海上自衛隊があわじ型掃海艦を9隻取得する計画ですが、新造中のもがみ型護衛艦も掃海機能が付与されていたはず。なぜ、もがみ型とあわじ型の平行整備になったのでしょうか。

FRP船体になって一気に伸びた艦齢

ジャパンマリンユナイテッド(JMU)の横浜事業所鶴見工場で2023年10月24日、掃海艦「のうみ」の命名・進水式が開催されました。同艦はあわじ型掃海艦の4番艦で、2020年度予算で建造が決まり、2021年にJMUへ発注、2025年3月に就役する予定です。

あわじ型は、木造のやえやま型掃海艦3隻を代替するために計画されました。基準排水量は690トン。最大の特徴は船体材料にFRP(繊維強化プラスチック)複合材料を採用している点です。FRP 製掃海艦は腐食に強いため、耐用年数が木造掃海艦の20年程度から、同艦では約30年まで伸びています。また、耐久性の向上に加えて、船体の軽量化とそれに伴う燃費改善も実現しています。

海上自衛隊は、機雷の探知や掃海について、浅深度はもがみ型など新型護衛艦(FFM)が、深深度は掃海艦が担うことを目指しており、あわじ型は2030年までに9隻が整備される計画です。

そのため、この計画が出る前に建造された1番艦「あわじ」から3番艦「えたじま」までは2017年から2021年にかけて順次就役したのに対し、4番艦「のうみ」は建造の間隔が約4年も開いています。

JMU鶴見では、3番艦の竣工から4番艦の建造決定まで手持ち工事量が一気に減少する事態も起きたとか。というのも、同工場にて建造する船種で一番大きいのは海自向けの掃海艦であるため、船台を空けておかねばならなかったからです。

一方、小型で木造の従来型掃海艇は、数を減らしています。防衛省は2018年末に策定した「防衛計画の大綱(防衛大綱)」の中で、新たに新型護衛艦(FFM)と掃海艦艇で構成する2個群による水上艦艇部隊を新設することを明記。これに伴い、掃海艦艇は2028年段階で、現行の約20隻から12隻にする方針です。木造のすがしま型掃海艇に関しては、任務の一部をもがみ型FFMで代替できるため、近い内に姿を消すことになりそうです。

もがみ型護衛艦の掃海機能はどうなった?

ただ、もがみ型FFMは専用の掃海艦艇と比べて船体が大きく、小回りが利かないため、機雷が設置されているリスクが高いエリアで作業するには、掃海艦の方が向いています。加えて、もがみ型は船体が鋼製であるため、磁気に反応する機雷への対策が、木製やFRP製の専用に設計された掃海艦艇よりも劣っているという弱点も抱えています。

こういった点は、USV(水上無人機)やUUV(無人水中航走体)などで構成される無人機雷排除システムを持っていても拭い切れない、もがみ型のウィークポイントといえるでしょう。ゆえに、掃海艦という艦種は今後も残り続けることが決まっています。

筆者(深水千翔:海事ライター)はかねてより、アメリカ海軍原子力空母が配備されている横須賀基地周辺や東京湾内の機雷監視に、海自の掃海部隊が必要との認識を示しているというハナシを聞いています。

こうした背景もあって、浅深度の機雷掃海はFFM、深深度の機雷掃海は掃海艦という形で役割分担がなされるようです。実際、2022年末に策定された「防衛力整備計画」では、機雷戦能力を強化するため、掃海用無人アセットを管制する掃海艦艇を増勢する方針が示されています。

これに伴い、あわじ型は2020年以降、2年に1隻ずつ建造されていくことが決まっており、2022年度予算では5番艦の建造費135億円を計上。2024年度の概算要求には6番艦の建造費用262億円が盛り込まれています。

今回、進水した掃海艦「のうみ」は機雷戦装備として使い捨ての自走式機雷処分用弾薬(EMD)や新型可変深度式探知ソナー(VDS)システムOQQ-10、機雷捜索用水中無人機(UUV)OZZ-4などを搭載。これらに加えて「えたじま」でも採用された情報収集ROV(隔操作型無人潜水機)OXX-2も装備すると見られます。

2023年10月24日に進水した掃海艦「のうみ」(深水千翔撮影)。