日常生活と深い関わりを持つSNS。便利ではありますが、利用の仕方次第で「誹謗中傷」や「いじめ」の被害に遭う可能性もあります。もし、わが子がSNS上のトラブルに巻き込まれたら、保護者はどう対処すればよいのでしょうか。自身も1児の母であり、出産・子育てに関わる法律問題に詳しい弁護士・高橋麻理氏の著書『子育て六法』(日東書院本社)より、一部抜粋してご紹介します。

SNSで「誹謗中傷」に遭っているときの対処法

もし、子どもがSNSで誹謗中傷を受けている場合、事情によって相談すべき窓口は変わってきます。

まず、SNS上で身の危険を感じるような脅迫を受けているのであれば、速やかに警察署に相談する必要があります。

これに対し、SNS上で侮辱されたり、社会的評価を低下させられるようなことを言われているのであれば、警察署に相談して刑事処罰を求めることが考えられます。また、弁護士に相談し、相手を特定の上で慰謝料等を請求することも考えられます。

その場合、何をもって「侮辱」等と評価されるかは難しい判断になるので、実際の投稿を見せながら相談するのがよいでしょう。相談の前提として、相手を特定するために必要な情報が消えてしまうリスクがありますので、被害に気付いたら、早めに相談する必要があります。

それに加えて、適切な証拠確保も重要です。投稿のURLやスクリーンショットの確保等が考えられますが、個別事案によって必要な証拠が異なる場合もあるので、早めに、どのような証拠を確保すべきかを含めて相談するのが確実だと思います。

警察署や弁護士以外の相談窓口として、総務省の「違法・有害情報相談センター」や法務省の「みんなの人権110番」もあり、投稿を削除するための方法をアドバイスしてくれます。また、法務局においては、削除の要請自体をしてくれる場合があります。

そのような対処と併せて、どんな経緯で誹謗中傷被害に遭ったのか、改めて見直してみることも重要です。何の落ち度もなく理不尽な被害に遭ったのかもしれませんし、SNS上での子ども本人の発言がきっかけになっているのかもしれません。

もちろん、どんな事情があっても誹謗中傷を正当化することにはなりませんが、未然にトラブルを予防できるに越したことはないはずです。SNS上での発信の在り方について、家庭で話し合い、今後の被害予防につなげるということも大事になってくると思います。

SNS上で「いじめ」の被害に遭っているときの対処法

無料通話(チャット)アプリも、利用法によっては心身の苦痛を感じさせることはありますから、これを使った言動がいじめにあたる場合があります。

最近では、この「SNSいじめ」の被害が増えているといいます。たとえば、グループ内で一人に対しその他メンバー全員が暴言といえるようなメッセージを送ったり、理由もなくグループを強制的に退会させたり、同じメンバーで別グループを作り、そこに一人だけ入れずにその一人の悪口を言い合う等の態様でいじめが行われることがあります。

このようなSNSいじめには、次のような特徴があります。

1. 外から見えにくく、発覚しにくい

2. いじめの対象となる子の様子がダイレクトに見えないことから、いじめる側が罪悪感を抱きにくい

3. 文字による言葉の受けとめ方は、受け手の性格、そのときの状態によって左右され、言葉を投げかけた側の意図を超えて深刻な傷を負わせることもあり得る

もしかしたら、相手の顔が見えないぶん、リアルな場で行われるいじめ以上に深刻な事態になるかもしれません。

このようなSNSいじめについても、いじめた側には法的な責任が生じ得ます。発言やそのグループの規模によっては、名誉毀損罪侮辱罪等に該当する可能性がありますし、相手の心を傷つけた行為については、民法に基づき慰謝料の支払義務を負う場合もあり得ます。

学校に、アンケート調査等の対応を求めたり、弁護士への相談を検討したりしてもよいかもしれません。

ただ、いじめであるという証明が難しいケースも多いと思われるので、何が起きているのか、事実を正確に証拠化しておくことが大切です。無料通話アプリ内でのやりとりは、後に削除されてしまう可能性もあるため、スクリーンショット画像を保存しておくとよいでしょう。その際は、該当コメントだけでなく、全体の流れが把握できるように、日時も含めてスクリーンショットを撮影して保存しておくのがよいと思います。

高橋 麻理

弁護士法人Authense法律事務所

弁護士

(※写真はイメージです/PIXTA)