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バッテリー容量の低下は年々少なくなっている

執筆/撮影:Kaoru Kobayashi(小林薫)

日産リーフの初期型は2010年に発売され、2011年の秋に購入し乗り始めました。しかしバッテリー劣化による容量低下がすぐに進み、実用に耐えられなくなり、とうとう3台も乗り継いでしまいました。

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3台目となるZE1型の40kWhバッテリーは驚くほど改善されており、6年経った今でも、容量低下をほとんど感じることはありません。おかげでEVのもたらす快適な日常生活が続いており、EVライフを十分にエンジョイできています。

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日産リーフ・甲府市役所の急速充電    小林薫

この6年間、充電時と遠出した時のデータを記録し、バッテリー容量の変化を把握できるようにしてきています。そのデータを使って、3年前の最初の車検時の容量低下ついては、推測値94~95%であったことを報告しています。

3年で24649km使用しての数値としては良好の結果であり、初期型モデルZE0型と比較すると、著しい技術進歩を感じました。推測方法についてはその報告の中で詳しく説明しましたが、特別な測定器を使わずに、下記のような特性を利用したものです。

・自宅での充電時間は、バッテリー容量が減ると充電は早く終わる
・充電完了時の航続可能距離は、バッテリー容量が減ると少なくなる
・実際の走行で消費した電気量からバッテリーの総容量を計算できる

それから3年経ち、同様の方法でバッテリー容量の低下を推測しました。その結果、さらに4%程度の容量低下がみられ、新車からだと90~91%となります。ここまでのリーフの走行距離はそれほど多くなく、6年で約47000kmでした。

5年後となる昨年の推測値は、最初の車検から3%程度の容量低下となっており、記録データを見る限りバッテリー容量の低下は年々少なくなってきています。新品からしばらくは、それなりにバッテリーの劣化は進みますが、徐々にそれも収まるようです。このまま続けば、実用上10年以上の使用も十分可能ではないかと思いました。

また、2年前からあえて急速充電を使うようにしました。自宅近くの市役所と農産物直売所の充電設備を利用し、バッテリー状態の変化を見るためです。しかし、記録データ見ると、バッテリー劣化の進行はここ2年遅くなっており、50kWの急速充電よる影響は見受けられませんでした。この2年間の急速充電回数は49回、自宅などでの普通充電は92回です。

長野県の別所温泉にあった共同利用の充電設備

毎月、甲府から温泉地などの観光スポットへ行っています。リーフの走行データを取るのも一つの目的になっており、今年は秋に松茸で有名な別所温泉へ行ってきました。

別所温泉は甲府から北へ約130kmあります。総走行距離は275km、バッテリーは自宅を95%で出発し、別所温泉で37%から91%まで追加充電、帰宅した時は47%でした。エアコンの使用はほとんどなかったので平均電費は8.8km/kWhとなりました。

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日産リーフ・別所温泉かしわや本店の普通充電    小林薫

宿泊は北向観音堂の近くにある「上松や」で、EV用の充電設備はない宿でした。調べてみると近くの旅館「かしわや本店」にあったので確認の電話をしました。すると、宿の共同利用になっているので、どの旅館に泊っても無料で使用できると聞き、ちょっと驚き!!早速夜間の充電をお願いしました。温泉地でこのようなことは初めてです。

聞くところによると、2015年の国の事業で、別所温泉に3台の200V普通充電設備が設置されたそうです。その後、その1台を「かしわや本店」で運用管理しており、電気代も負担しています。課金システムなどは使わずに、EV普及に少しでも貢献できればと思い、周辺旅館の宿泊客への充電サービスも提供しているとのことでした。EVユーザーにとってはとても嬉しい話で、小粋な「かしわや本店」に感謝です。

BYDのドルフィンへリーフからの乗り換えか?

BYDのEVもいよいよ日本で発売され、9月発売のドルフィンはリーフと同型のハッチバック。日産リーフも3台乗り継ぎ12年、次に乗り換えるEV候補となります。テスラに迫る販売台数のBYDのEVはどうなのか、興味津々で新規オープンまもない甲府店で試乗しました。

現行リーフより優位な点は盛り沢山ありました。
とにかく価格は安い、リーフは値上げしただけにその差は歴然としています。スタンダードモデルは補助金を使うと300万円を切っています。

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BYD甲府店で試乗したドルフィン(スタンダード)    小林薫

バッテリー容量は、リーフと同様に二つのモデルがあり、航続距離は400km/44.9kWhと476km/58.56kWh。スタンダードモデルである44.9kWhの試乗車に乗った時、バッテリーの残量表示68%で走行可能距離は270kmになっていました。40kWhリーフだとほぼ100%の時の表示で、バッテリー容量を比較すると恐るべき航続距離です。

リーフの最大の弱点は、真夏の連続運転に難があることです。しかしBYDのEVにはバッテリーを温度管理する仕組みがあり、夏の高速道路でも安心して乗れそうです。

内装は豪華でサスペンションも柔らか、シートとサイドブレーキは電動となっており、現行リーフより高級感があり完全に勝っています。それに加え、100V外部出力電源オプションがあり価格が4万4000円なのには驚きでした。

しかし、どうしても受け入れられない点もいくつかありました。

ドルフィンの加速はマイルドになっており、それはそれで安定感があり悪くはありません。しかし、それに伴に回生ブレーキの制動力も低くなっており、フットブレーキを多く使うことになります。また、その制動までにわずかなタイムラグがあり、EV特有のレスポンスのいい運転にならない感じがしました。

回生ブレーキが強いと、トンネルの出口などの長い下り坂で、フットブレーキを使わずに下りてくることができます。四方を山で囲まれた山梨では、勾配のある下り坂は多く、とても重要なものです。また、市街地おける交差点などでの停車も、最後にフットブレーキを踏むだけの運転が可能となり、EVによる快適な日常生活となります。

初期型リーフの回生ブレーキも最初は弱く、快適とは言い難いものでした。しかし、4年後に購入したマイナーチェンジした2台目では、強い回生ブレーキとなるBモードが追加され、それからはEV特有のスポーティな運転が出来るようになりました。通常のガソリン車でのエンジンブレーキと同じで、これを多用する人はEVでも強めの回生ブレーキを好むと思います。

もう一つは、地デジやDVDを車内で見ることができないことです。充電待ちなどで欲しい機能で、3台目のリーフではどちらも標準で装備しており、重宝しています。もしHDMIの入力端子でもあれば、チューナープレーヤを別途接続すれば使用できますが、それもありません。大きなディスプレイがあるだけに、とても残念でした。

ドルフィンにはリーフにない優位点が驚くほど多くありました。しかしながら、受け入れられない機能もあり、今時点でドルフィンへは乗り換えないことにしました。

多くの方がドルフィンの購入を検討していると思いますが、回生ブレーキ地デジについて良しとするならとてもお買得なEVとなり、優雅なEVライフをもたらしてくれる魅力あるクルマだと思いました。


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