世界最高とうたわれるプレミアリーグには、マンチェスター・シティの圧倒的な支配力やアーセナルの緻密なサッカーなど“美しい部分”も多々あるが、綺麗ごとだけでは生き残れない。相手を削ったり、カードを覚悟してファウルを犯したりするシーンだってある。

 果たして、プレミアリーグで最も汚いチームはどこなのか? 英国ブックメーカーを紹介するサイトが過去5年間のカード枚数を集計しているので紹介しよう。

[写真]=Getty Images

◆■10~6位

 今回のランキングはイエローカード1枚を1ポイント、レッドカード1枚を2ポイントとし、過去5年間の合計ポイントを試合数で割ったときに出る1試合の「規律ポイント」を比較。それが最も高いチームがプレミアで最も汚いクラブということになる。

 トップ10まで発表された今回のランキングだが、リーグ3連覇中のマンチェスター・シティはランク外。ピンチを招く回数が少ないため、イエローを貰うシーンも圧倒的に少なく、2シーズン連続でリーグ最少のイエロー数をキープした。そのため今回のランキングではトップ10に入らず、“クリーンなチーム”という評価を得た。

 10番目に汚い10位はウェストハム。昨季はマンチェスター・シティと並びリーグ最少のイエロー枚数だったため、比較的にクリーンという結果になった。9位には同じロンドンチェルシーが入り、8位には日本代表MF三笘薫を擁するブライトンがランクイン。

 7位はクリスタル・パレス、そして6位にはニューカッスルが入った。18年前の2005年、プレミアリーグアストン・ヴィラ戦でチームメイト同士(キーロン・ダイアーとリー・ボウヤー)が殴り合いをして二人とも揃って退場になったニューカッスルだが、それは過去の話。最近5年間のデータではトップ5入りを免れた。

◆■5位:アーセナル 平均規律ポイント1.90 (イエロー=342枚、レッド=17枚)

 5番目に汚いチームはアーセナルだ。ミケル・アルテタ監督の下で20年ぶりの栄冠を目指すチームは、過去の規律問題が響いている。2019-20にはリーグ最多5枚、2020-21シーズンにも5枚、2021-22シーズンには4枚と、とにかくレッドカードが多かった。DFダヴィド・ルイスやMFグラニト・ジャカといった選手が複数回レッドカードを貰ったこともあり、レッドカード枚数は過去5年間でリーグ最多タイの17枚となった。

 だがアーセナルは、アルテタ監督の下で規律問題を改善しつつあり、昨季はプレミアで一枚もレッドカードを貰わなかった。1992年発足のプレミアリーグにおいて、アーセナルが一人も退場者を出さなかったのは31シーズン目にして初めてのことだった。さらに昨季は累積警告を含めて一人も出場停止者を出さなかった! 今季は日本代表DF冨安健洋が、第2節のクリスタルパレス戦で遅延行為による不運なイエローを貰い、その後のファウルで退場になってしまった。アーセナルにとって2シーズンぶりの退場者だった。

◆■4位:ウルヴァーハンプトン 平均規律ポイント1.98(イエロー=363枚、レッド=15枚)

 4位はウルヴズ。“オオカミ”の血がたぎるのか、昨季はリーグ最多のカード数を貰ってしまった。イエローカードはリーズやノッティンガム・フォレストと並び最多の84枚。さらにレッドカードリーグ最多の6枚。中でも酷かったのはポルトガル代表の2選手だ。MFルベン・ネヴェス(現在アル・ヒラル)はイエロー12枚、DFネルソン・セメドはイエロー11枚に加えてレッドカードも一枚貰った。ウルヴズは今季もここまでリーグ最多のイエローカードを貰っている…。

◆■3位:トッテナム 平均規律ポイント2.02(イエロー=373枚、レッド=13枚)

 今季はアンジェ・ポステコグルー新監督の下で快進撃を見せて首位に立っているスパーズだが、過去5年のデータでは3番目に汚いチームとなっている。昨季は、肉弾戦を得意とするアルゼンチン代表DFクリスティアン・ロメロがカード数を稼いでしまった。8枚のイエローを貰ったほか、2月のマンチェスター・シティ戦ではイエロー2枚で退場になった。

 今季はチームの心臓部であるマリ代表MFイヴ・ビスマが気を付けないといけない。攻守両面でチームの小気味よいサッカーを支えるミッドフィルダーは、今月7日のルートン・タウン戦で不用意なシミュレーションをして2枚目のイエローカードを貰って退場に。それ以外にも今季ここまですでにイエロー4枚を貰っており、次の1枚で累積警告による出場停止となってしまうのだ。本気でリーグ制覇を目指すのなら規律問題は気を付けないといけない。

◆■2位:エヴァートン 平均規律ポイント2.03(イエロー367枚、レッド17枚)

 2位はエヴァートンだ。彼らはとにかくレッドカードが多い。過去5年間、アーセナルと並び最多17枚のレッドカード。それだけではなく、1992年に発足されたプレミアリーグアーセナルを抑えて歴代最多となるレッドカードを貰っている…。

◆■1位:マンチェスター・ユナイテッド 平均規律ポイント2.04(イエロー386枚、レッド9枚)

 今回のランキングで“最も汚いチーム”という不名誉なレッテルを貼られることになったのはマンチェスター・ユナイテッドだ。彼らは、レッドカードの枚数こそトップ10の中で2番目に少ない9枚だったが、イエローカードの枚数が「386枚」と他を圧倒。2番目にイエローが多いトッテナムを13枚も上回っている。

 中でも不必要なイエローを貰っているのが今季から腕章を巻くポルトガル代表MFブルーノ・フェルナンデスだ。プレミアでは通算133試合に出場して46ゴール・35アシストと素晴らしい数字を残しながら、イエローも27枚貰っている。5試合に1枚のペースだ。これが守備的MFやDFならば仕方ない部分もあるが、彼はチームの攻撃のタクトを振るうプレイメーカーである。ファウル以外にも、審判への抗議といった勿体ないイエローが多い。今年3月のリヴァプール戦では副審の背中を押して物議をかもしており、審判に目を付けられている可能性もある。

 もしかすると、エリック・テン・ハフ監督が彼をキャプテンに任命した理由の1つが規律問題の改善かもしれない。ブルーノ・フェルナンデスは昨季、審判への異議で2枚のイエローを貰っており、できれば不必要なカードは減らしたい。そこで責任感を持たせると共に、審判に質問する正当な権利があるキャプテンに据えることでイエローを貰わずに済むと考えたのかもしれない。しかし、8月のトッテナム戦では味方に出されたイエローについて主審に問いただした瞬間、彼にもイエローが出されてしまった。そう考えると、ブルーノ・フェルナンデスは本当に審判団から目を付けられているのかもしれない…。

 ちなみに、欧州5大リーグで見るとマンチェスター・ユナイテッドの“汚さ”なんて可愛いものだ。過去5年間で最悪の規律問題を抱えるのはスペインのヘタフェだという。彼らは「イエロー652枚、レッド39枚」を貰い、平均規律ポイントは驚異の「3.66」だという!

(記事/Footmedia)

プレミアリーグの各クラブのカード枚数を比較した [写真]=Getty Images