メジャー挑戦を表明した上沢は、「後悔したくないという思いが強かった」と語った(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 日本ハム上沢直之10月28日ポスティングシステムを利用してメジャーリーグに挑戦することを表明する記者会見を開いた。「後悔したくないという思いが強かった。挑戦したい気持ちが強かった」とメジャーへの強い思いを口にした。

 上沢は今季24試合に登板し、9勝9敗、防御率2・96の成績を残した。投球回170イニングはリーグトップ。無事にメジャー契約を手にすることができれば、「イニングイーター」として中堅球団の先発4、5番手を任されることもありそうだ。もしくは上位球団であれば、イニングをまたいで試合中盤を支える「モップアップ」の役割を与えられるかもしれない。

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 このオフは山本由伸オリックス)、今永昇太DeNA)、そして既に海外フリーエージェント(FA)権の行使を球団側に伝えた松井裕樹(楽天)と、上沢を含めて4投手がメジャー挑戦する可能性がある。とりわけ山本はトップ級の評価を与えられており、米メディアでは契約総額が2億ドル(約300億円)を上回るのでは、とも予想されている。対して上沢の現時点での評価は、4投手の中では最も低いと言わざるを得ない状況だ。

 焦点は、メジャー契約を手にすることができるかどうか。また、その場合にはどんなロール(役割)を念頭に置いた契約になるか。上沢自身はメジャーへの強い思いの裏付けとして、仮にマイナー契約となったとしても海を渡る覚悟を口にしている。

 では近年、マイナー契約からメジャー昇格を勝ち取った例はどんなものがあるのだろうか。

 決して楽な道ではないが、前例は限られるわけではない。投手では2009年オフに当時巨人の高橋尚成が海外FA権を行使。2010年2月にメッツとマイナー契約を結んだ。招待選手として参加したキャンプオープン戦で好結果を残し開幕メジャーを得ると、先発、中継ぎ、時には抑えとフル回転。53試合で12先発し、10勝6敗、8セーブ3ホールド防御率3・61とフル回転の働きをみせた。

 その前年に、広島の高橋建は海外FA宣言し、ブルージェイズとマイナー契約。オープン戦で結果が出ずに解雇されたが、その後にメッツとマイナー契約を結び、4月下旬にメジャー昇格を果たした。いわゆるモップアップとして28試合に登板し、防御率2・96の好成績を残した。

 桑田真澄は2006年限りで巨人を自由契約となり、パイレーツとマイナー契約を結んだ。オープン戦で好結果を残したが、開幕直前で負傷。それでも解雇されず傘下3Aでプレーを続け、6月にメジャー昇格を果たした。モップアップとして19試合に登板して3ホールドをマークした。

 他にもドジャースとのマイナー契約からメジャー屈指のクローザーへ駆け上がった斎藤隆など、「ハンバーガーリーグ」と呼ばれる厳しい環境からはい上がった日本人投手は数多い。野手に比べれば救援など役割が分散し頭数が必要な投手は、よりチャンスをつかみやすい環境かもしれない。

 もちろんメジャー契約を手にできればそれにこしたことはない。そして、本人が口にしたように仮にマイナー契約や、メジャーとのスプリット契約になろうとも、努力で道を切り開いてきた歴史と伝統が、日本人投手には受け継がれてきている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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