俳優、声優、YouTuberとして幅広いフィールドで活躍中の染谷俊之の魅力に迫るWEBザテレビジョンの連載「月刊染谷WEBマガジン」。毎月、深掘りインタビューを敢行し、仕事の近況からプライベートまで、事務所NGギリギリの質問をぶつけて“染様(染谷俊之の愛称)”を丸裸にします。第23回は、11月5日(日)からBSフジで放送される朗読劇「VOICEアクト『芸人交換日記~イエローハーツの物語~』」について聞きました。

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■240ページもの台本を1日で撮影。「人生で一番多く喋った日でした」

──鈴木おさむさん原作で映画化もされた「芸人交換日記」の朗読劇バージョンとのことですが、改めてどんなストーリーでしょうか?

「イエローハーツ」というお笑いコンビを組んでいる、売れていない芸人2人が交換日記をして現状を打開していこうというお話です。基本的には、僕と(相方役の)横田龍儀くんの2人だけで行う朗読劇なんですが、撮影方法が特殊で、交換日記を受け取ったほうが読んでいるふうに演じて、書いたほうが実際に日記を読むという手法でした。何がたいへんだったかというと、そのボリューム。渡された台本が240ページもあって、それをたった1日で撮影したんですよ。

──240ページを1日で…(絶句)。それは過酷でしたね。

通常、演劇の台本は60ページくらいなので、その4倍のボリュームですね。2人で割っても1人120ページ。その日はこれまでの人生で恐らくいちばん多く喋ったと思います(苦笑)。たいへんでしたが、相手が龍儀だったので楽しく演じられました。

──横田龍儀さんとの関係性は?

昨年、舞台「MANKAI STAGE『A3!』」で初めて共演しました。そのときは2人だけのシーンもけっこうあって、感情がぶつかり合うお芝居をして、すごく素敵な役者さんだなと感じていました。今回も龍儀と一緒だったからこそ(ハードな収録を)乗り切ることができましたし、すごくいい作品に仕上がったと思っています。

──収録を終えて、横田さんとはどんな話をされましたか?

収録の日は午前中にスタジオに入って、終了したのは21時半くらいだったんですけど、その間に休憩もあまりなくて。だから撮り終えたあとは、2人で「本当に俺たちやり切ったね」としみじみ労をねぎらい合いました(笑)。

■売れない芸人の葛藤や挫折に自身の下積み時代を重ね合わせる

──前々回(第21回)のインタビューで、「25歳までに売れなかったら、辞めていた」と語っていました。今回の朗読劇は「売れない芸人の物語」ということで、自身の体験と重なる部分はありましたか?

そうですね。俳優と芸人ということで畑は違うんですけど、重なる部分はけっこうあって感情移入がしやすかったです。芸人さんも星の数ほどいて、売れるのはたったひと握りだけ。その苦労は僕も分かっているつもりなので共感できました。

──印象に残っているシーン、または相方からの言葉はありますか?

ネタバレを避けて話すのは難しいのですが、2人は「売れるためにはどうしたらいいか?」と互いに考えるために、交換日記を始めます。それは僕(の役)からの提案で、相方は当初乗る気じゃなかった。だから僕が熱い気持ちを日記に書いて「どうですか?」と聞いても、龍儀からの返信は「嫌です」のたったひと言だけ。初めはそんなやりとりがしばらく続くので、僕ばかりがセリフが多くて不公平だと思いました(笑)。

──染谷さんは作品や状況によって、演じ方をいろいろ変えていますが、朗読劇を演じるうえで意識することはありますか?

