「若手にはまず好きにやらせて、外したときにフォローだけする。最初は大して面白くないんだけど、そのうち面白くなるんだよ(笑)」と語るヒロミ氏
「若手にはまず好きにやらせて、外したときにフォローだけする。最初は大して面白くないんだけど、そのうち面白くなるんだよ(笑)」と語るヒロミ氏

21歳でデビューし、約20年芸能界の最前線を走り、自主的な活動休止の後、2014年頃から本格復帰したヒロミ(58歳)。次世代タレントのブレイクを何度も間近で見てきた彼の次の挑戦は地元・八王子市を盛り上げること!?

【写真】次の挑戦を語るヒロミ氏

■世渡り上手で屈託ないタイプなんでしょうね

――若いタレントさんと接する中で、世代ギャップを感じることはないですか?

ヒロミ 僕は意外と感じないんですよ。フワ(ちゃん)のタメ語はああいう芸風だし、俺も同じようなもんだったからさ。タモリさんや(ビートたけしさん、(明石家)さんまさんとかが俺の芸風を受け入れてくれたのに、今度フワに「ヒロミが」って言われて「おい、おまえさ」って怒るのもどうかと思うしね(笑)。

彼女は芸としてやってるし、言われてる人もちゃんとわかって対応してて、それがハマってるじゃん。そこが彼女のスゴさだとも思うしね。ただ呼び捨てにしてりゃいいってもんでもないですから。

――会社などで若手とのコミュニケーションに悩んでいる人も多いと思います。どうすればヒロミさんのようにイマドキの若者と仲良くなれるんでしょう?

ヒロミ 生きてきた時代も違うワケだから、まずは好きにやらせてみればいいと思いますけどね。『ガヤ』(日本テレビ系列の『ウチのガヤがすみません!』)って番組からフワも出てきたけど、僕とか後藤(輝基)は「好きにやんなさい」って見守って、外したときにフォローするぐらいの役目しかないんだよね。

あの番組は若手のコがいっぱいいるから「僕と後藤でどうにかするから、まずは君たちが面白いと思うものをやってみたらいいじゃん」ってやらせてみる。ほとんどは大して面白くないんだけど(笑)、面白がって野放しにしとくと、そのうちちゃんと面白くなるんだよ。

――フジテレビがタレントの争奪戦でバチバチだった90年代から、ヒロミさんは特別な存在だったと聞いたことがあります。

ヒロミ 昔はフジテレビの制作部に"班"がいっぱいあって、フジテレビ内でも、こっちの班の番組に出てたらあっちの班の仕事はできないっていう雰囲気があったんだけど、そんな中で僕はとんねるずの番組から『笑っていいとも!』、ものまね番組まで、いろいろ出たりしてフジテレビの中を普通に渡り歩いてた。

けど、「なんでそうなれたのか」はいまだにわからないんですよ。そういうタレントってあんまりいなくて、俺以外だと勝俣(州和[くにかず])もそうか。なぜかね(笑)。まあ、世渡り上手というか、屈託なくいろんなところに入っていけるタイプなんでしょうね。

ヒロミ

――同世代のとんねるず、ダウンタウンはお互いにほぼ共演がないですよね。どちらとも交流があるヒロミさんとしては、発言に気を使わないですか?

ヒロミ 全然そんなことないんだよね。よくダウンタウンの前でとんねるずの話をすると、松ちゃん(松本人志)が「とんねるずの話はNGだから......」って言うけど、これはもうお約束のセットなのよ(笑)。それを見た視聴者の中には本当にモメてるって思う人もいるかもしれないけど、本チャンでモメてたらそんなことすら言わないって(笑)。

でもまあ、若い頃はそんなことも言わなかったかもね。当時は俺らも含めて皆ピリピリしてたからしょうがないよ。やっぱ年齢が大きい。50歳過ぎたあたりから皆スゴくやわらかくなったもん。俺が思うに、お互い本当になんとも思ってないよ(笑)。

■今も生きる父の言葉。浜ちゃんとの意外な縁

――多趣味でも知られていますが、いろんなことに挑戦するメリットはなんでしょうか?

ヒロミ 人脈が広がるのもあるけど、いろんなことに興味を持ってやってみることで「楽しい」「大変」「ツラい」って感じることが面白いかな。人って経験だから。いいことも悪いことも。

今回のフェス(「八王子魂Festival&Carnival23」)もそうで「成功しようが失敗しようが、一生に一度くらいフェスを主催するか」って思ってさ。失敗してもたかが知れてんだよね。やってみて「盛り上がったな」でもいいし、「大失敗しちゃった」でもそれはそれだし。それで殺されるワケじゃないんだからさ(笑)。

――確かに(笑)。「なんでも経験」という考え方は、30年以上前にバラエティ番組で体を張って大ケガされたことも影響していますか?

ヒロミ あれも本当に経験じゃん? 番組でケガしたからってテレビ局に文句なんてなかったし、「そんなこともあるわな」ぐらいの感じだったね。俺の実家が大工でさ、おやじが「ケガと弁当は自分持ちだぞ」って職人によく言ってたのよ。

それ見て育ってるから、ロケでケガしても「どうしてくれんだ」なんて気持ちは起きなかったの。フジテレビの人が謝りに来たときもおやじは「自分持ちです」、おふくろは「全然気にしなくていい」って普通に言ってたからね(苦笑)。

ヒロミ

――根底に父親の教えがあると。確か浜田雅功まさとし)さんのお父さまとご友人でしたよね。

ヒロミ 親父の同級生。もともと鹿児島で、その後兵庫と東京に分かれて、どっちの息子も芸能界に入ったっていうね。ある日、浜ちゃんに「聞いた?」って言ったら「聞いた聞いた。そんなことあんだな」って若手の頃に驚いたんだけど、今度はうちの息子(小園凌央[りょお])が番組で浜ちゃんに会ってその話をしてたりね(笑)。不思議な縁だし、面白いなと思うよ。

