ディズニーランドの人気アトラクション“ホーンテッドマンション”を実写化した映画「ホーンテッドマンション」が10月27日に配信された。同作は9月1日に日本で全国公開され、興行収入21億3233万円、観客動員数144万7735人(10月25日までの期間)を記録。来たる“ハロウィン”や“死者の日”を前祝いで盛り上げるかのように作品は大ヒットしている。実は同アトラクションの実写化は、2004年にもエディ・マーフィ主演の「ホーンテッドマンション」として公開されており、約20年ぶりに新しくなって映画界に帰ってきたのだ。ハロウィンで歓楽街が盛り上がりを見せる中、家でもハロウィン気分を満喫できる今作の魅力をひもとく。(以下、ネタバレを含みます)
【写真】インパクト絶大!「ホーンテッドマンション」に現れる亡霊たち
■個性派キャラが悪霊に立ち向かう
映画の舞台はアメリカ・ニューオーリンズ。シングルマザーのギャビー(ロザリオ・ドーソン)と息子のトラヴィス(チェイス・ディロン)が、死に別れた父親との悲しい過去から新たな人生をスタートさせるため、破格で手に入れた古い豪邸に移り住むところから物語は始まる。2人は、引っ越し初日から豪邸に住み着く幽霊たちによる不可解な現象に悩まされていた。
そんな2人を救うため、ひょんなことから神父のケント(オーウェン・ウィルソン)、超常現象専門家のベン(ラキース・スタンフィールド)、霊媒師のハリエット(ティファニー・ハディッシュ)、歴史学者のブルース(ダニー・デビート)という“クセ強め”な4人が集結。
親子と協力しながら幽霊たちに立ち向かう…という、一見するとよくある「悪霊退散ストーリー」にも思えるが、この物語にはひと味違った「趣旨」を含んでいるのも魅力の一つだ。
■舞台からひもとく“新ホーンテッドマンション”
生と死の共存、舞台となったニューオーリンズの歴史や土地の特徴なども背景に加えて描かれている本作。日本の価値観で“死の世界”をイメージするとどうしても悲哀が先に来てしまうが、ニューオーリンズには死者が天国へ旅立つことを祝福する「ジャズ葬」という伝統的な葬送がある。
また今作の舞台ではないが、メキシコにも死者を偲(しの)び、現実世界に帰ってくる死者に対して感謝の気持ちを忘れずに生きている喜びを祝う「死者の日」があるなど、死=悲しいだけのもの、として扱っていない世界各国の文化的思想も感じ取れる。
中でも印象に残ったシーンとしては、ハリエットとベンの会話で、妻を亡くしたベンに対し彼女は「死者はあの世からサインを送ってくる」と話し、亡き父親が好きだった汽車の音で、今でも時々励ましのサインを送ってくると打ち明ける。短いシーンで明確な言葉はないものの、死者の魂がまるで生存しているようなアプローチにも受け取れた。
また、冒頭ではニューオーリンズの街でベンがゴーストツアーのガイドとして、観光客を引き連れている。調べてみるとどうやらこの土地では、お化け屋敷と呼ばれるような屋敷や心霊スポットを巡る「ゴーストツアー」が盛んのようだ。
さらに、終盤には屋敷の大広間で全員が死後の世界をお祝いし、同時に生の世界も祝福し、亡霊たちと一緒に参加している晩餐会で歌い踊る陽気なシーンも描かれている。
このように、本作を通して生死に対する思想感の違いを学べることができ、新たな世界を知るきっかけにもなる作品だと言えるだろう。
■アトラクションファンにはたまらない小ネタも満載
なんと言っても本作は人気アトラクション“ホーンテッドマンション”の映画化なので、まるでアトラクションにライドしているかのような没入感や仕掛けを純粋に楽しむこともできる。
エディ・マーフィ主演の前作でも、墓地で見事なアカベラを披露する胸像たちや、屋敷の中にある不気味な長い廊下などが登場していたが、本作でも伸びる肖像画の部屋や拳銃の打ち合いをしている亡霊たち、大広間のパイプオルガンから流れてくる不協和音や廊下の壁にずらりとかけられた額縁など、ありとあらゆるところにアトラクションのネタがちりばめられており、再現力の高さがゆえに恐怖よりも楽しさが先にやってくる。
さらに、今作で監督を努めているジャスティン・シミエンはカリフォルニアのディズニーランドでキャストとして働いていたという異色の経歴を持ち、「休憩中にはよく“ホーンテッドマンション”に乗っていた」と、同アトラクション愛を公言していることもあり、まるで屋敷に招かれたような運命に“ゾクッ”としてしまいそうだ。
映画「ホーンテッドマンション」は、ディズニープラスにて見放題独占配信中。
◆文=suzuki
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