イッセー尾形が、2023年11月25日(土)、26日(日)に、兵庫・神戸朝日ホールで『イッセー尾形一人芝居 in 神戸』を、12月1日(金)~3日(日)に東京・有楽町朝日ホールで『イッセー尾形一人芝居 妄ソー劇場・すぺしゃる vol.5』を行う。

フリーになってから初となる神戸公演と、今年で5年目を迎える有楽町朝日ホールでの公演に向けてのオフィシャルインタビューが到着したので、紹介する。

■オフィシャルインタビュー

ーー2022年12月に有楽町朝日ホールで開催した『イッセー尾形の一人芝居 妄ソー劇場・すぺしゃる Vol.4』は、過去10年の一人芝居からセレクトしたネタをお届けしました。披露していた当時と昨年で、気持ちのなかで変化はありましたか?

最初の頃は、ここを見てほしいみたいなこだわりもあるし、どんな反応が来るかビクビクもんなんですが、時間が経つにつれて豊かになったところや、逆にイマイチだった部分も、慣れてくるといろんな反応があって、どんと来いという気持ちになります。その受け入れ体制ですね(笑)。最近は大阪の公演で新作を披露することが多いんですが、大阪のお客さんはクスクスと笑いそうなところでは反応しない。だから、ネタがよりしごかれますし、全国に持って行ってもそれなりに育ってくれると思っています。

ーー新たなネタを作るうえで、最近気になっていらっしゃることはありますか?

前から惹かれている部分ではあったんですが、都心部と郊外の隙間というか。都市って、守らなければいけないルールや常識みたいなものがいろいろとありますが、郊外にいくと都市部では普通だと思っていたものが通じなかったりする。俺の好きにさせろ、みたいな。人のルールと自分のルールの違いに悩まされるというか、そこに自分の興味があって。いまはルールに厳しい時代でしょ? ただ、それは都会のみかもしれないとか、そういう仮説を立てるんですね。で、郊外は意外と緩くやっているかもしれない。そこも自己判断で、「しなければなりませんね」とか言いながら、金勘定をしたりして(笑)。その区分けがはっきりしない。どこが緩くて、どこがきついのかをやってみないと意味が分からない、みたいな。その辺のところに可能性があるんじゃないかって気がしています。

『イッセー尾形一人芝居 in 神戸』

イッセー尾形一人芝居 in 神戸』

ーー披露する土地によって、リアクションが異なりそうな視点ですね。

そうだと思います。いまはなんとなくルールに厳しい時代のなかで、勝手だとか、自分自身で人の上げ足を取るみたいな表現が多かったりしますけれども、それはどこかで人間らしいというか。緩さ、寛容といった部分への憧れもあると思うんです。それがあるひとつの世界を作るかもしれない。きついが故に、というところに登場人物を立たせたいんです。以前は、ダメな人物も含めて自分の憧れを一人芝居にすることが多かったけれど、いまは僕というよりは時代が憧れる人たちがいるのではなかろうかと。そういう風にシフトしてきていると思います。

ーー一人芝居をずっと続けてこられてきた原動力を教えてください。

どうやって生きているかはもちろんですが、人間を知りたい。人間は何者かであるわけですよ。バーテン、普通のおっさん、小学生を相手にする男……。一人芝居では、この何者かをまずは作りますが、すごく難しくて。これがあれば作れるっていう方程式があったとしたら、もっと早い時期でこの一人芝居は終わってると思うんですよ(笑)。それがないから、続けてられてるのかな。

ーー人への興味、探求心みたいな部分があって、そこからネタを作っていくと。

ただ、僕は心理学者ではなくて役者だから、具体的に表現することが、役者に課せられた義務だと思うんです。漠然としていてはいけない。ネタを作るときは、まず「シャッター街に猿が現れる」みたいな、ひとつのシチュエーションのような文章が思いつくんです。
そこから、商店街にいる店主たちに興味が移っていく。主人公も含めて、みんないびつな性格を持っている、とか。猿が現れたことで、その人物は何をするか、何をどう見るのかっていう風に、人物を落とし込んでいく。どのネタでも、最終的には演じている人物にどう入ってくるかが重要で、昔からそればっかりやってます。そこから、僕が演じるキャラクターがどこに向かってるかをはっきりさせていく。最初から最後まで具体的にはっきりしていないと、お客さんも離れていきますし、「なんだ?」って思っちゃう。具体を見せて、お客さんに渡す。その具体があるから妄想も湧くだろうし、そうしないと何も始まらないですね。

ーー11月25日(土)、26日(日)には、『イッセー尾形一人芝居 in 神戸』を神戸朝日ホールで行いますが、神戸公演はフリーになってから初めてとのことで、どのような公演になりそうですか?

神戸はフリーになってからできた名作をやろうと思っています。今のところ。京都、大阪、神戸は距離的には近いですが、劇場やネタが同じでも初日と千秋楽は全然違う。だから、場所が変わればもっと違うし、お客様の反応を見ていても、そこがもっと見たいんだとか、食らいついてくるんだなとか、これは興味ないんだなとか、微妙に感じますね。神戸は久しぶりですけども、何回かやっていくと、神戸ならではのライブになっていくという気はしています。

『イッセー尾形一人芝居 妄ソー劇場・すぺしゃる vol.5』

イッセー尾形一人芝居 妄ソー劇場・すぺしゃる vol.5』

ーーいっぽう、12月1日(金)~3日(日)に『イッセー尾形一人芝居 妄ソー劇場・すぺしゃる vol.5』を行う、東京・有楽町朝日ホールは、今年で5年目となります。

有楽町朝日ホールでは、ビクビクしながら大阪で初披露したネタを、たくましくなった状態でお見せしたいなと。この公演の中でも育っていくと思うんですけどもね。今年 1 年、何をやったかを全て出します(笑)。一年間の総まとめみたいな意味合いも強いですね。有楽町朝日ホールの公演は、毎年続けてこられて、本当にありがたいです。お客さんが、70過ぎの男の体を見に来たわけじゃないってことはわかるわけですよ(笑)。僕の頭の中を見に来ているんだろうし、それはありがたいことです。東京のど真ん中で、都会と郊外の隙間を埋めようと目論んでいる男がステージに立つ。なんて素晴らしいんでしょうと。大都会で都会は演じませんよ(笑)。贅沢だなと思いますね。

ーーありがとうございます。それでは、最後にファンの皆様にメッセージをお願いいたします。

神戸はここ10年の仕事をピックアップする、有楽町は今年の総まとめ、どちらも集大成なんですが、どこを取っても、イッセー尾形がどこに向かおうとしているかは如実に分かると思うんですね。40年ぐらい前の話ですけども、僕は時代を映す歪んだ鏡って言われたことがあるんですよ(笑)。それはいまだに変わってないと思うんですね。だから未だに、時代というものは映しがいがある、あるいは時代という大きなものは映しても映しきれない。いろんな面を抱えながら、起こり得ること、起こることがないことも抱えて生きている。そのうちのほんの小さなものをネタにして、1時間40分お届けしたいと思います。一を知って十を知るじゃないですが、僕のネタを見て、この時代を想像してほしいです。昔も今も、この10年を想像するのもよし、今年1年を想像するのもよし、それで何か刺激されて、僕のライブが刺激となって、その人たちの時代を想像する、妄想するどっちでもいいですけども、そうしていただけたら、それに越したことはないなと思います。

イッセー尾形