実際は広告なのに、それを隠す「ステルスマーケティング」(通称:ステマ)が景品表示法違反となる、いわゆる「ステマ規制」が10月から始まった。

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」は不当表示とされ、事業者が処罰(措置命令)の対象となる。

ただ、いまだに「これってステマ?」と首をかしげるケースに遭遇することもある。

最近もレストランで「グルメサイトやグーグルマップに店の口コミをしたら、デザート1品プレゼントします」という案内を見かけた。

「投稿後に確認したら、提供します」と説明する店員の目前でネガティブなことは書きにくい。「おいしかったから、また来たい」と無難な内容の口コミを投稿したものの、食後のジェラートには、美味しさと後ろめたさを感じた。

消費者庁のガイドブックを参照すると、ステマと判断されるのは「事業者が自ら行う表示」であって「一般消費者が事業者の表示であることを分からないこと」もののほか、「事業者が明示的に依頼・指示をして第三者に表示させた場合」や「明示的に依頼・指示していない場合であっても、第三者に表示させた場合」も含まれる。

規制の対象は商品・サービスを供給する「事業者」に限られ、インフルエンサーなどの第三者は対象外だ。

今回のようなケースも「ステマ」に該当するのだろうか。消費者庁に見解を聞いた。

⚫︎じゃあ、デザート1品サービスは?

——「口コミを投稿してくれたら、デザート1品サービス」はステマですか

消費者庁表示対策課:表示が「ステマ」と認められるのは、ケースバイケースであり、表示の内容などさまざまな観点から総合的に判断されます。

今回は、口コミの内容は「星5などの高評価」を指示されたわけではなく、自由に書けるものの、投稿した内容をその場で店に見せなければいけないというものです。

店が明示的に高評価を指示していなければステマにあたらないというものでもなく、今回は店員に投稿内容を見せるというところでネガティブな評価を書きづらいという構造になっています。

星1の投稿をつけたらデザートが出てこなかったということであれば、依頼の際に内容も指定されていたという評価につながり、ステマという判断になりやすいでしょう。

逆に、「食べログに書いてくれたらデザート1品お付けしますが、正直に書いてください。星1でも怒りません」といった言動があるなどすれば、ステマにあたりにくい。

ひとつの側面だけを切り取ってステマの白黒をつけるのはなかなか難しいのですが、さまざまな要素を総合的に判断して、高評価を依頼しているならステマと評価されます。

では、「星5をつけて」と依頼したとした場合はステマかというと、これも「広告」「PR」とハッキリわかるような記載があれば問題はありません。

店側としては、今回のような口コミを依頼するのであれば、「自由な評価をしてほしい」と強調しておいたり、口コミの内容に「広告です」「デザートをサービスしてくれると店から言われて書いてます」と記載してもらえばよいです。

店側が高評価を狙っていなければ、客にデザートをつけるインセンティブはないと思われますので、こうした投稿を広告だと言いたくないというのは、当庁の立場としては、それはいかがなものかということになります。

——無料でデザートをもらえるとあって、客は心情的にネガティブなことを書きにくいわけですが、堂々と「デザートと引き換えに投稿しています」などと投稿してよいのですね

消費者庁表示対策課:ステマ規制は飲食店の口コミを書く客や消費者を対象とするものではありませんが、客側の姿勢としては堂々と「頼まれた」と書いてもらって大丈夫です。

そうすれば、口コミを見た人は「宣伝」だとわかりますので。

——ステマと判断された場合、店側にはどのような罰則がありますか

消費者庁表示対策課:この類型のステマ規制の場合は、もっとも重くて措置命令になります。違反した表示の差止め・その違反行為を将来繰り返さないことの約束、再発防止策を講ずることなどが含まれます。

命令に反すると刑罰・罰則もありえる。摘発のリスクもあります。10月1日以前の投稿であっても、ステマの表示状態が継続されていれば摘発対象となります。

グーグルの口コミは

なお、Googleのガイドラインは、グーグルマップに投稿するコンテンツの一部を禁止している。「企業が割引、無料の商品やサービスと引き換えに投稿を促したコンテンツ」も禁止されているため、今回のケースは媒体側の規制対象になりえる。

飲食店の「口コミ書いたらデザート1品プレゼント」、ステマ規制に引っかかる? 消費者庁の見解は