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日本一売れる、まさに「国民車」

人気モデル、それも「日本一売れているクルマ」をフルモデルチェンジするのは、開発者にとって大変な苦労だっただろう。

【画像】新型Nボックス 標準型とカスタム【公道を走る姿】 全35枚

初代から出来の良い軽スーパーハイトワゴンとして人気を集め、軽四輪車では2015年度~2022年度の8年連続、登録車を含めた四輪総合順位でも2021年度~2022年度の2年連続で販売台数の1位を獲得。

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新型ホンダNボックス(1648900円/FF/プラチナホワイトパール)    宮澤佳久

最も最近の2023年度上半期(4〜9月)の登録車を含む新車販売台数でも、1位を獲得している。

いまや「日本の国民車」と呼んでも過言ではないホンダNボックス。その新型の進化ぶりを、公道の試乗で確認してみたい。

軽自動車は全長3400mm×全幅1480mm以下というサイズが決められているから、登録車のようにサイズアップしてデザインを変更、というわけにはいかない。ましてや軽スーパーハイトワゴンは、1.8mくらいの全高と十分な室内空間が求められるから、デザインには限りがある。

それでも新型Nボックスは、いわゆる軽スーパーハイトワゴンのスタイリングを踏襲しながら、ルーフからサイドシルまで、1つの大きな塊で見せる立体的な造形など、歴代のNボックスらしいデザインを進化させた。とくに前後バンパーのコーナー周辺などにボリュームを与えて、とかく平面的になりがちな軽スーパーハイトワゴンらしくないところがいい。

ギラギラ系にしないホンダ流

シンプルで親しみやすい標準車、品格とハイパフォーマンスを感じさせるカスタムの差別化もうまい。

人間の瞳をモチーフにしたヘッドライトの標準車は可愛げのある顔だし、一文字ライトのカスタムは光りものギラギラのオラオラ系ではなく、品を感じさせるのもホンダらしいところか。

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カスタムの後席シート。何度体験しても広さに驚く。スライド量が十分にあるので、乗員のための空間を優先したり、荷室を広くしたり使い勝手がいい。    宮澤佳久

外観をひととおり見渡したところで、乗り込んでみよう。

まずは撮影の関係でリアシートに座る。軽自動車とは思えない驚異的な広さに変わりはない。

リアシートをいちばん後ろにスライドさせると、フロントシートバックに付けられたテーブルに手が届かないほどだ。もちろん、ヘッド&フットスペースは十分以上に広い。

ココは注目 ACC+LKASスイッチ

試乗は、標準車から。パワートレインはノンターボだけの設定で、基本的にキャリーオーバーしているが、シャシーを改善して乗り心地を向上させ、操縦安定性を高めている。

またルーフライニングやフロアカーペットの改良で静粛性も向上させているという。

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(左上)筆者注目のACC+LKASのスイッチ。(下段)左が標準型の前席、右がカスタム・ターボで、ステアリングホイールにシフトパドルが備わる。    宮澤佳久

ドライブモードにはECONが備わるが、ノンターボの標準車ではECONを入れた状態では発進加速や中間加速に物足りなさを感じるときがある。また、夏場はエアコンの効きがセーブされるから、状況に応じて使い分けると良いだろう。

都市高速に入り、流れが安定したところで「ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)」のスイッチをONにする。

新型NボックスではACCをONにすると「LKAS(車線維持支援システム)」も同時にONになる。今まではACCをONにしてからLKASのスイッチを入れる必要があったから、これは便利。他のモデルでも今後採用して欲しいところだ。

逆に、ACCを使用せずにLKASをONにすることはできなくなったが、一般道でLKASを使うことはないから問題ないだろうし、何より扱いやすくなったことが最大のメリットだ。

「軽=ウルサい」は過去のもの?

そのACC+LKASによる高速道路での安定性も進化している。直進安定性も車線キープ力も高められている。

パーキングエリアへの侵入といったタイトなコーナー以外なら旋回性能にも不満はない。

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高速道路の一部区間で最高速度が120km/hになり、ユーザーが求めるレベルが高まったこともフルモデルチェンジの理由と、ホンダは説明している。    宮澤佳久

加速時などでエンジン回転数が極端に上がらない限りは、室内の静粛性に不満はない。「高速道路を走っているとウルサい」という軽自動車のイメージは、もはや過去のものだ。

道路の継ぎ目を乗り越したときのショックなどのいなし方も十分だし、ノンターボでも高速クルージングは快適だ。

ACCを作動して走行中、前にクルマが入ってきたり、またいなくなったときの加減速は従来型よりスムーズ(緩やか)になった。それでも減速に不安を感じさせるレベルではないし、また加速時は少し物足りないかなと思ったらアクセルペダルを踏み増せばいい。

高速道路で光るターボの良さ

標準車に好印象を持ったまま、カスタムのターボに乗り換える。

ブラック基調のインパネに本革巻きステアリングホイールと、なかなかスポーティな雰囲気だ。

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新型Nボックス・カスタム・ターボ・コーディネートスタイル(222万9700円/FF/2トーン/スレートグレーパール )     宮澤佳久

ターボエンジンによる走りっぷりも雰囲気に違わず、街中でも高速道路でも余裕を感じさせる。ECONスイッチをONにしても顕著なパワーダウンは感じない。

パドルによるマニュアルシフトも可能で、7速100km/hのエンジン回転数はSレンジなら3000rpm、Dレンジなら2500rpmくらい。ターボの脈動効果のせいか室内騒音も抑えられており、静粛性はノンターボより高い。

ACC+LKASによる高速走行の安定性はノンターボの標準車と変わらず高レベルで、しかもレーンチェンジなどではアクセルペダルを踏み増さずとも十分に加速してくれる。やはり、高速道路を走行する機会が多いならターボエンジンを選びたくなる。

軽スーパーハイト市場の今後は?

標準車、カスタムとも走りに良い印象を持ったところで、あらためてコクピットまわりを見てみる。

水平基調のインパネの向こうに広がる視界は相変わらず良く、アイポイントも高いので初心者でも運転しやすいだろう。7インチTFT液晶メーターの視認性やインターフェイスの操作性も高い。

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新型Nボックス(1648900円/FF/内装色:グレージュ×グレー)    宮澤佳久

内外装、パワートレイン、安全&快適装備とも、見た目以上に大きく進化した新型Nボックス。軽スーパーハイトワゴンの王座はもちろん、「日本の国民車」の地位も盤石になったように思える。

とはいえ、ダイハツタントを昨年にマイナーチェンジして、バリエーションも拡大し追撃態勢を強化している。

スズキジャパン・モビリティショーに参考出品中の「スペーシア・コンセプト」の市販モデルを、近いうちに発売するのは間違いない。

三菱もデリカ・ミニが好調だし、日産もルークスをマイナーチェンジして内外装をリフレッシュした。

どうやら今後の軽スーパーハイトワゴン市場も、フルモデルチェンジされたNボックスを軸に展開していくことは間違いなさそうだ。


新型Nボックス 進化を1番感じるのは高速道路か ターボ/NAで検証