ニュースを賑わせている「所得税4万円の減税」。嬉しい反面、「これでは何も変わらない」という声に溢れています。諦めの境地に達した日本人の現状についてみていきます。

将来を見据えて「資産運用が大事」でも…お金がないから何もできない

政府・与党が検討を急ぐ「税収増の還元策」。所得税と住民税の増収分3.5兆円を、1人あたり4万円を還元、住民税の非課税世帯には7万円を給付する方向で調整は進められています。

ーーえっ、月に4万円⁉ 嬉しいですね

そんな街の声。しかし“月”ではなく“年”だとわかると、

ーー年に4万円……嬉しいですけど、それじゃ何も変わらないですね。そもそも賃金が上がらないので、先行き、本当に不安です

メットライフ生命が全国47都道府県に在住の20代~70代の男女1万4,090人を対象に行った『全国47都道府県大調査(2023年版)』によると、給与アップを実感しているのは、わずか13%。また将来的に給与アップを期待しているのも2割以下という現状。どうやら日本人は「給与なんてあがらない」と達観してしまっているようです。

【昨今の給与や賃上げに対する意識】

■昇給の実感

「実感している」…13.6%

「実感していない」…86.4%

■現在の給与への満足度

「満足している…28.3%

「満足していない」…71.7%

■将来の給与

「下落する」…24.4%

「現在と変わらない」…56.0%

「上昇する」…19.6%

そんな現状に、将来への不安は増すばかり。「年金だけでは老後、生きていくのは難しいですよ」「夫婦で2,000万円は貯めておいてくださいね」そんなメッセージが届けられた「老後資金2,000万円不足問題」が話題になってから、すっかり「資産運用」という言葉が定着しましたが、思うように進められていない人はかなりいるようです。

同調査で資産運用の実施状況について聞いたところ、「資産運用している」は4割弱。一方で「資産運用したいけどできていない」も3割弱。その理由として注目なのが「運用するほどの収入や貯蓄がない」という人たち。

ーー将来を考えると資産運用しなければいけないのに、そもそもお金がない

はっきりいって、絶望でしかありません。

【資産運用の意向と実施状況】

■資産運用の実施、意向の状況

「現在、資産運用をしている」…37.1%

「資産運用意向はあるが実施していない」…26.8%

「意向なし」…36.1%

■投資・運用を行うのに必要と思う金額

…平均266万円

■意向はあるが資産運用を実施していない理由

「漠然とした不安・リスク」…29.0%

*なんとなく不安、始め方が分からない、知識がないの合計

「運用するほどの収入や貯蓄がない」…24.5%

「損やリスクを取りたくない」…13.1%

実質賃金17ヵ月連続マイナス…もう後がない日本人

厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』によると、日本人の平均給与は、月収で31.1万円、年収で496.5万円です。手取りだと独身で月23.6万円ほどになるので、年4万円の減税ということは手取りが月24万円になるイメージ。確かに、「これで何ができるのか」と聞かれたら「無いよりはマシ」と答えるほか言葉は見当たりません。

また厚生労働省『毎月勤労統計調査 令和5年8月分結果確報』によると、基本給や残業代などを合わせた1人あたりの現金給与総額は、平均で28万1,714円と去年8月と比べて0.8%増え、20ヵ月連続でプラス。しかし、実質賃金は前年比マイナス2.8%と17ヵ月連続のマイナスを記録中。すでに1年半もの間、物価高による生活苦に陥っている状況です。これでは資産運用のための“元金”を作るのも難しい、というのも頷けます。

公益財団法人生命保険文化センター『生活保障に関する調査(2022年)』によると、老後資金の使用開始年齢は平均66.8歳。ボリュームゾーンは65歳で34.2%です。ある意味、この年齢が「老後のスタート」となります。現在、公的年金の支給も原則65歳。つまり高齢者の3割強は年金をもらうのと同時に貯蓄の取り崩しも始まっているということです

老後のスタートまで、残された時間はあと1年という人もいれば、あと30年という人もいたりと、残された時間は人それぞれ。ただ「資産運用するお金がない」と泣き言をいっていられるほどの余裕すら、日本人にはありません。高齢化による財政の圧迫などを背景に、将来、年金が減額されることは既定路線。2040年代には現在の水準の8割になるといわれています。資産運用をさらに加速させていかなければ、「どう、生きていけばいいのか……」と路頭に迷うことが確実視されているのです。

とりあえず、これから浮くだろう「年4万円」で、資産運用を始めるしか解決法はなさそうです。

(※写真はイメージです/PIXTA)