内閣府より最新となる『がん対策に関する世論調査』の結果が公表されました。日本人の半数以上が一生に1度は罹患するといわれる「がん」。そんな病気に対する日本人のリアルな声に耳を傾けてみましょう。

日本人の3人に1人が「がん」で亡くなっている

国民病と称されることもある「がん(悪性新生物)」。日本において1981年より死因のトップとなり、現在では、年間37万人以上の日本人ががんで死亡。3人に1人が「がん」で亡くなっていることになります。

国立研究開発法人国立がん研究センター『がん情報サービス』によると、1年で新たにがんと診断されたのは99万9,075例。日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性が65.5%、女性が51.2%。死亡する確率は男性が26.2%(4人に1人)、女性が17.7%となっています(すべて2019年数値)。

日本人のがん罹患数が多いがんは、1位が「大腸」。「肺」「胃」「乳房」「前立腺」と続きます。また男女別でみると、男性の1位は「前立腺」、女性の1位は「乳房」。また死亡数でみると、トップは「肺」。「大腸」「胃」「膵臓」「肝臓」と続き、男女別でみると、男性の1位は「肺」、女性の1位は「大腸」となっています。

さらに都道府県別にがん死亡率をみていくと、トップは「秋田県」で、人口10万人あたり460.0。「青森県」「北海道」「島根県」「高知県」と続きます。一方でがん死亡率が最も低いのは「沖縄県」人口10万人あたりで239.4。「東京都」「滋賀県」「神奈川県」「愛知県」と続きます。同じ日本でも、倍近くの差が生じています(関連記事:都道府県「がん死亡率」ランキング…『2022年 人口動態調査』)。

このような「がん」に対して、日本人はどのようなイメージをもっているでしょうか。内閣府が先日公表した『がん対策に関する世論調査』で紐解いていきます。

まず「がん」のイメージ。9割が「怖い」と回答。その理由で最も多いのが「がん=死」というイメージによるもので8割。「痛みによる恐怖」「家族等への負担」「高額な治療費」が6割程度。国民病といわれるだけに、多くの人は断片的であるにせよ「がん」の知識をもっているのでしょう。それにより大きな不安感につながっていると考えられます。

Q.あなたは、がんについてどのような印象を持っていますか。

●「怖い」*1…90.2%

●「怖くない」*2…7.2%

*1:「怖い印象を持っている」「どちらかといえば怖い印象を持っている」の合計

*2:「どらかといえば怖い印象を持っていない」「怖い印象を持っていない」の合計

Q.がんを怖いと思う理由は何ですか。

●「がんで死に至る場合があるから」…81.6%

●「がんそのものや治療により、痛みなどの症状が出る場合があるから」…62.6%

●「がんの治療や療養には、家族や親しい友人などに負担をかける場合があるから」…58.6%

●「がんの治療費が高額になる場合があるから」…57.7%

●「がんによって仕事・学校を長期間休むか、辞めざるをえない場合があるから」…32.2%

●「どの治療法を選択すれば良いかわからず悩むことがあるから」…29.6%

●「治療を受けるのに適切な医療機関を見つけるのが大変な場合があるから」…27.6%

●「がんが治っても、後遺症が残る場合があるから」…26.0%

半数以上が「がんを抱えながら、仕事を続けることは難しい」

もし「がん」になったら……9割以上が「周囲の親しい人に話すことができる」と回答しています。一方で「がん」の治療や検査により、仕事に影響が及ぶことになったら、半数以上が「働き続けることは難しい」と考えてます。

その要因として体力や精神面といった個人的なものが4割強を占める一方で、人手不足など会社の状況や制度に起因するものも4割弱を占めています。

Q.あなたががんと診断されたら、家族や友人などだれか身近な人にがんのことを話せると思いますか。

●「話せると思う」*3…93.2%

●「話せると思わない」*4…6.2%

*3:「話せると思う」「どちらかといえば話せると思う」の合計

*4:「どちらかといえば話せると思わない」「話せると思わない」の合計

Q.あなたは、がんの治療や検査のために2週間に一度程度病院に通う必要がある場合、現在の日本の社会は、働き続けられる環境だと思いますか。

●「そう思う」*5…45.4%

●「そう思わない」*6…53.5%

*5:「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計

*6:「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の合計

Q.働き続けることを難しくさせている最も大きな理由は何だと思いますか。

●「がんの治療・検査と仕事の両立が体力的に困難だから」…28.4%

●「代わりに仕事をする人がいない、または、いても頼みにくいから」…22.3%

●「職場が休むことを許してくれるかどうかわからないから」…15.7%

●「がんの治療・検査と仕事の両立が精神的に困難だから」…14.7%

●「休むと職場での評価が下がるから」…4.4%

「がん」の罹患数をみていくと、男性の場合、50代でぐっと増え女性を逆転。70代前半でピークに達します。

サラリーマンの平均給与は月収で34.2万円、年収で554.9万円。50代前半では月収41万円、年収674.0万円と、会社人としてピークに達しようとしているときです(厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』より)。会社では組織の中心となって活躍している人も多いでしょう。立場的に「仕事に穴はあけられない」というのが本音。また慢性的な人手不足が叫ばれている昨今。特に日本企業の99%、働いている人の7割が中小企業勤務だといわれています。より人手不足が深刻で「とても休めない」という事情もあるのでしょう。家庭では第1子が大学生、教育費に住宅ローンの返済にと、支出もピークになるころ。そんなときに「がんになりました、給与が減ります」なんて考えられません。会社でも家庭でも、どうしたらいいのか……。

仕事と「がんの治療」の両立が難しいと考えられる現状。仕事への影響を最小限にするためにも、早期発見が重要です。しかし今回の世論調査では、半数近くが「2年以内にがん検診を受けていない」と回答しています。世界的にみても日本人の「がん検診」の受診率は低いといわれていますが、自身のためにも、大切な人たちのためにも、定期的な「がん検診」は必須です。

(※写真はイメージです/PIXTA)