大阪・なんばを拠点に活動する「NMB48」。かわいいだけでなくお笑いもこなす親しみやすいアイドルグループとして、2023年には結成13年目を迎え、メンバーたちはバラエティタレントにモデル、グラビアアイドルなど、あらゆるジャンルの前線で活躍している。

【写真】ゆいなちゃんが選んだパン5品。抹茶×ホワイトチョコレートのパンがお気に入り?

なかでも“グルメ”に特化した活動の幅を広げているのが、6期生のゆいなちゃん(出口結菜)。InstagramやTikTokでは「#ラビグルメ」と称し、関西を中心に、お財布に優しいグルメ情報を自ら編集した動画で発信している。過去にはラジオの冠番組で食レポにも挑戦し、2023年6月にはホームページ「#小麦を愛す女子」を立ち上げるなど、“グルメアイドル”道を邁進中。

そんなゆいなちゃんが、大阪にあるパンの名店を紹介する本連載。第3回となる今回は、天神橋筋六丁目駅から徒歩すぐ、天神橋筋商店街の一角に店を構える「HATSUTATSU 天六店」へ。

■パンの知識を吸収中のゆいなちゃん。まずは気になるパン選びから!

「前回の撮影でクロワッサンについて教えてもらってから、クロワッサンを食べるときは層を数えるようになって、友達に『これ、層多いやつやわ』って知ったかぶりするようになりました(笑)。見た目からわかるようになったのがうれしいんです。自分でお店に行くだけだと詳しいことは聞けないので、この連載では新しく勉強できることがめちゃくちゃ多いなと思っています」と、取材前のゆいなちゃん。今日はどんなことが学べるのかと、わくわくした様子で早速、店内へ。

今回「HATSUTATSU 天六店」を案内してくれる宮本秀二シェフから、「気になるパンを自分で選んでみてください」と提案があり、うっきうきでパンを選んでいく。

ゆいなちゃんが「これおいしそう!」と最初に注目したのは、とあるパン。「しょうゆかおるごま…えっ?牛?」と考えながら読んでいたポップには、「牛蒡(ごぼう)」の文字が。読み方を聞いたあとは、「ごぼう!珍しいからこれにしよ〜!いい匂いがします」と迷わず手に取っていた。

「このお店はハード系が人気なんですかね?」と言いつつ、次に見つけたのは「クロワッサン オ アマンド」(240円)。いわゆる「アーモンドクロワッサン」だ。こちらも商品説明が書かれたポップを読み、「“クロワッサンにおいしいクリームをはさんで”…いいなぁ、これにしよっかなぁ。でもこっちのも気になる。“マロンと胡桃のおいしい”…あー、読まれへん(笑)」とじっくり考えて、「クロワッサン オ アマンド」をトレーに追加。なお、ゆいなちゃんが読めなかったのは「マロンと胡桃(くるみ)のおいしいBrioche(ブリオッシュ)」だった。

続いて、連載の初回以来、毎回食べてきたバゲットコーナーへ。「小さいほうがいいですかね?どうしよ〜、これは“もちもちおいしいフランスパン”…」と、店員さんにもアドバイスを求めつつ、大好きだというライ麦が使われているバゲットを選んだ。

さらに「次は甘い系。抹茶にしようかな?」と全体のバランスも考えながら、最後に選んだのは「抹茶とホワイトチョコレートのおいしいパン」(210円)。トレーいっぱいにパンをのせて、「置く場所が全然ない!」とうれしい悲鳴をあげていた。

最近のゆいなちゃんは、バゲットを冷凍してアレンジを楽しんでいるそう。「焼いてバターを塗ってチーズとハムをのせたり、ハヤシライスが残ったら次の日の朝にバゲットを浸して食べたり。朝はだいたいお母さんと一緒に食べるので、お母さんが好きなライ麦のバゲットが多いですね」

どんどんパンに詳しくなっていくゆいなちゃんに「#小麦を愛す女子」で紹介しているお店の選び方を聞いてみると、「パン屋さんを目指して行くときは、わざわざ足を延ばして行きたくなるような自営業のお店を選ぶようにしています。もちろん、店舗数が多くていつでも行きやすいチェーン店にもチェーン店のよさがあるなと思いますね」

「グルメ情報はインスタで調べることが多いけど、パン屋さんはGoogleマップを使っていて、インスタでまだバズっていないようなお店を選んでいます。ファンの方の声も大事にしていて、『ここに行ってほしい』とか言っていただけると、今まで行ったことがない土地にも行けるのでありがたいですね」とのこと。ちなみに、今狙っているパン屋さんは、営業時間が不規則で売り切れが早く、以前行ったときには閉まっていたのだとか。

