新庄監督は見せ場を作ったが、抽選の結果は…(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 10月26日に行われたドラフト会議で、最大の見せ場は1位競合で史上最多7度クジ引きとなった「抽選バトル」。即戦力候補が多いといわれる「佐々木朗希世代」の大学生投手に指名が集中し、4年ぶり有観客となったドラフト会場も大いに盛り上がった。 支配下72人、育成50人の計122人が指名を受けた23年ドラフトのドラマ、トピックをまとめてみた。

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◆「公表」結果は2勝2敗
 事前に1位指名を公表したのは4球団と、昨年の9球団から大幅に減少した。

 西武とソフトバンクが公表した東洋大武内夏暉投手にはソフトバンクも参戦。今ドラフト最多タイ3球団による抽選は、西武・松井稼頭央監督が引き当てた。

 広島が公表した青学大の常廣羽也斗投手は楽天との競合の末、新井貴浩監督が当たりクジを引き「ヨシッ」とドヤ声で喜びを爆発させた。X(旧ツイッター)では「新井さん」がトレンドワードになった。

 中日が公表したENEOSの度会(わたらい)隆輝外野手は、DeNAロッテと3球団競合の末、DeNA三浦大輔監督が引き当てた。

 昨年は事前に1位を公表した9球団がすべて公表した選手との交渉権を獲得したが、今年の「公表」結果は2勝2敗だった。

◆新監督「初仕事」明暗
 オフに監督交代した3球団の新監督が抽選でクジ引きに臨んだ。

 巨人・阿部慎之助監督は、中大の後輩にあたる西舘勇陽投手を1位指名し、競合した日本ハム新庄監督との一騎打ちを制した。

 ソフトバンク小久保裕紀監督は国学院大・武内を外し、外れ1位で大阪桐蔭の前田悠伍投手を引き当てた。いずれも3球団競合で、抽選結果は1勝1敗。

 対照的に抽選で2連敗したのが楽天・今江敏晃監督。青学大・常廣、大阪桐蔭・前田悠伍投手を外し、外れ外れ1位で桐蔭横浜大・古謝樹投手を単独指名。現役時代にロッテ日本シリーズに2度出場し、いずれもMVPに輝いた大舞台に強い男も、指導者として臨んだドラフトはクジ運なく、ほろ苦デビューとなった。

◆新庄劇場「0.02ミリ」の誤算
 日本ハム新庄監督が史上初?の抽選クジを開封しないパフォーマンスを見せた。中大・西舘を1位で入札し、巨人と競合。先に引いたクジを左胸に押し当てたまま祈るように目を閉じた。結果は外れに。

「(巨人・阿部監督が)喜ばなかったら僕の勝利と思って、6メートルくらい飛ぶ準備はしていた。(横を見たら)めちゃくちゃ隣で喜んでいたので、膝から崩れ落ちそうになりました。(封筒に)ハンコの分の厚みがあったのよ。0.02ミリ。めちゃくちゃ自信あったんですけど。なんで~」

 よほどショックすぎたのか、2度目以降の抽選は登壇せず。小林球団社長、稲葉篤紀GMにクジ引きを任せたが、負けても見せ場はきっちり作る新庄劇場は健在だった。

◆強運ロッテまさかのクジ3連敗
 抽選に強いロッテが3連敗を喫した。ENEOS度会隆輝、亜大・草加勝、東洋大・細野晴希を外し、「外れ外れ外れ1位」で明大・上田希由翔内野手の指名となった。過去に佐々木朗希を引き当てるなどロッテは抽選で無類の強さを発揮し、クジ引きの勝率6割3分2厘(希望枠が廃止された2007年以降)は12球団トップだったが、今回は運がなかった。

 同一年の抽選3連敗は過去に3度あり、2010年オリックス岡田彰布監督、13年日本ハム栗山英樹監督、17年ソフトバンク工藤公康監督が、いずれも抽選で外していた。今回のロッテは1度目が高坂球団社長、2度目と3度目は吉井監督がクジ引きに臨んで流れを変えようとしたが「よく外れました」と苦笑いするしかなかった。

◆岡田監督の思惑通り
 ドラフト会議の約2週間前に阪神・岡田監督が「面白ないやんか」と1位非公表を12球団に提言する形で発信した影響もあったのか、今回の公表は4球団のみ。公表が少ないほど、ファンにとっては当日まで指名を予想する楽しみが増える。

 メディアによる1位予想も例年以上に混沌とし、各球団の競合が相次ぐなか、阪神は青学大・下村海翔投手の一本釣りにまんまと成功。オリックス時代も含めて1勝8敗と苦手にしていた競合での抽選を避け、日米大学野球MVP投手を単独指名できた。情報戦を制し、ファンサービスも成功させた形の岡田監督は「(ドラフトの点数)100点でええよ」としてやったり。

◆同一チーム1位2人
 青学大のWエース、常廣が広島に、下村が阪神に、それぞれ1位指名を受けた。同一チームから複数の1位選手は、21年市和歌山小園健太投手(DeNA)、松川虎生捕手(ロッテ)以来2年ぶり。2000年以降では、10年に早大から大石達也(西武)、斎藤佑樹日本ハム)、福井優也(広島)の3投手が1位指名された。18年は東洋大上茶谷大河DeNA)、甲斐野央ソフトバンク)の2投手が1位だった。

◆巨人が高校生指名せず
 各球団が特徴ある指名を行ったなかでも極端だったのは巨人。支配下で指名した5選手の内訳が大学生1、社会人4。高校生指名なしは史上初だった。2年連続Bクラスで、20年以降優勝から遠ざかっており、将来の育成よりも、即戦力を確保してV奪回を狙うチームの方針を明確に示す形となった。

独立リーグ旋風
 独立リーグ所属選手の上位指名が相次いだ。四国アイランドリーグ・徳島の159キロ右腕、椎葉剛は阪神から2位指名を受けた。同じく最速159キロの日本海リーグ・富山の大谷輝龍はロッテ2位。独立リーグからの2位指名は過去最高タイ。2位で2選手が指名されるのは初めてで、支配下・育成合わせて史上最多となる計23人が指名された。大学・社会人以外に、プロを目指す選択の幅を広げそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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