インターネットなどで、著名人が「拒食症」や「摂食障害」に悩んだなどというニュースを見かけることがあります。「摂食障害」、「拒食症」のほかにも、「過食症」というワードを耳にする人も少なくないと思います。そこで、「拒食症」と「摂食障害」の違いや、「拒食症」の症状、なりやすい人などについて、精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。

原因は“本人側”、“家族側”に分けられる

Q.ずばり、「拒食症」と「摂食障害」は何が違うのでしょうか?

田中さん「拒食症と摂食障害の違いですが、拒食症は、過食症、過食性障害とともに摂食障害に分類されています。つまり、摂食障害という精神障害カテゴリーの中に拒食症は位置付けられています。

拒食症は『普通に食べられない』ことから極端に体重が減少し、さまざまな心身の不調がみられ、日常生活に支障が出るものです。

また、過食症は『食べすぎてしまう』ことからそれをリセットしようと吐いたり、下剤をたくさん服用したり、過度に運動をしたりして、日常生活に支障が出るものです。

最後の過食性障害は、最近知られるようになった新たな病態で、主に『ひどく食べすぎてしまう』ことが問題となり、日常生活に支障が出るものです。

ちなみに、拒食症と過食症は互いに移行することがわかっていて、どちらかに分類するよりも、現在困っている心と体の症状をきちんと調べ、ひとまず対応しやすい症状、命の危険がある症状などを見分けていくことが大切になります」

Q.「拒食症」になる原因やなりやすい人物像を教えてください。

田中さん「さまざまな要因が考えられるのですが、大きく分けて『本人側の原因』と『家族側の原因』に分けられます。

(1)本人側の原因として、摂食中枢・満腹中枢の失調と栄養のアンバランスと心身の変調の悪循環が起こっていて、心理面としてはやせ願望、肥満恐怖、こだわりが強い、成熟拒否、女性性拒否、自立葛藤などがあるとされています。

(2)家族側の原因として、母親の過干渉、父親の無関心、きょうだい葛藤などが知られています。

これらの原因は教科書に必ず載せられていますが、近年、症状がひどくなる前に受診するケースが増えてきたこともあり、治療が始まって数年してから本人や家族の悩みや葛藤が出てくるケースも少なくありません。病気の原因とされてきたことが、実は病気の結果ということもあるかもしれないと思っています」

Q.「拒食症」の症状は男性と女性で異なるのでしょうか。

田中さん「拒食症は男性よりも女性に発症しやすいことが知られています。男性例も、極端な体重減少によって心身のさまざまな不調に苦しめられますし、独自の食事の仕方などにこだわって『普通に食べられない』のは女性例とほとんど変わりがありません。ただ、下剤をたくさん服用するよりも、筋トレ、散歩、ジョギングなどの運動を過度に行う(一日のうちに数セットこなすなど)ケースが男性例には多い印象があります」

Q.「食欲が落ちた」「何を食べても吐いてしまう」といった症状が出た時、どのように対処すればいいのでしょうか。またはどのようなタイミングで受診するのがいいのでしょうか。

田中さん「年齢にもよりますが、『食欲が落ちた』『何を食べても吐いてしまう』という症状があれば、まずは消化器内科(子どもの場合は小児科)を受診してください。メンタル不調が重なっている場合にも、まずは内科を受診して身体疾患が隠れていないかどうかを検査してもらいましょう。

その上で、『自分で無理なダイエットを始めたら、だんだん食べられなくなった』『イライラ解消でたくさん食べて吐くようにしていたら吐きグセが抜けなくなった』というような場合には、改めて摂食障害専門の心療内科または精神科を紹介してもらうとよいでしょう。

摂食障害からの回復は数カ月以上、人によっては数年かかることが少なくありません。相性の良い医師を見つけて定期的に受診し、安定した食事と体重をキープできる生活を取り戻してほしいと願っています」

オトナンサー編集部

「拒食症」になりやすい人とは?