亀梨和也が主演を務めるサスペンス映画『怪物の木こり』(12月1日公開)がスペインシッチェスで行われた「第56回シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭」(10月5日〜15日開催)に出品され、亀梨が三池崇史監督と共にスペインへと出発。初めてのシッチェス映画祭のレッドカーペット、初めてのサグラダ・ファミリア、地元で食べるスペイン料理など、亀梨にとって初体験尽くしとなった渡航だが、緊張のなか行われたワールドプレミアは、上映中にも拍手喝采が起きる熱気にあふれた特別なひと時となった。そこでMOVIE WALKER PRESSでは、「今回の旅を通して、力をもらいました」とたっぷりとエネルギーを注入した亀梨のスペイン旅に密着!ハプニングも笑顔で吹き飛ばした、濃厚な3日間の様子をご紹介する。

【写真を見る】『怪物の木こり』の亀梨和也。初のスペイン訪問の裏側を、たっぷりの写真と共にお届け!

■到着するなり、まさかのハプニング!亀梨のポジティブ思考に渡航チームも笑顔

同作が出品されたシッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭は、スペイン北東部に位置する海辺のリゾート地、シッチェスで毎年10月に開催される、国際映画製作者連盟(FIAPF)公認の国際映画祭。ベルギーのブリュッセル・ファンタスティック国際映画祭、ポルトガルポルト国際映画祭と並ぶ世界三大ファンタスティック映画祭の一つで、例年300本近い作品が上映される。

亀梨は、現地時間10月11日の昼にバルセロナ国際空港に三池監督と共に到着。しかし待てども、亀梨の衣装一式を詰め込んだスーツケースが出てこず、まさかのロストゲージ!荷物の行方は、まったくわからないという。さっそくのハプニングに「どうしよう…」と青ざめる一行だったが、ここでポジティブさを発揮したのが座長の亀梨。「よし!これから買いに行こう!」と長時間フライトの疲れをまったく感じさせないさわやかな笑顔で即決し、これには緊張がほどけたスタッフ陣も大笑い。一気にチームが一体化したようでもあり、亀梨の柔軟性、トラブルとも思える出来事も楽しく乗り切ろうとする姿に、最高の旅になる予感がした。

この日はバルセロナ中心地のショップを巡り、買い物をしたのちに30分ほど車を走らせて、映画祭の開催地であるシッチェスにたどり着いた亀梨。そのころにはすっかりと日が落ち、「まだ日中のシッチェスの街並みを見ることができていない」と苦笑い。三池監督ら渡航チームみんなでディナーへと出かけ、とりわけ思い出深かったのは「一発目に食べたタコ」とのこと。「ずっとショッピングをしていて、すごくお腹が空いていたのでたまらなくおいしかったです」と目尻を下げながら、「たっぷりとしたオイルで煮込んでいて、柔らかかった。ワインもおいしかったですね」とシッチェスのシーフードが疲れを癒してくれた様子。レストランからホテルまでの道中、夜の地中海や、月の輝き、映画祭仕様の飾りをじっくりと眺め「すごくきれい」とうっとりとしつつ、怒涛の1日目を終えた。

未完成サグラダ・ファミリアに感動「圧巻です」

現地時間10月12日。旅の2日目は、まずシッチェスの旧市街や海岸沿いを散策。10月のシッチェスは1年のうちで最も過ごしやすい時期とも言われ、日中はまだ海水浴が楽しめるほど暑くなりつつ、夕方には涼やかな風が吹き抜ける心地よい気候だ。

コバルトブルーの海と緑豊かな山に囲まれたシッチェスは、大人のリゾート地といった雰囲気たっぷり。咲き誇る色とりどりの花々も、実に美しい。キラキラとした日差しを浴びた亀梨が「太陽もきれいに上がっていて、街をめぐるのが楽しみです」と語るなか、何度もシッチェスを訪れている三池監督は「観光地なんだけれど、地元の人たちが本当に温かい。“シッチェスに入れば、みんなシッチェスの人になる”みたいな街で、リラックスできるんですよ」と懐の深さに触れ、「日差しもきれいで、人間のおおらかさや強さを感じる街。そんな場所でファンタ映画祭をやって、ホラーやスプラッターをみんなで一緒になって観るという、ギャップが楽しい」とニヤリ

亀梨は「いまなかなか激しめのスケジュールのなかで生きているので、映画祭という刺激的な時間と、こうして街の空気を感じられる時間はご褒美のよう。贅沢に楽しみたい。細胞がうずいています」とワクワクとしていた。また三池監督と亀梨がホテルを出る際には、ファンからサインや撮影を求める声が次々と上がっており、熱心に応えていた亀梨は「僕は初めてのスペインなんですが、歓迎してもらっているようでうれしい」と喜んでいた。

