たかがイベント、されどイベントだ。ボクシング界の現役ヘビー級王者に対して、一部の識者から厳しい声が飛んでいる。
注目を集めたのは、現地10月28日にサウジアラビア・リヤドで実施されたWBC世界同級王者のタイソン・フューリー(英国)と元UFC世界同級王者のフランシス・ガヌー(カメルーン)によるボクシングのヘビー級10回戦だ。
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戦前の下馬評は現役王者でもあるフューリーを有利と見る向きが強かった。しかし、元世界ヘビー級王者マイク・タイソンの指導も受けてきたガヌーが予想を上回る奮闘を披露。3回にはカウンター気味に鋭い左フックでダウンを奪取し、超満員の会場を熱狂させた。
最終的に判定の末に2-1でフューリーは勝ち名のりを受けた。しかし、試合後には、主導権を握ってみせたガヌーを「勝者」として見るファンが噴出。ジャッジの採点は物議を醸している。
無論、ガヌーの図抜けた身体能力と試合に向けた調整があってこその結果だ。総合格闘家になる以前に、ボクサーとしてのキャリアを歩もうとしていた過去もあり、ボクシングに対する抵抗も少なかったのも要因だろう。
しかし、海外メディアでは、相手のパワーに気圧されたフューリーのパフォーマンスを断じる声が相次いだ。母国紙『The Guardian』は「ガヌーは情熱と目的を持って戦い、王者の威信を傷つけ、そして汚した」と強調。「フューリーは左目の周辺がひどく腫れており、大々的に宣伝されていたオレクサンドル・ウシクとの4団体統一戦の開催すら危うくなっている」と手負いの王者の戦いを辛辣に批判した。
「最終2ラウンドを見守った観客のほとんどが困惑しているように見えた。それほどにフューリーはボロボロなように映っていた。疲れも影響していたのか、彼はペースを握ろうともしなかった。まるで、ジャッジが自分に有利なジャッジを下すと信じているかのように」
そして、同紙は判定について「フューリーの運命は守られていた」と指摘。そして、次のように続けた。
「ボクシングが、いまだ崇高かつ高揚感のあるスポーツであるという考えに固執する純粋主義者やロマンチストたちにとって、この戦いは心を汚されるものとなった。ウシクはフューリーの苦闘を見ながら、大きな励ましを得たことだろう。しかし、リヤドとボクシングに暗い影が差すなか、この一大サーカスがいつ戻ってくるかは不透明だ」
来る12月23日に予定されているWBAスーパー、IBF、WBO世界同級王者オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)との4団体統一戦に向け、フューリーに残された時間はあまり多くはない。稀代のタフガイとして知られる35歳だが、リカバリーは間に合うだろうか。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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