■番組を通じて築かれたお兄ちゃんのイメージ

――ヒロミさんを見ていると、人とのつながりをすごく大事にされていると感じます。

ヒロミ そうなんだけど、実際本当によく一緒にいるのは憲(のり)ちゃん(木梨憲武)と藤井(フミヤ)さんぐらい。ただ、ほかの人とも仕事で絡んでるから、そう見えるんだろうね。僕は本当に運が良くて、そういう番組に恵まれたのよ。

芸能界に入った頃から、スターになる前のアイドルや若手芸人たちとやる番組が多かったの。だから、イメージが先行して"お兄ちゃん"みたいになってるんだろうね。そもそもの気質もあるかもしれないけど、そういう立場を任されたことも大きい気がするよね。

――番組を通じてヒロミさんのイメージが築かれていったと。

ヒロミ 『8時だJ』(テレビ朝日)なんて嵐とか山下(智久)とかがまだ子供のときだもん。それが後にスターになるワケじゃん。『ボキャブラ天国』(フジテレビ)も海砂利水魚(現・くりぃむしちゅー)とかネプチューン爆笑問題とかが大きくなっていって。それで今は『ガヤ』のチョコレートプラネットとか鬼越トマホークとかが忙しくなってね。

そうすると、俺は助かるんだよ~! あいつらの番組に呼ばれたら、ちょっと偉そうにできるじゃん(笑)。多少フォローしてあげたりなんかしたら「助かりました!」みたいなさ(笑)。

――共演した若手はみんなヒロミさんに感謝してますよね。

ヒロミ それは俺もそうだから。たまたまタイミングで一緒になっただけで、こっちも本当に助かってる。芸能界ってチーム戦だからさ。芸能界っていうデカいエンタメの中の大チーム戦。単独でやってるヤツなんてひとりもいないと思う。そう感じるようになったのも、やっぱ大人になってからだよね。

ヒロミ

――八王子出身のタレントが集う「八王子会」も、そうした流れの中で結成されたんですか?

ヒロミ そう。それも50歳過ぎたあたり。50歳っていい意味でとがりがなくなる絶妙なラインなんだと思う。

あと50代って会社員でいうと定年が近づいて、なんとなく終わりが見えてくるし、「できるのにやっちゃいけない」「次世代に引き継がなきゃ」ってジレンマを抱える時期でもあると思うんだよね。そういう人たちにエールを送りたくて『24時間テレビ』(日本テレビ系)のチャリティーマラソンも走ったの。

――松本人志さんは65歳で芸能界引退をほのめかしていますが、ヒロミさんは活動し続ける?

ヒロミ 俺もタレントとして必要じゃなくなったらいつでもって感じだし、自分の中でもそんなに長く芸能界にいるのもどうかなって思ってるね。10個先輩のトコさん(所ジョージ)を見てて「元気だな。じゃ70歳ぐらいまで動けるな」とは思うけど、今のところあそこまでやろうとは考えてない。

「今やってることとは別に、何か興味が湧いたらやろう」っていうのは何年も前から思ってて、今回の「八王子魂」もそれ。次は60歳になってどう思うのか......。まあ先のことはそのときに考えようって感じだね。

「子供の頃に感じた活気みたいなのが、今の八王子に足りないって思ったんです」
「子供の頃に感じた活気みたいなのが、今の八王子に足りないって思ったんです」

――今年11月、その「八王子魂」が開催されます。

ヒロミ 本当にここ何年かで「八王子を盛り上げないと」って思い始めたんですよ。街は大きいし人もいっぱいいるけど、自分が子供の頃に感じた活気みたいなものが足りないなと思って。

何十年もいるのに「街から出て培ったものを地元に全然返してない」と気づいたのもあったしね。そこから、八王子出身のアーティストやタレントを中心とするエンターテインメントの力で街を盛り上げられないかなと「八王子魂」を企画したの。

動ける範囲で俺も直接声をかけるんだけど、キャスティングって大変でさ(苦笑)。特に「出てくれるんだ!?」って驚いたのは湘南乃風だよ。自分たちの活動も忙しいだろうからフワッと「やるから出てね」ぐらいしか言ってなかったの。

実際、最初はスケジュール的に難しかったのに、なんとか調整してくれたみたい。出演者の方々には感謝しかないです。PUFFYなんか本当にうれしいもん。俺、前から好きで『パパパパパフィー』(テレビ朝日)とか見てたしさ(笑)。

僕と同世代とか少し下の人ならいい感じに盛り上がれるフェスだと思いますよ。というか、たぶん当日は俺が一番楽しんでるね。

●ヒロミ(Hiromi
1965年生まれ、東京都八王子市出身。86年にミスターちん、デビット伊東と共に「B21 SPECIAL」を結成し、若者を中心に大人気に。93年に歌手・タレントの松本伊代と結婚。10年ほどの活動休止を経て復帰し、今年8月には『24時間テレビ』(日本テレビ系)で102.3㎞を走破した

■豪華メンバー集結! 11月11、12日に開催!
「八王子魂 Festival&Carnival 2023」@エスフォルタアリーナ八王子
八王子にゆかりのあるアーティストはもちろん、タレントも出演し盛り上げる!

取材・文/鈴木 旭 撮影/鈴木大喜

「若手にはまず好きにやらせて、外したときにフォローだけする。最初は大して面白くないんだけど、そのうち面白くなるんだよ(笑)」と語るヒロミ氏