■ぬれおかきのようなパンに、抹茶×ホワイトチョコ…興奮が止まらない解説&実食タイム

ここからは、シェフにパンを説明してもらいながら、お楽しみの実食タイム。

まずは、トレーにのせてからも「気になる」と言い続けていた、「しょう油香る胡麻と牛蒡のフーガス」(240円)。「ペイザンヌという農家風の生地に、ゴマとごぼうを練り込んでいます。ぬれおかきみたいなものを作りたいと思って考えたパンで、甘醤油で仕上げています」と話すシェフに、「ぬれおかき!?わぁ、楽しみ!」とさらに期待を膨らませていた。

「ゴマがいっぱい!いただきま〜す!」と元気に頬張ると、「すごい!おいしい!ほんまにぬれおかきみたい!もちもちで、程よい硬さもある。しっかりごぼうの味がしました」と大満足の様子。

続いて、「抹茶とホワイトチョコレートのおいしいパン」。「ヴィエノワという生地を使っています。本来は水とお塩、砂糖、少しの牛乳で作るものですが、うちのはパン・オ・レ(フランス語ミルクパンのこと)に近い感じの生地で、牛乳の配分を多くしたヴィエノワ生地になっています。個人的にふわっとしてしまうのがあんまり好きじゃないので、ちょっと硬めに作って、ホワイトチョコのチョコチップを練り込んでいます」

「抹茶とホワイトチョコの組み合わせ、めっちゃ好きなんです。さっきも名前で決めました」と言うゆいなちゃんに、「じゃあ、もうちょっとチョコレート入れとけばよかったです(笑)」とシェフ。ゆいなちゃんは「でも、くどすぎないほうがいいですもんね!」と言いながら、ひと口ガブリ。「表面はカリカリしていて、抹茶が濃厚で少し苦味があります。そこにホワイトチョコの甘さがプラスされるので、バランスがいい!深みがありますね」と、笑顔を見せた。

「クロワッサン オ アマンド」は、クロワッサンにクレームパティシエール(カスタードクリーム)を挟み、クレームアマンド(アーモンドクリーム)とアーモンドスライスをのせて焼いたもの。

「クロワッサンは、“ふわっ”とか“サクッ”っていう食感を求められることが多いんですけど、僕は値段を抑えることを大事にしています。パンって懐が深いもので、ケーキ屋さんが作るクロワッサンが400円とかでもかまわないと思うんです。でも、パン屋さんは、デイリーに子供からおじいちゃんおばあちゃんまでが来る場所。バターの配合を多くしてしまうと値段が高くなるので、『クロワッサン』と呼べるギリギリの量にしています。マニアの方には『これはクロワッサンじゃない』と言われることもありますが、僕はあくまでも、お子さんがお母さんに駄々をこねてギリギリ買ってもらえるぐらいの値段のものを、と考えています」。シェフの信念を聞いたゆいなちゃんは、「素敵ですね」と呟いた。※通常のクロワッサンは180円。

さらにシェフからは、「安くても、自分なりにはクロワッサンとして成立していると思っています。クロワッサンの層は18から、多いと36のところもありますが、うちは少なめの18。バターが少ないので、多めに折り込んでしまうと層がきれいに出なくなってしまう。あとは、食べ応えで満足感を出したいと思っています。海外のクロワッサンはサイズが大きいため、層が多くなってもボリューム面で成立すると思うのですが、HATSUTATSUのクロワッサンのサイズだと18層がベストだと思います。2回3つに折って、さらに2つに折るから、3×3×2で18ですね」と説明が。ゆいなちゃんも一緒になって層の数を確認した。

「それぞれいろいろなやり方があるので、これが正解、不正解っていうのは、パンにはないと思うんです。『絶対にこうじゃないとダメ』ってなると、食べ物としてすごく窮屈になっちゃう。それから、従業員の労働環境のことも考えています。クロワッサンの場合は、層が多くなると生地を冷やす時間が長くなるんです。それを減らすことで、10分や15分でもできるだけ早く帰ってもらって、自分の趣味とかに時間を使ってもらうほうががいいと思っています」

続いて、「けしの実と黒胡麻の農家風Pain」(160円)は、表面に黒ゴマがまぶしてあるかと思われたが…。「これも、ペイザンヌ(農家風パン)にゴマとけしの実を合わせたパンです。表面についているのはゴマではなくて、ブルーポピーという、焼くと黒くなるけしの実。僕は白いものよりこっちの香りが好きなんです。黒ゴマは生地に練り込んでいます」

ここで「けしの実」がピンとこないゆいなちゃんはじめスタッフ一同は、実際に見せてもらうことに。「めっちゃいい匂いする!すごいきれい」とゆいなちゃんも興奮。白いけしの実はあんぱんに使われることでもおなじみで、「白いほうが乾いた匂いがして、あんこに合うと思います」と教えてくれた。

