないと名前から変えられているのがウマ娘の世界。キャラクターの姿こそ映しだされていないが、オルフェーヴルとジェンティルドンナの実名登場は、今後の実装が十分にありえることを示唆していると言えるだろう。
このほか第3話では、有マ記念当日のスタンドに実際のゴールドシップの世話をしていた今浪厩務員と思われる人物が映しだされていたりと、ファンの心を揺らす描写を盛り込んできていた。また放送終了後には、ゴールドシップを主人公とする新たなコミカライズが週刊コロコロコミックで連載されることを発表。上述のオルフェーヴルやジェンティルドンナがこちらに登場する可能性も高そうだ。
毎話ファンを歓喜させるサプライズを織り込み、注目を集めている「ウマ娘」。キタサンブラックのクラシック級の戦いが幕を下ろし、第4話以降はシニア級に上がった彼女の大躍進と、それを追うサトノダイヤモンド、そしてライバルのサトノクラウン(声:鈴代紗弓)やシュヴァルグラン(声:夏吉ゆうこ)らの活躍も描かれるだろう。本編はもちろん、そのなかでどんなサプライズをねじ込んできてくれるのか、引き続き注目していきたい。
最後に、先日行われた今年の菊花賞ではドゥラメンテ、サトノクラウン、キタサンブラックの子どもたちが上位に入り、SNS上では「ウマ娘馬券」というワードも目についた。アニメと連動するかのような熱戦がリアルな競馬でも繰り広げられているので、チェックしてみてはいかがだろうか。
文/田中諒
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