今シーズンのプレミアリーグでは、予想外のチームが優勝するかもしれない!

 古豪の復活だ。過去にはリーグ優勝の経験があるものの、1992年に発足されたプレミアリーグでの最高成績は2位。久しく栄冠から遠ざかっている。それでも新しい監督の下で快進撃を見せており、今季は数十年ぶりのリーグ優勝に向かって邁進している。果たして、アストン・ヴィラは優勝できるのだろうか…?

 もちろん、今季プレミアリーグで最も注目を集めているのはトッテナムだ。今オフにアンジェ・ポステコグルーを招へいしたチームは、プレミア史上初のオーストラリア人監督の下で小気味よい攻撃サッカーを披露して勝ち続けている。今季ここまで開幕9試合で「7勝2分け0敗」と無敗。プレミアでのクラブ史上最高のスタートを切って、2位マンチェスター・シティに2ポイント差をつけて首位に立っている。この調子を維持できれば、1960-61シーズン以来となる63年ぶりのリーグ制覇も夢ではない。

 だが、トッテナムほどではないものの快進撃を見せているチームが他にもある。それがアストン・ヴィラだ。今月22日に行われたプレミア第9節、ウェストハムとのホームゲームでは、エースのオリー・ワトキンスのゴールなどで難敵を4-1で退けた。開幕9試合を終えた時点で勝ち点19を稼いでおり、ここ25年間で最高のスタートを切って4位リヴァプールとは1ポイント差の5位に着けている。

「開幕前、我々はトップ4やトップ7の候補に挙げられていなかった。だが我々は夢を持つべきなんだ」と試合後にウナイ・エメリ監督は語った。「その夢の1つがトップ7に入り、欧州カップ戦で何かしらの結果を残すことだ」と目標を掲げたが、トップ7なんて小さいことを言わず、頂点を目指してもいいのかもしれない。というのも、『Opta Analyst』のデータ分析官によると、アストン・ヴィラにも優勝できる理由がいくつかあるというのだ。

 果たしてアストン・ヴィラは1980-81シーズン以来、43年ぶりのリーグ制覇を達成できるのか? 彼らの優勝の可能性を見てみよう。

◆■優勝の可能性

 プレミアリーグが38試合制になった1995-96から数えて過去28シーズン、開幕9試合を終えた時点で現在のアストン・ヴィラのように19ポイント以下にいたチームが優勝したケースは12回もあるという。2015-16シーズンには、今のアストン・ヴィラより3ポイントも少なかったレスターが“奇跡”を起こしてリーグ優勝を果たしており、今季のアストン・ヴィラも十分に優勝を狙える位置にいる。

 今季ここまで5位のアストン・ヴィラだが、今年の元日から数えた「2023年の順位表」を見ると、アストン・ヴィラの勝ち点62よりも稼いでいるのは絶対王者マンチェスター・シティ(72ポイント)しかいないそうだ。ちなみに、今季優勝候補の一角とされるアーセナルも2023年は31試合でアストン・ヴィラと同じ勝ち点62。そのため、もしアーセナルが優勝を狙えるのなら、アストン・ヴィラだって不可能ではない。

 昨年11月にアストン・ヴィラの監督に就任したエメリは、これまでプレミアで34試合を指揮。結果は「21勝5分け8敗」で勝ち点68。1試合平均で2ポイントを稼いでいることになる。次節が35試合目になるが、これまで1つのクラブでプレミア35戦以上を率いて、平均2ポイント以上を稼いだ指揮官は8名だけ。その8名ともリーグ優勝を果たしているという。アレックス・ファーガソンジョゼ・モウリーニョジョゼップ・グアルディオラユルゲン・クロップカルロ・アンチェロッティロベルト・マンチーニアントニオ・コンテ、マヌエル・ペジェグリーニといった錚々たる名将たちエメリ監督は肩を並べることになるという!

◆■好調の要因

 優勝とまではいかないが、彼らの成功を信じる者は他にもいる。「本物に感じる」と『BBC』ラジオでアストン・ヴィラを称えたのは元マンチェスター・シティのDFネダム・オヌオハ氏だ。「ウェストハムに押し込まれる時間帯もアストン・ヴィラは落ち着きを失わなかった。1点差に迫られても慌てないのは素晴らしい。彼らは自分たちの戦い方を分かっている。安定感もある。だから本物に感じる。」

 とりわけ、ホームゲームでのアストン・ヴィラは本物だ。現在アストン・ヴィラはホームでリーグ戦11連勝しているが、これはバイエルンを下してチャンピオンズカップを制した翌年の1983年に13連勝して以来のこと。そして今の彼らには今月イングランド代表にも返り咲いてゴールを決めたFWオリー・ワトキンスというエースがいる。

 今季プレミア9試合で「5ゴール・5アシスト」をマークして10点に関与しているストライカーは、エメリ監督の下で精神面が変わったという。「間違いなく意識が変化した」とワトキンスは『Sky Sports』に説明した。それまではチャンスを外した際に自分を責めていたワトキンスだが「監督が常に信頼してくれる。チャンスを外しても、次のチャンスがくると信じられる」と前向きになった。

 以前は、低い位置まで戻ってきてボールに触ろうとしたが「今は、どうでもいい。ボールに触ることにはこだわらない。そういうプレーは中盤のクリエイティブな選手に任せる」と話す。そして得意な形も持っている。中央より少し左側を高速ドリブルで仕掛け、得意の右足で切り返してネットを揺らす。ウェストハム戦では、そのパターンを警戒されていると感じ、切り返さずに一度シザーズしてから左足で縦に持ち出してニアハイに打ち込んだ。

 その他にも、チームにはフランス代表FWムサ・ディアビ(24歳)やイタリア代表MFニコロ・ザニオーロ(24歳)といったクリエイティブな才能がいる。そしてワトキンスと共にゴールを量産しているのがMFドウグラス・ルイス(25歳)だ。スティーヴン・ジェラード政権の昨夏、クラブは契約が残り1年となった彼を売却することも検討したが、本当に手放さなくてよかった。ブラジル代表経験を持つミッドフィルダーは、今季ここまでPKによる3点を含め、5ゴールも決めているのだ。

 それでもエメリ監督は満足しない。ウェストハム戦で2ゴールを決めて勝利に貢献したブラジル人について「彼の活躍は私も嬉しい」と前置きした上で「2点決めたあと、試合をコントロールしないといけない時間帯で彼は気を緩めていた。もっとできるはずだ」と背中を押す。

 昨年の10月24日に就任が発表されたウナイ・エメリ体制は、ちょうど1周年を迎えたことになる。当時17位に低迷して残留争いを演じていたチームは、1年後には5位につけている。

 果たして彼らは本当にリーグ制覇を狙えるのか? アストン・ヴィラの快進撃に注目したい。

(記事/Footmedia)

快進撃に注目が集まるアストン・ヴィラ [写真]=Getty Images