リング上でヒリヒリとしたにらみ合いを見せた猪木とアリ。この両雄の対戦はいまだ色褪せない。(C)Getty Images

 格闘技界を大きく賑わせるメガマッチの開催が迫っている。現地10月28日サウジアラビアで、ボクシングWBC世界ヘビー級王者タイソンフューリー(英国)と総合格闘技団体『UFC』の前ヘビー級王者フランシス・ガヌー(カメルーン)が、ボクシングルールで対戦する。

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「Battle of the Baddest(人類最凶決定戦)」

 そう銘打たれるのも無理はない。WBC世界ヘビー級王者であり、元WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級の3団体も統一したボクシング界最強の戦士フューリーと、総合格闘技において「史上最強のヘビー級王者」と謳われた実績を持つ巨漢ファイターであるガヌー。そんな両雄による文字通りビッグマッチは、日本をはじめとする200以上の国と地域に向けたPPV配信が決定するなど、前代未聞の注目を集めている。

 注目の一方で巨額のファイトマネー目当てとする批判の声も小さくない。そんな異種格闘技戦の実現には、往年の名勝負を想起させる識者もいる。英紙『Daily Mail』のジェフパウエル記者は「フューリーとガヌーの試合への批判は今に始まったことではない。モハメド・アリが伝説のレスラーであるアントニオ猪木と対戦した試合も『恥ずべきものだ』と非難された」と銘打った記事を掲載。1976年に実現した歴史的な一戦を回想した。

 格闘史に刻まれた一戦だった。当時のWBA・WBC統一世界ヘビー級チャンピオンだった大スターであるアリと日本プロレス界のヒーローだった猪木のマッチアップは、「世紀の一戦」と謳われ、世界中に衛星生中継されるほどの注目度を集めた。

 しかし、双方がヒートアップした戦前の盛り上がりとは裏腹に、試合は単調な内容に終始。猪木が寝ながらアリの足を狙った闘いを見せるなど、大きな見せ場もなかったため、当時のメディアは「世紀の凡戦」「世界的な茶番劇」と揶揄した。

 のちにアリ側からレスリングの技やヘッドバットやチョップなど多くの禁止事項を設けられていたことが判明。試合、ひいては相手に深手を負わせた猪木に対する評価は改められた。今では「画期的な試合だった」と評されるほどである。

 そんな伝説的な攻防戦を引き合いに出したパウエル記者は「観客はリングにゴミを投げつけ、『金を返せ、金を返せ』と叫んだ。しかし、ありとあらゆるルールを設けてリスク管理を行ったアリの脚は100発以上のキックを受け、廃人のようになっていた。とくに両ふくらはぎは生々しく腫れ上がっていた」と、戦いの残した“爪痕”を強調。そして、次のように綴った。

「ザ・グレイテスト(アリの愛称)とイノキは意外にも固い友情で結ばれ、彼らは世界中から愛された。後にアリは『あの時は金がなかったから』と試合を受けた理由がファイトマネーにあったことを認めていた。フューリーとガヌーには、当時よりも巨額のマネーが絡んでいる。この猜疑心に満ちた世界で、彼らはどんなレガシーを残してくれるだろうか」

 はたして、フューリーとガヌーの一戦は、アリと猪木のように後世に語られる勝負となるだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

批判集まるフューリーvsガヌーの“人類最凶決定戦”に英記者がアリvs猪木を回想「観客は金を返せと叫んだ」