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ミドシップのハイブリッドで四輪駆動

フロントへV8エンジンを搭載し、リアタイヤを駆動してきたシボレー・コルベットには、第8世代のC8で大きな変革が訪れた。歴代初となるミドシップへ生まれ変わっただけでなく、このE-レイ(E-Ray)ではハイブリッド四輪駆動にもなっている。

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ただし、フェラーリSF90 ストラダーレやランボルギーニ・レヴエルトのように、プラグインハイブリッドではない。駆動用モーターが、フロントに1基載るだけだ。

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シボレー・コルベット E-レイ(E-Ray北米仕様

リアアクスルを駆動するのは、通常のコルベットスティングレイと同じく、プッシュロッド式の6.2L V型8気筒・自然吸気エンジン。LT2と呼ばれるスモーブロックで、デュアルクラッチ8速ATが組み合わされる。

フロントアクスルを担当するのは、162psと17.2kg-mを発揮する交流モーター。駆動用バッテリーは、シート間の大きなセンタートンネル内に仕込まれている。容量は1.9kWhと小さい。

最新のハイブリッドスーパーカーと比べると、シンプルなシステムといえる。だが、かなり効率的な内容でもある。車重は通常のスティングレイから110kg増えたが、近年の電動化事例としては軽く抑えられた方だろう。

スタイリング上での差別化として、トップグレードのコルベット Z06と同じワイドボディが与えられている。全幅が90mm広がり、345/25 R21という極太のリアタイヤをホイールアーチに収めている。

タイヤは、ミシュランのオールシーズン・パターンが標準。 試乗車には、オプションのパイロットスポーツ4Sが組まれていた。

パッケージング上の妥協はほぼナシ

インテリアは、基本的に同じ。ドライバーの右膝付近に、チャージ+モードを選ぶ小さなボタンが追加されている程度。これを機能させると、駆動用バッテリーが積極的に充電されるようになる。

インフォテインメント用モニターには、駆動用バッテリーの充電量と、前後アクスルのパワー展開がわかる専用グラフィックを表示できる。少し高めの着座位置や、センターコンソール上に並ぶ沢山のボタンといった特徴は変わらない。

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シボレー・コルベット E-レイ(E-Ray北米仕様

8代目コルベットは当初から電動化が想定されており、パッケージング上の妥協は殆どない。エンジン後方の荷室容量が、1.8L小さくなっただけ。フロントには、手荷物を積める浅いフランクが残されている。

ドライブモードには、V8エンジンを始動しない「ステルス・モード」が追加されているが、利用できる場面は限定的。イグニッションをオンにする前に選ぶ必要があり、72km/h以下までへ制限されている。

実際に走れる距離も8kmと短い。早朝や深夜に、ご近所へ迷惑をかけない機能として有効だろう。

ドライブモードには、ほかにツアー、スポーツ、トラック、ウェザーに加えて、コルベットスティングレイと同じく、ダイナミック・モードも備わる。個々の設定を独自に調整して登録できる、マイ・モードとZモードも用意されている。

歴代で最も加速が鋭いコルベット

普通に運転している限り、コルベット E-レイを走らせるのは、基本的にV8エンジン。意欲的な加速を求めると、フロントの駆動用モーターが瞬間的にトルクを加算する。同時に、スピーカーから合成音が再生され、アシストが加わったことを教えてくれる。

フルスロットルを与えると、V8エンジンの唸りが車内へ充満し、痛快なほど速い。ローンチコントロールでの0-100km/h加速は、2.5秒とうたわれる。これは、歴代で最も加速が鋭いコルベットであることを意味する。

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シボレー・コルベット E-レイ(E-Ray北米仕様

圧倒されるダッシュ力や、タイトコーナーからの鋭い立ち上がりで、強化されたトラクションを実感する。カーブが連続する狭い区間では、2025mmある全幅を意識するものの、コルベットスティングレイよりタイトに感じられた。

ブレーキは、カーボンセラミック・ディスクが標準で装備される。相当ハードに速度を落としても、熱ダレする様子はまったくなかった。試乗したカリフォルニアサンダーヒル・レースウェイでも、遺憾なく能力を発揮してくれた。

最高速度は289km/hがうたわれるが、241km/hを超えると駆動用モーターはアシストを止めてしまう。それ以降は、ハイブリッド・システムは重りになるともいえる。

乗り心地は、穏やかなツアー・モードでは充分しなやか。それでも、根底には一定の硬さが残る。

Z06以上に限界領域はフレンドリー

コルベット E-レイの能力を完全に引き出すには、サーキットを走らせるしかない。一般道の速度域では、ハイレシオなステアリングのフィードバックが不足気味。だが、横方向の負荷が高まると、接地感が見違えて良くなるようだった。

リアタイヤのグリップ力が抜けても、フロントタイヤがボディを引っ張ってくれるため、コルベット Z06以上に限界領域はフレンドリー。ミドシップの高性能モデルとしては、制御不能な状態へ陥りにくいと思う。

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シボレー・コルベット E-レイ(E-Ray北米仕様

北米市場向けのカタログを確認すると、コルベット E-レイは、冬の気候が厳しい地域へ対応する四輪駆動スポーツカーだとうたわれている。しかし、フロントの駆動用モーターが新たな次元の動的能力をもたらしたことは明らかだ。

C8世代のコルベットは、欧州市場への導入も検討されているという。恐らく、このE-レイが導入される可能性が高い。

シボレー・コルベット E-レイ(E-Ray/北米仕様)のスペック

北米価格:10万6595ドル(約1578万円)
全長:4699mm
全幅:2025mm
全高:1235mm
最高速度:289km/h
0-100km/h加速:2.5秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1765kg
パワートレインV型8気筒6162cc自然吸気+AC電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:1.9kWh
最高出力:502ps/6450rpm+162ps
最大トルク:64.8kg-m/5150rpm+17.2kg-m
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック+1速リダクション(四輪駆動


ミドシップのHVで四輪駆動 シボレー・コルベット E-レイへ試乗 歴代最速の0-100km/h 2.5秒