米フロリダ州で高速道路の工事をしていた作業員が、はからずも1800年代の難破船を発掘したとのニュースが舞い込んだ。
このほど土中から見つかったのは、その木造船のほか船員のものらしい革のブーツや1869年のコインといった複数の遺物で、保存状態は非常に良好だという。
天然のタイムカプセルのごとき貴重な発見は、19世紀の海洋交通はもちろん、人々の生活や文化の新たな知見の手がかりになるとみられ、同州運輸局と考古学チームが協力して調査にあたっている。
今月半ば、アメリカのフロリダ州運輸局が、高速道路の工事中に1800年代の海洋史の一部を発掘したと発表した。
当局によると、現場は同州セントオーガスティン市にあるライオンズ橋付近の州道A1A上で、付近にはミニゴルフコースもある。
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発見者は掘削中の作業員で、今月5日、下水管埋設のため地下を掘り進めている最中に、昔の船がほぼ無傷の状態で見つかったという。
船上に当時の船員のものらしい遺物も複数
作業員も二度見したであろうその船は、深さ約2.4から3メートルの土中に埋まっていた。
さらに驚くことに、その状態はとんでもなく良好で、その船上にあたるところから当時の船員のものとみられる遺物まで複数見つかった。
専門家によるとこの船は1800年代半ばから後半にかけてのものだという。
何らかの事情で難破または沈没したものとみられるが、その後もさほど朽ちることなく、ひっそりとつい最近まで眠っていたことになる。
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状態良好も浸水でもろく分解したのち保管へ
現在当局は、アメリカ最大の海洋考古学チームSEARCHのメンバーと協力し、船の歴史や遺物の解明にあたっている。
木造船の発見時の長さは6メートルほど。ただその長さは木材の質にもよるという。柔らかい松や杉でできてるのであれば全長8.5メートルだったとの見解もある。
実は船体は、無傷で状態が良いものの、すべての板がたっぷりと水を含んでおり、水に長時間漬け込んだ厚いボール紙のようにもろくなっている。
だが乾燥すれば朽ちるスピードも速まるため、チームは大急ぎで細心の注意を払いながら一時分解したのち、保管場所に運び出したという。
発掘と回収を主導したSEARCHのジェームズ・デルガド博士は「19世紀の小型船。一本マストで喫水の浅い帆船で、沿岸や沖合で魚介を採るのに使われた」だろうと述べている。
喫水とは船体が水面下に沈む深さを指すもので、積み荷が増えるほど深くなる。浅いということは貨物船などとは異なる用途の帆船だったと考えらえる。
遺物は革の靴や1869年のコイン。船は保湿を欠かさず観察
一方、フロリダ州運輸局の考古学者イアン・ポーン氏によると、発見された遺物の中には、革のブーツ、複数のコイン(うち1枚は1869年のものと判明)、またカップ代わりだったらしいココナッツの殻の半分があった。
そのほかに使用した跡があるオイルランタンの一部もあった。
今回の船の発見は、ここがかつての水辺であり、海岸線にほど近かったことを示している。
もちろん他にもいろいろな調査が進められる予定だが、当面は船体の保存が最優先で、今後は保湿しながらの観察になるという。
今後は保存を念頭に、安定化のため湿ったままの状態を維持しながら観察を行います。私たちは考古学者や市と緊密に協力し、このユニークな発見の永住の地を見つけます。
管轄局員も驚く信じがたい発見
一方、この発見と発掘に伴い、運輸局では工事の一時中断を余儀なくされたが、この地区の管轄局員であるグレッグ・エバンス氏はこのように述べている
この船は突然沈没して、時とともに泥に沈みこんだ可能性があると考えています。だからこそ、保存状態が非常に良かったのでしょう。カプセルのように土や泥に包まれてたせいで、空気に触れることなく腐食も無かった。本当に信じがたい発見です。
当局は、全プロジェクトにおいて、サービスを提供するコミュニティ固有のニーズに敏感に対応します。そこには建設現場内の史跡や人工物がある可能性も含まれています。この発見がどんなものなのか楽しみにしています。
永い眠りから目覚めた船と遺物の解明はまだ始まったばかり。
専門家も太鼓判を押す保存状態の良さからもかなり期待が高まるが、とりあえず焦らず気長に待つとしよう。これこそが歴史と向き合う醍醐味といえそうだ。
References:nypostなど /written by D/ edited by parumo
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