国会議事堂

与野党の激しい対立となった衆議院と参議院の補欠選挙は、10月22日に投票が行われたが、自民党の1勝1敗であった。この結果は、岸田首相の解散戦略にも影響を与えそうだ。
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■低投票率

衆議院長崎4区では、自民党の金子容三候補が、立憲民主党の末次精一候補に競り勝った。参議院徳島・高知の補選は、野党4党の支援を受けた広田一候補が、自公の支援する西内健候補に圧勝した。

注目したいのは投票率で、衆院長崎4区は42.19% 、参院徳島・高知選挙区は32.16%で、いずれも過去最低であった。とくに、後者の低さが際立っている。高知では40.75%であったが、徳島では23.92%であり、この徳島での低さが選挙区全体の数字を下げている。

徳島、高知県の投票率

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■一票の格差

それでは、参議院の合区とはどういう制度なのであろうか。これは「一票の格差」を解消するために採られた措置である。憲法14条では「法の下の平等」が定められている。選挙における一票の重みが大きく違うのは憲法違反である。

ところが、2013年に行われた参議院選挙では一票の格差が最大4.77倍に達し、翌年に最高裁は「違憲状態」という判決を下した。そこで、この状態を是正するために、鳥取と島根、徳島と高知を2県にまたがる合区としたのである。2015年に改正が成立し、2016年の参院選から実施されることになった。

定数は各県2人だったのが、合区選挙区の定数が2人となった。参議院は3年ごとに半数が改選となるので、1回の選挙で合区から1人のみが当選することになる。

この改正と同時に、宮城、新潟、長野の各県で定数を4から2に減らし、北海道、東京、愛知、兵庫、福岡では定数を2増やすことにした。こうして参議院の定数は10増10減となり、一票の格差は最大で3倍以内(2.97倍)に抑えられた。

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■合区の問題点

今回の四国の補選では、与野党の候補とも高知県を地元としており、徳島県とはゆかりがない。そのため、徳島県民は感心が薄く、20%台の投票率にとどまったのである。

このように、合区導入以来、投票率が下がっている。県によって課題も文化も県民性も異なっており、2県で1人の代表というのは合理的ではない。高知県出身の者に徳島県のことが分かるのかという疑問が呈されるのである。投票率が下がるのは当然である。候補者にとっても2県で選挙運動を行うのは厳しく、高知県徳島県の利害が対立するときには、どのような政策を打ち出すのかという問題も起こる。

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■特定枠

2018年の公職選挙法の改正で、参議院の比例代表に「特定枠」が導入された。参院の比例代表制度は、各党の名簿上で個人名票の多い候補者の順に当選する。ところが、例外として政党が「優先的に当選人となるべき候補者」に順位をつけた名簿を作成する。これを特定枠という。特定枠の候補は、個人名の得票に関係なく、名簿の順に当選が決まる。

2019年の参院選では3つの政党・政治団体から5人が特定枠で立候補し、4人が当選した。これは、合区制度の導入で選挙区から立候補できなくなった候補を比例代表で救済しようという案である。自民党は、特定枠で順位1位に徳島県の三木亨候補、2位に島根県の三浦靖候補が配され、当選した。

しかし、三木は、徳島県知事選立候補のため、2023年1月12日に参院議員を辞職した。そのため、繰り上げ当選したのは、北海道を拠点とする田中昌史であり、特定枠の救済措置とは無関係になってしまった。

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■解決策

そこで、解決策として、幾つかの案が考えられる。

一つは、どんなに人口が少ない県でも1人は選出できるようにする。そうすると、一票の格差を生まないためには、東京のように人口の多い選挙区の定員を大幅に増やす必要がある。現在248人の参議院議員の数を増やすことになる。

議員一人当たりの人口は、日本は17万7千人であり、61万9千人のアメリカを除けば、先進民主主義国の中でも議員数は少ない。ドイツが12万6千人、カナダが8万5千人、フランスは7万1千人、イタリアは6万4千人、イギリスは4万7千人である。今の2倍になってもイギリスフランスよりも少ない。しかし、議員数を増やすことについては、国民の反対が強い。

第二は、人口にかかわらず各州議員が2人としているアメリカの上院のように、日本も各都道府県2人、つまり94人とする案である。これを採用するには憲法改正が必要である。

第三は、47都道府県を解消して、道州制日本の形を変える案である。たとえば、九州・沖縄、四国、中国、関西、中部、関東、東北、北海道というような大きなブロックで行政単位をまとめ、ドイツのような連邦国家にする案である。

以上のような抜本的解決策を考えねばならない時期に来ている。

 

■執筆者プロフィール

舛添要一

Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。

今週は、「参議院の合区」をテーマにお届けしました。

参議院の合区はこのままでよいのか? 問題を解消する「3つの解決策」