超特急(撮影=深野輝美)

 年末に東阪アリーナツアーを控える9人組ダンス&ボーカルグループの超特急が29日、ダイバーシティ東京プラザ2F フェスティバル広場でフリーライブイベント『お試し超特急』を開催した。

 新メンバー4名を迎えて1年が経った今、8号車と呼ばれるファンに友達や家族を誘ってもらい、超特急のライブを無料で“お試し”してほしい。そして超特急の輪を広げてほしいと、10月8日の大阪・ららぽーと堺を皮切りに、東名阪ショッピングセンターで行われた『お試し超特急』だが、リリースに関わらない完全なフリーライブは超特急史上初の試み。最終日となったこの日は、なんと1万人を動員し、スペシャルなサプライズを盛り込んだステージで、集まった現在と未来の8号車に超特急の魅力を全力でアピールしてみせた。

 開演時間は11時にもかかわらず、観覧エリアには早朝からオーディエンスが鈴なりに。8時半には公開リハーサルが告知なしのゲリラで行われ、ハロウィンにちなんで『スマッシュブラザーズ』のキャラに仮装した9人の登場に大歓声が湧き上がる。ポケモン好きで知られるカイは顔まで黄色く塗ってピカチュウなりきり、その虚無顔が巨大モニターに大映しになると場は騒然。対照的にピーチ姫に扮したタカシには“可愛い~!”の声があがり、スタイルの良すぎるドンキーコングと化したリョウガは野生の雄叫びで爆笑をかっさらった。タクヤに至っては「ヨッシーの姿で携帯いじんないで」と突っ込まれつつ、カオスな状態で始まった「My Buddy」では、キュートなダンスを決める9人にオーディエンスは歓喜。掌をすり合わせる振りを一斉に繰り出す観覧エリアに、マリオ役のユーキは「見えてますよ!」と笑顔を向ける一方、アロハはリンクの盾と剣を持ったままドンキーコングを追いかけるのだから、もう目がいくつあっても足りない。「どーも、クッパです!」とシューヤが口火を切った挨拶でも、最年少のハルが「おはようございます!」と声までキノピオになりきったり、ネスの格好で半袖半ズボンにバットを持ったマサヒロが、本番を待つ観客に「誰よりも寒い格好してるから、安心して待ってて!」と微笑んだり。肌寒い中、早朝から集まった人々を、この日だけのスペシャルパフォーマンスで心から温めた。

超特急(撮影=深野輝美)

 そして11時。超特急のライブではおなじみの発車ベルが鳴り、最新アルバムのリード曲で超特急の最新の“COOL”を体現した「MORA MORA」からライブはスタート。屋外の曇天の下、普段のアリーナ級ライブに比べると、格段に間近で目撃できるパフォーマンスはしなやかで、細かいキメやダンスのシンクロ具合がよくわかる。代わる代わるセンターを取るダンサー5人の躍動感は迫力満点で、その挑発的な動きとセクシーな表情に観覧エリアからは思わず感嘆の声が。続いて、2011年の結成当初から大人びた空気を振りまいていた「No.1」で8号車の手慣れたコールが入ると、メンバーの顔にふわりと笑みが広がり、間奏でのソロダンスを筆頭におのおのの個性が滲みだす。タカシ&シューヤのツインボーカルもフェイクや歪みを自在に取り込み、歌うシューヤの肩をタクヤが抱いたりと、心のままに動き、歌うパフォーマンスは実に魅惑的。衣装プロデュースを担当するカイいわく「初めての人でもわかりやすいように、それぞれのイメージカラーと個性を落とし込んだ」という装いに身を包み、グループとしての確かな進化を証明してみせる。

 さらに「もっともっと魅了します」とタクヤが告げて始まったのは、9月に配信リリースしたばかりの最新曲「LESSONⅡ」。歌劇『カルメン』の名曲「ハバネラ」をモチーフに“禁断の愛” と“人の性”を表現する挑戦的なダンスナンバーで、センターのタクヤを操るように、はたまた彼に操られるように舞うメンバーの動きはマリオネットめいて、手や指の細かい動きにまで釘付けになる。シンフォニックな要素の強いトラックと相まって、妖しくもファンタジックな世界観を創り上げていくが、最後に見返るタクヤの決めるピースが超特急ポーズにも通じているのがニクい。

 序盤からクール&セクシーな超特急を見せつけながら、しかし“カッコいい”だけではないのが彼らの最大の特色。「それぞれのキャラクターがわかる企画を持ってきました」(リョウガ)と、来場者から募った各メンバーの推しポイントや質問に答える企画“教えて超特急”では、タクヤから「『ワンパンマン』が好きなので、(女の子の仮装には)タツマキちゃんやってほしい!」という発言も飛び出した。また、胸キュン言葉をリクエストされたタカシが「お帰り! パスタ作ったで!」と料理上手らしい返しをしたり、はたまた“自分を動物に例えるなら?”と問われたアロハがでんぐり返しをして「アルマジロです!」と微笑んだりと、超レアな場面も。シューヤとハルが“朝、起きて最初にしたことは?”と、同じ質問を引きあてる奇跡を起こせば、不思議ちゃんキャラが定着しつつあるマサヒロは“なぜ、その画像を選んだのですか?”という謎すぎる質問を引いて、「ファンは推しに似るんですね」と納得されていた。

超特急(撮影=深野輝美)

 中身も多彩なメンバーカラーで楽しませてからは、さらに「最終日なんで、次の1曲撮ってもらいたい」と、なんと「Kiss Me Baby」の撮影許可が。ライブではおなじみの鉄板曲で、9人はスマホを構えるオーディエンスを余裕綽々で誘惑し、ユーキに至ってはバク転から笑顔で投げキスをカマすのだから恐れ入る。しかし「撮影終了~! もう撮るんじゃねぇ! こっからは声出していくぞ!」とリョウガが声を張り上げるや、超特急のエキセントリック煮凝りにした「超えてアバンチュール」で大爆発。はるか後方からも飛んでくる8号車の掛け声、炸裂する変顔、平均年齢26歳とは思えないほど高いジャンプと、ファンと一体になって振り切ったパフォーマンスは、まさしく“お試し”乗車の人々を驚かせたに違いない。その勢いに乗って「ここにいるみんなで一緒に歌いませんか?」とシューヤがコール&レスポンスを誘い、ハルは「超特急大好きですか!?」と煽ってラストナンバー「fanfare」が始まった瞬間、雲間から太陽の光が。眩しい陽光の下で響き渡るオーディエンスの大合唱、あふれる笑顔に快活なダンス、そして互いが自由にたどるラインが極上のハーモニーを生むタカシとシューヤのツインボーカルが鳴らす“fanfare”は、あまりにも感動的なものだった。

超特急(撮影=深野輝美)

 通行人にまで「超特急と申します!」と熱烈アピールして、リーダーらしい責任感をリョウガが覗かせれば、ライブの演出も担うユーキも「普段はできなかったライブが実現して、本当に嬉しかった。路上ライブをやっていた初心を思い出せました」と感無量げ。「メッチャいい天気やな! ありがとう!」とタカシが残したように、早朝の雨空から見事に晴れ渡った空は年末のアリーナ公演、さらに、その先へとつながる彼らの未来を明るく照らし出していくだろう。【文:清水素子】

セットリスト

リハーサル:My Buddy

M1:MORA MORA
M2:No.1
M3:Lesson Ⅱ
M4Kiss Me Baby
M5:超えてアバンチュール
M6:fanfare