ゆいなちゃんが「お母さんと食べたい」と選んだライ麦のバゲットバゲット パンセ」(300円)は、レーズン種とサワー種の2種を使っているそう。「レーズンにお水を加えて発酵させると、ブクブクとガスが発生します。それを小麦粉と混ぜて菌を培養するのがレーズン種です」。こちらも実際に、レーズンや生地を見ながら解説してもらった。生地を目の前にして「お酒の匂い…!?」と言うゆいなちゃんに、「アルコールとガスが発生してるからですね」とシェフ。

ライ麦種は、ゆいなちゃんいわく「香りが全然違う」。「ライ麦とお水だけを練っていくので、おうちでもできますよ。ライ麦を1日水につけてからパン生地に練り込む人もいるし、いろいろなやり方があります。だから、やっぱりパンには“これが合っていてこれが間違っている”っていうのがないんです。フランスにいたときに、こういうふうに作るシェフが多かったから、僕はその形でやらせてもらっています。2つのパン種を混ぜると、風味と味が奥深くなると思っています。音楽だと、ドラムにベースやギターが入るみたいなイメージです」

■「パンは寛容で懐が深いもの」フレンチ出身のシェフが語る、パン屋さんが多い理由。

もともとは、フランス料理を勉強していたという宮本シェフ。「残念ながら辛抱が足りず、挫折してしまったんですけど。不器用だしすぐ逃げるしって、教えてくれたシェフたちにも見透かされていた気がします。それでも料理は好きだったので、『何か料理の世界にいられるものを』って考えたときに、パンだ!って。料理の勉強でフランスにいたときに、同じ厨房でパンを焼いている職人がすごく楽しそうに作っていたのがきっかけです。今も料理が好きで、あきらめたわけでもないので、この店の3階で食堂のようなものができないかと、今少しずつ整えているところです」

26歳でパンの道に進んでからは、大阪・淀屋橋にあったフランス料理の名店「シェ・ワダ」へ。「そこのシェフもすごく厳しかったけど熱意がある方で、すごくいろいろなことを教えていただきました。働いて2日目ぐらいのときに、『パン店のシェフをしよう』って言われて。それが自分の経験の中では大きかったです。僕は明確な信念がなくて、シェフや従業員、お客さんたちに助けてもらってここまできました。最初からスターのようなシェフもいるけど、僕はそうではない。従業員がいないとパンを作れないんです。彼らを見ていると、『僕が同じ歳のとき、ここまでがんばれていたかな』って思ったりもして、普段は言わないけどとても感謝しています」

さらに、「HATSUTATSU 天六店」の話題に。「このお店も、中津にある本店を営んでいるときに、お客さんに『天六で店やらへんか』って言われたのがきっかけです。『いいですね』とは言ったけど、まさかこんなにいい場所だとは思いませんでした(笑)。本当にお客さんには助けられています。実は、“影の監督”的なお客さんが3名いて、『これもうちょっと焼いたほうがいいやろ』って言われてよく焼いてみたり、『この食材はこれと合わないんじゃないか』って言われたら、『たしかにな、でも使いたいからどういうふうにしたらいいかな』って考えたりしています」

パンをはじめとした、食べ物の懐の深さを力説してくれた宮本シェフ。最後に、「ケーキの世界にはアングレーズソースというものがあって、凍らせるとアイスクリームに、小麦粉やコーンスターチを入れるとクレーム・パティシエール(カスタードクリーム)になり、卵を多めに入れて蒸し焼きにするとプリンになる。そういうふうにひとつのものから派生していくのが料理やケーキ、パンなんです。最初はひとつだった味も分岐して広がっていく、裾野がすごく広いものだと思うんです。

野菜もフルーツも、切ったらその部分から酸化していくから、おうちでカットして調理するほうがいいと思うし、それが家庭の味になっていく。僕らが提案するおいしい食べ方もあるけど、原価がのって高くなっちゃうし。チーズひと口にしても、『今日はこのチーズにしてみようかな』っていう選択肢があったり、食べ物ってそういうふうに寛容なものだと思うから、『こうだ』って言い切っちゃうとめんどくさくなっちゃう。だからパン屋さんって、この世にたくさんあるんですよね」と語ってくれた。

「なるほど…」と相槌を打ちながら、真剣にシェフのお話に耳を傾けていたゆいなちゃん。これまでとはまた違った角度からの意見を聞くことができる、充実の時間を過ごした。今回もたっぷりパンを購入して、ホクホク顔でお店を後にしたゆいなちゃん。次回はどんなパンやシェフとの出会いが待っているのか?お楽しみに!

取材・文=上田芽依

撮影=福羅広幸

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

新型コロナウイルス感染症対策の実施については個人・事業者の判断が基本となります。

今回はゆいなちゃんが気になるパンを選ぶことになり、終始この笑顔!