アメリカ・カリフォルニア州の水族館で、絶滅危惧種に指定されているコウテイペンギンの卵が孵化し、赤ちゃんが誕生した。
同水族館では実に13年ぶりのコウテイペンギンの孵化ということで、飼育員らも大喜びだ。
今回は親が卵を放棄したため孵卵器による人工孵化だった。生まれる直前、赤ちゃんはなかなか卵の殻を割ることができず、その過程に困難もあったようだが、飼育員らの万全のケアによって元気な赤ちゃんが誕生したという。
現在、水族館ではすくすく成長しているヒナの名前についての投票を開催中だ。
【画像】 13年ぶりに孵化に成功したコウテイペンギンの赤ちゃん
10月25日、カリフォルニア州にあるシーワールド・サンディエゴは13年ぶりに孵化に成功したコウテイペンギンの赤ちゃんをSNSで公開した。
シーワールドの鳥類学芸員ジャスティン・ブラケットさんは、このように語っている。
まだ名前が決まっていませんが、コウテイペンギンのメスの赤ちゃんが先月生まれました。
私たちスタッフは9月7日に孵卵器の中の卵から動きと音を感知しました。
通常、卵の中のヒナは自分で殻を破って出てきますが、5日経ってもヒナが出てこないことに気付きました。
後にチームは、このヒナにはクチバシが変形しており、それが孵化を妨げていることを突き止めました。
そこでスタッフがヒナの誕生の手助けをするため、殻を破ってヒナを取り出しました。
シーワールドが公開した動画には、殻から抜け出そうともがき、失敗し、内膜を通り抜けることしかできなかったヒナの姿が映っている。
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自然界では超過酷なコウテイペンギンの子育て
コウテイペンギンは現存するペンギンのなかで最も大きな種だ。他の種と違い、メスは年に1度だけ卵を産むという。
自然化では卵を産んだメスは体力を回復させるため、すぐに海に戻り、長い時間をかけてエサを摂りに行く。
その間、卵を温め孵化させるのはオスの仕事だ。足の上に卵を乗せて約2か月の間、飲まず食わずで卵を温め続ける(雪を口にすることはあるようだ)。
2か月ほどたってヒナが孵る頃、栄養を蓄えたメスが海から戻って来て、胃に貯めた食べ物をヒナに与える。ここでやっとオスは、自分の食料を得るために海へ戻っていくのだ。
この時点でオスの体重は40%近くも減ってるが、エサがある海への移動に1カ月もかかるため、引き続き空腹を抱えて過ごすことになる。
実はオスの絶食期間は、卵を温める2か月間だけではない。その前後の過程を含めると、合計およそ4カ月もあるという。まず繁殖地への移動で1か月、つがいになって卵の孵化に2か月、再び海への移動に1か月と、ほとんど何も食べない時期がかなりの間続くのだ。
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今回、動物園での孵化ということもあり、壮絶なオスの絶食期間はなかったが、ヒナのクチバシが変形していたことで困難が生じたが、それでもヒナは元気に育っているという。
動画をシェアしたシーワールドは、インスタグラムでこのように綴っている。
エキサイティングかつ、うれしいお知らせがあります!
2010年以来初めて、ここシーワールド・サンディエゴでコウテイペンギンのヒナが孵化しました!
コウテイペンギンは現在、気候変動による南極の海氷の消失と海面上昇のため、絶滅危惧種に指定されています。
西半球でコウテイペンギンが見られる唯一の動物園として、私たちはこの希少で貴重なコウテイペンギンのヒナを分かち合い祝福できることに喜びを感じています。
9月12日に誕生したヒナは、魚と "フィッシュ・ミルクシェイク "の安定した食事を楽しみ、1日に体重は5%から10%の健康的なペースで増えています!
彼女の小さな鳴き声は、すでに私たち飼育チームの心を奪っています。
この子に名前をつけるのを手伝ってみませんか?10月31日までにリンク先から彼女の名前に投票してください!
絶滅危惧種に指定されているコウテイペンギン
シーワールドが述べているように、現在コウテイペンギンは絶滅危惧種に指定されている。
南極の棚氷の減少によりコウテイペンギンの個体数が激減しているからだ。
南極原産であるコウテイペンギンは、繁殖、ヒナの育成、換羽のための生息地として海氷に依存しているが、孵化したばかりのヒナには海で泳いだり生き延びたりするために必要な防水性の羽毛がない。
ペンギンズ・インターナショナルのチーフ・オペレーションズ・オフィサーであるケイティ・プロップは声明で、「地球が温暖化し続けるにつれ海氷の消失が頻繁に起こるようになり、ペンギンの個体数に壊滅的な影響を及ぼしています」と述べている。
それだけに、シーワールドでの13年ぶりのヒナの誕生は大きな前進といえるだろう。
3つの選択肢のなかからヒナの名前が決まる
現在、シーワールドではこのヒナに名前をつけるため、こちらのリンクから一般の人々に「パール」、「パンドラ」、「アストリッド」という3つの候補を挙げて投票を呼びかけている。
シーワールドによると、どの名前もペンギンのヒナにとって特別な意味を持つそうだ。
「パール」は「貴重な」という意味で、苦難の中で形成されたものを象徴しているという。
今回のヒナはその短い生涯で、すでに多くのことに耐えてきた。
両親が卵を温めることを放棄したために、シーワールドのスタッフが卵を孵化させることになったことがまず1つ。
2つ目は、卵が孵化する時期がきたときヒナのくちばしが変形していたために、自力では孵化できなかったこと。
そして、3日かけてシーワールドの従業員たちによって誕生が促されたこと。
さらにその後、孵化に伴う新たな合併症が発生し、ヒナは約1カ月間常に監視されなければならなかったからだ。
この人工孵化が、もうひとつの「パンドラ」という名前の由来となっている。ギリシャ神話のパンドラの箱のことだ。
そして「アストリッド」はコウテイペンギンの生息地である南極の "プリンセス・アストリッド・コースト "から着想を得たという。
3つのうちどれになっても特別なヒナであることは間違いない。なお、名前は11月1日に発表されるということだ。
ちなみに、こちらの動画はシーワールド・サンディエゴで13年前に生まれたコウテイペンギンの赤ちゃんだ。
A month-old, 2-pound emperor penguin gets feeding.
References:Watch rare endangered emperor penguin hatch at SeaWorld, first in 13 years / written by Scarlet / edited by parumo
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