シッチェス映画祭の期間は、街中に映画祭のフラッグやロゴが飾られ、海沿いには映画祭グッズを販売するショップ、ホラーTシャツショップ、フードトラックがズラリと並ぶ。映画祭一色となった街には、ゾンビメイクをした人たちがゾンビになりきって歩きまわるなど、三池監督の言葉どおり、リゾート地と“ファンタ野郎”の融合がたまらなく魅力的だ。

旧市街へと足を踏み入れると、教会や石畳の路地、白い壁のアートギャラリーなど、歴史を感じられる趣があり、亀梨も「YouTubeでシッチェスの街並みをチェックして、楽しみにして来たんです。まさにいま、そこに入り込んでいるんですね。どこを切り取っても絵になるよう」と街の美しさを噛み締めた。

過去に三池監督は、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(17)のロケ地としてシッチェスを選び、その街並みを物語の舞台となる杜王町に変身させたこともある。劇中で仗助(山崎賢人)の祖父(國村隼)が働く交番の撮影スポットとして使われたお店の向かいには今年、映画祭のスケジュールが掲示されていた。三池監督と亀梨は「Lumberjack The Monster」(怪物の木こり)のタイトルを見つけ、笑顔を見せていた。

その後は一度、三池監督と別れ、亀梨は世界有数の観光地であるバルセロナへとGO。建築家アントニ・ガウディの最高傑作と呼ばれ、世界遺産にも登録されている大聖堂、サグラダ・ファミリアを訪問した。バルセロナの街中にドン!と佇むサグラダ・ファミリアの存在感に、亀梨は「すごい迫力!圧巻です。こんなに大きいんだ…!」と驚愕。

1882年に着工され、長らく「未完の聖堂」とされてきたサグラダ・ファミリアだが、いよいよ完成の時期が近づいていると言われている。亀梨は「彫刻技術も、細部まで緻密にこだわり抜かれている」と感嘆しながら、「僕も今年、“未完成”をテーマにライブでソロ曲をやらせていただいて。未完成のうちにサグラダ・ファミリアを見られてうれしいです。この機会を逃したら、建築途中は一生見られないわけですから。また『怪物の木こり』は、過去、現在、未来という時間がテーマの一つになっています。140年以上も建築が続いているサグラダ・ファミリアも、表側と裏側ではまったく違う顔を見せたり、いろいろな時間軸を感じられる建物」としみじみ。内部まで時間をかけてまわり、ガウディ建築、そしてそのメッセージを受け継いだ職人の技術や歴史をかぎ取った。そしてなんと、入り口の柱を土台として支えているのは、亀の彫刻。それを見つけた亀梨は「亀、ここにいた!」と微笑むひと幕もあった。

昼食は、レストラン「Lomo Alto」の提供するヨーロッパ産のお肉料理だ。お店のオススメはレアとのことで、鮮やかな赤身、肉汁に「おいしいそう。いい香り!」と見惚れながら、いざ実食。亀梨は「うーん!」と思わず声をもらしながら、「Bueno(おいしい)!まさに怪物級のうまさ!」と頬を緩めた。続いても、お肉を味わうことに。生ハム専門店「PERNIL 181」で、お肉の切り出し体験にトライした。

お肉の塊が連なる様子は圧巻で、亀梨は「すごい!こういうお店は初めて。東京にこんなお店があったら、友だちが家に来るたびに買いに来たくなる」と吐露。「基本、自炊をしている」という亀梨は包丁さばきも華麗で、生ハムホルダーに設置された肉塊から、丁寧に1枚1枚、ハムを切りだした。分厚く切ってしまった1枚目は、自分でパクリ。お茶目な表情を見せたあとは見事に薄くスライスしてみせて、「上手!」と称えた店主と、息ぴったりにグータッチ。亀梨は同行スタッフ全員に自分で切ったハムを振る舞い、「家にこれ(生ハムホルダー)とお酒があったら、永遠にキッチンにいられる」と語っていた。

スペインの食、建築物を堪能した亀梨。いよいよ明日は、『怪物の木こり』のワールドプレミアが行われる。三池監督から「作品がつまらないと帰ってしまう人もいる」と聞きつけ、「怖いな」とこぼしつつも、亀梨は「映画祭の空気感を存分に味わいたいですね。この作品と三池監督に、せっかく連れてきていただいた舞台。たくさんの方に、本作の印象を残してもらいたい。ワクワクドキドキしています」と気持ちを高ぶらせていた。

■ワールドプレミアは拍手喝采!

