「金利」を理解すれば、資産の増やし方を自分で考えて決められるようになる、とFPコンシェル株式会社代表取締役でFP兼マネーコンシェルジュである福本眞也氏は言います。福本氏の著書『お金は「金利」で増やすのです』(大和書房)より、一部抜粋して紹介する本連載。今回は、中古マンションの購入を検討する40代夫婦の具体例をもとに、収入や支出を検証し、購入の実現可能性を模索。管理費や返済シミュレーションを通じたリアルな資産形成方法について紹介します。

マンション購入を検討中、貯金800万円の40代

夫Dさん(42歳)、妻Eさん(40歳)、小学校3年生と小学校1年生の4人家族。家賃9万円。世帯年収600万円。貯金800万円。

Q:現在の住まいの近くに4,000万円の中古マンションを見つけたのですが、購入してもいいでしょうか?

〈POINT〉

・管理費・修繕積立金もプラスして考える

・返済のシミュレーションは「固定金利・35年」で!

4人暮らしでの倹約生活

世帯年収が600万円ということですので、社会保険料や所得税、住民税などを控除した手取りは、約460万円になります。

次に毎月の支出を考えましょう。総務省統計局による4人世帯支出は29万円(家賃を除く)ですが、世帯年収が多くない割に貯金されているようですので、平均よりも倹約して暮らしていると仮定して、少なめの約22万円に設定しました。そこに家賃の9万円、子ども2人の習いごと代2万円を足して、毎月の支出は33万円です。年間にすると、(33万円×12ヵ月=)396万円ですね。

手取りが460万円ですから、貯蓄にまわせる金額は(460万円−396万円=)64万円しかありません。毎月5万3,000円程度です。

現実的なマンション購入方法は?

マンションを購入する場合、物件価格だけではなく、管理費と修繕積立金も考慮しなければいけません。仮に住宅ローンの毎月の返済額が現在の家賃と同等の9万円程度だったとしても、それに管理費と修繕積立金がプラスされます。地域によりますが、一般的な金額は月額で2万5,000円以上になります(中古マンションのほうが高くなることもあります)。さらに固定資産税も別途支払わなければなりません。

また、固定金利1.4%で返済期間35年の住宅ローンを借りた場合、毎月の返済額が9万円になる借入額は3,000万円にも届きません。残念ながら、4,000万円の物件は難しいでしょう。

もし4,000万円を借り入れた場合、同じ条件であれば住宅ローンの月返済額は12万1,000円になります。約3万円がプラスになるので、余剰金の額はさらに減って、赤字になります。これまで質素な生活を心がけられているのに、赤字の生活になるのは辛いですね。

変動金利で借りれば、毎月の返済額は下がりますが、2023年以降、金利が上がってくる傾向が強いので、変動金利での借入はおすすめしません。仮に金利が2%になると、4,000万円の借入の場合は返済額が13万3,000円に、3,000万円の借入の場合は返済額が10万円になります(ただし、125%ルールと5年ルールがあるため、この数値は理論値です)。

そのように考えると、現実的には頭金として1,000万円以上貯めるか、予算を下げるしかありません。

また、マンションを購入する場合、不動産仲介業者に対して仲介手数料や住宅ローンの手数料などの諸経費がかかります。中古マンションの場合の目安は物件価格の6〜10%程度。仮に7%だとすると、(4,000万円×7%=)280万円かかります。諸経費分も住宅ローンに組み込めますが、その分、物件価格を下げなければなりません。

マンションはいつが買いどきか

現在はまだ金利が低いため、住宅の需要はかなり高いです。そのため、新築マンションに関して、不動産販売会社や不動産仲介会社は強気の価格で販売しています。販売による粗利は3割ほどあるとも言われています。つまり、原価に30%も上乗せして販売しているわけです。しかし、彼らも借入をして建設していますので、金利が上昇すると利益は減ります。

今後、金利が上がり始めると、マンションの需要は減ってくることが予想されます。すると、マンションが売れなくなるので、もう少し価格が下がってくるでしょう。よほど人気のある地域でない限り、リセール価格として1割から2割ほど下落する傾向があり、日銀の金融政策が転換されるとさらに下落する可能性も高まります。築浅の中古マンションでも、よりお買い得な物件が出てくるように思います。

そういう物件が出てくるのを待ちながら、現在の低金利のメリットを享受できるギリギリのタイミングを見計らうのがいいのではないでしょうか。

日々、物件を探しながら、金利のニュースにアンテナを張っておけば、ベストなタイミングが見えてくるはずですので、そのときのためにできる限り貯蓄を増やすようにされるのがいいのかなと思います。

DさんとEさんの資産形成案の結論

現在の状況では、4,000万円のマンションを購入するのはおすすめしません。予算を3,000万円程度に落としていただき、地域を郊外などに広げて探してみることも検討してください。

その上で、物件の価格が下がってくるタイミングと金利が上がるタイミングを見計らって、購入可能な物件を辛抱強く探すのがいいと思います。

福本 眞也

FPコンシェル株式会社 代表取締役

1級ファイナンシャル・プランニング技能士

画像:PIXTA