朗読劇はこれまで何度かやらせていただいていますが、やっぱり難しいですね。見ている方にその情景を想像させないといけないので。でも僕ら演者よりも演出家さんのセンスのほうが問われると思っています。朗読劇によってもいろいろあって、例えば、共演者を見て本を読むのか、それとも見ないで読むのか。立って読むのか、それとも座って読むのか。他にも動きを付けて読むのかなど、それぞれ見え方が全然違ってきます。今回に関しては座って読むスタイルだったんですが、監督さんから特に細かな指示はなく、僕らの感性に任せてくださったので、龍儀と2人で気持ちよく演じることができました。

──それでは作品の見どころを教えてください。

本当に素敵なお話です。夢に向かって葛藤する2人の喜びや悲しみ、そして挫折やコンビ愛など、いろいろな要素が詰まった作品になっています。さまざまな感情が入り混じっているので、注目して楽しんでいただけたらうれしいです。

──ちなみに染谷さん自身は、学生時代に交換日記をされた経験はありますか?

ないです。小学生のときに、女子からやろうと誘われたことはありましたが、僕は面倒くさかったのでお断りしてしまいました。その後中学生になると、PHS携帯電話のメールに移行していったので、交換日記の文化は自然となくなっていきましたね。

■12月に開催される「演劇ドラフトグランプリ」のメンバーが決定!

──ここからは前回(第22回)のインタビューに続いて「演劇ドラフトグランプリ2023」(12月5日<火>@日本武道館)について。9月12日ドラフト会議が行われ、メンバーがついに決まりました。糸川耀士郎さん、長妻怜央さん、椎名鯛造さん、鳥越裕貴さんをそれぞれ指名した理由を聞かせてください。

糸川くんは、ずいぶん前に「私のホストちゃん REBORN」(2017年)という舞台で共演したことがあって、今回ドラフトのリストに名前を見つけて、久々に共演したくなり、指名させていただきました。歌がすごくうまい役者さんです。

長妻くんとは共演経験はないんですが、事前に見た自己PR動画がすごくおもしろかったからです。「もし自分を選んでチームが1位を取れなかったら、全力で謝罪します!」みたいなことをアピールしていて、ものすごく純粋でいい子そうだったのでご一緒したいと思いました。

鯛造くんはこれまで何度か共演していて、信頼できる役者さんなので選ばせていただきました。すごく器用な役者さんでアクションが得意。何より人として素晴らしく、いつも現場を盛り上げてくれる心強い存在です。

鳥越くんとはめちゃくちゃ付き合いが長いです。初めて共演したのは僕が23、4の頃で、それより前からお互いの存在は知っていました。それから数年おきに共演しているんですが、ずっと変わらないイメージ。僕の4個下ですが、いつも元気で彼こそムードメーカー的な存在です。

──チーム名は劇団「国士無双」。どんな意味を込めて付けたのでしょうか?

国士無双」とは麻雀の役満(難易度が最も高い役)の1つです。麻雀は同じ牌や連続する数字の牌を組み合わせて、役を作るんですが、「国士無双」だけは特別で、東(トン)、南(ナン)、西(シャー)、北(ペー)、白(ハク)、發(ハツ)、中(チュン)というバラバラの牌を集めないといけないんです。そんな役のように、「バラバラのメンバーが集まってすごいことを成し遂げる」という思いを込めて、メンバーみんなで決めました。

──演劇テーマは「宝箱」に決まりました。最後に「演劇ドラフトグランプリ2023」に向けて、改めて意気込みをお願いします。

今の段階(インタビューは9月下旬に実施)ではどんな作品になるかは未定ですが、このメンバーが集まったことに運命を感じています。ドラフトに参加しなければ実現しなかったですし、もっといえば俳優を志さなければ出会えなかったメンバーです。そんな人たちと一度きりの舞台を行うことはまさに運命なので、もちろんグランプリを獲りたいですけど、それよりも会場や配信で見てくださるみなさんの心を動かす作品を作りたいと思っています。応援よろしくお願いします!

取材・文=河合哲治郎

朗読劇「VOICEアクト『芸人交換日記』」について語る染谷俊之/撮影=岩堀和彦/スタイリスト=岩田友裕/ヘア&メーク=中元美佳