現地時間10月13日。ついに迎えた本作の世界初お披露目、ワールドプレミア当日だ。同映画祭で本作は、世界中から選りすぐりのスリラー、サスペンス、アクションなどの作品がセレクトされるオービタ部門と、アジアの新作のショーケースであるフォーカス・アジアの2部門で出品。オービタ部門ではクロージング作品として上映された。

2019年の第17回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作を実写映画化した本作。凶器の斧で脳を奪い去る連続猟奇殺人事件が発生し、次のターゲットとしてねらわれたのは、弁護士の二宮彰(亀梨)だったが、彼は犯人をも凌駕する狂気のサイコパスだった。追う者と追われる者がどんどん入れ替わり、先読み不可能なストーリーが展開する。『十三人の刺客』(10)では観客賞を受賞するなど同映画祭の常連で、シッチェスでも絶大な人気を誇る“バイオレンスの巨匠”三池監督の最新作とあって、本作のワールドプレミアのチケットは1200席が即日完売となっている。

この日は、地中海を背景とした映画祭主催のフォトコールからスタート。会場で宣伝スタッフが本作のフライヤーを配ると、マスコミ勢から「私もほしい!」「こっちも!」と次々手が伸びるなど作品への注目度の高さを伺わせるなか、三池監督と亀梨が到着。ちなみにロストゲージとなっていたスーツケースは無事に見つかり、この日亀梨は、フォトコールと記者会見にはそれぞれ事前に準備した衣装で。そしてワールドプレミアにはスペインで用意した衣装で参加した。三池監督がジャケットを脱ぎ背中に「シッチェス」とカタカナで描かれたTシャツを見せつけると、亀梨もジャケットをバッと翻してみせて会場の笑いを誘っていた。

記者会見では、MCから「亀梨さんは、シッチェス映画祭に初めて来られました。今回が最後ではないことを望んでいます」と歓迎された亀梨。「Bon dia(こんにちは)」と笑顔で切りだし、「Mucho gusto. Me llamo Kazuya Kamenashi(はじめまして。私は亀梨和也です)」と自己紹介。三池監督との初タッグへの充実度と共に、「次回またご一緒させていただける機会があるのであれば、もっと激しい、シッチェスの皆さんが好きなものを存分に詰め込んだ作品で戻って来られたら光栄です。そのためにもしっかりと準備をしたいと思います。『ハアー!』って」と両手を顔近くに添えながら、怪物やゾンビを思わせるポーズを披露して、記者を沸かせた。

19時からは、レッドカーペットを闊歩。ファンからサインや写真撮影を求める声が殺到するなか、スペインの地で歩くレッドカーペットに、亀梨は「こういった雰囲気を味わえるのは本当に貴重なことですし、ますます上映が楽しみですね」と興奮しきり。プレミア上映の会場となった「Melia Sitges Main Auditorium」は、三池監督&亀梨のタッグによる最新作を待ち望む熱気でムンムンだ。2人が登場するや黄色い声や指笛、無数の拍手が上がり、亀梨は「ワールドプレミアとして、この場に立たせていただいていることを光栄に思います。皆さんぜひ楽しんでください!Gracias!(ありがとう)」と大きな笑顔を見せ、ガッツポーツを掲げて盛り上がる観客と一緒にフォトセッション。2人は、そのまま会場で上映を鑑賞した。

上映前に「ドキドキしますし、ちょっとそわそわもします」とリアクションを心配していた亀梨だが、いざ上映が始まるや、冒頭の血しぶき飛び散るシーンから拍手喝采の大フィーバー。海外映画祭のスクリーンに、亀梨演じるサイコパス=二宮の美しくも妖しい笑顔がアップで映しだされる様子も震えるような迫力があり、二宮が変貌していく姿に観客も目を輝かせて見入っていた。二転三転するストーリー展開ののち、意外な結末へとなだれ込む本作だが、クライマックスでは「ワオ…」という驚きと共に拍手が上がり、上映後には万雷の拍手を浴びた三池監督と亀梨。舞台挨拶は「緊張した」という亀梨だが、上映中の観客の反応には「鳥肌が立った」とも打ち明けた。

情熱の国スペインを訪れ、パワフルなシッチェスの観客、そして三池監督からもたっぷりと前向きな力をもらい、宝物となるような3日間を終えた亀梨は「3日間、天気にも恵まれて最高でした」と充実感いっぱい。

「ずっと亀梨さんのことが大好きなんです!」と勉強した日本語で熱烈なラブコールを送ったファンを含め、あちこちでサインや写真撮影を求める声が殺到するなど、海外での人気の高さも証明したが、三池監督が「スターですから」と楽しそうに話すなか、亀梨は一人一人と目を合わせて、紳士的かつ温かな笑顔でファンサービスに専念していた。弾丸スケジュールとなりながらも、誠実な亀梨の人柄が渡航チームの士気を高めていたことも印象的。亀梨は「またこういった映画祭に呼んでもらえるような自分になっていきたい、なっていこうと心に決めました。力をもらいましたし、監督がここで皆さんに歓迎されている姿を見させてもらい、まだまだ自分がやるべきことがあるなと改めて感じさせてもらいました」、さらに「シッチェスで感じたお客さんの熱量をエネルギーに、公開まではもちろん、公開後も駆け抜けていきたい」と力強く宣言していた。

取材・文/成田おり枝

亀梨和也がバルセロナでお肉料理に舌鼓!濃厚なスペイン旅の裏側に密着