世の中、学歴ではないといわれて久しいですが、社会人の多くが実感しているのは、なんだかんだいって「学歴はすごく大事」だということ。だから我が子には、少しでも“良い学校”に行くために何でもしてあげたいと思うのでしょう。そんな親の思いから中学受験への関心は高まるばかりです。なかでも東京は「中学受験するのが当たり前」という雰囲気ですが、そこには地域差もあるようです。今回は「東京都市部」に焦点をあて、最新の中学受験事情を紐解いていきます。

東京都の私立中学進学率…区部と市部の格差、歴然

東京都教育委員会『令和5年度公立学校統計調査報告書』によると、令和5年3月に東京都の公立小学校を卒業したのは9万8,518人。そのうち9万6,575人が都内の中学校へ進学をしました。その内訳は、23区が6万2,270人、市部が3万3,661人、郡部・島嶼部が644人。

進学した学校の種別でみていくと、都内公立中学校に進学したのは7万6,611人、都内国立中学校に進学したのは443人、都内私立中学校に進学したのは1万9,521人。昨今、中学受験は一般化しつつありますが、東京では特に私立中学への進学率は高く、東京都全体で19.81%。ただ地域差は大きく、東京都23区に限ると25.00%、市部では10.48%、郡部では3.36%、島嶼部では1.14%となっています。また東京23区のなかでも都心部の私立中学への進学率は凄まじく、トップの「文京区」に至っては49.5%と、児童2人に1人は私立中学に進学しています((関連記事:『東京23区「私立中学進学率」ランキング1~23位…』)。

いわゆる受験格差を生んでいる理由としては、まずは「アクセス」。会社員のように、毎日通勤電車にのって片道1時間、2時間……というのは、どうしても親としても避けたいところ。ある程度許容できる範囲に志望校があればいいですが、私立中学校は東京の区部に集まりがちですから、どうしても受験熱に差が生じます。

そして「親の収入」。東京都令和5年度 都内私立中学校の学費の状況』によると、都内私立中学の初年度納付金は平均98万9,125円。さらに学校外の教育費も合わせると、片働きでは家計は火の車。共働きでないと家計は成り立たなくなります。「お金をそんなにかけて通わせる意味はあるのか……」と思っても仕方がないでしょう。会社員の平均給与分布をみても、高所得世帯は東京都心部に集中。中学受験熱も、都心に近づくほど自然と高くなる傾向にあります。

東京市部の私立中学進学率ランキング…区部平均を大きく上回る第1位は?

しかし、東京市部でも東京区部より私立中進学率が高いエリアはあります。そこで東京市部等の私立中学進学率トップ3をみていきましょう(関連記事:『東京市部&全区市町村「私立中学進学率」ランキング…』)。

3位は「狛江市」。小学校の卒業生545人のうち、104の児童が都内私立中学に進学しました。その割合は18.77%です。狛江市世田谷区に隣接する市で、その中央を小田急小田原線が走ります。「新宿」には電車で20分前後と区部の私立中学への進学を検討しやすい距離感であるうえ、小田急沿線にも私立中学は多く点在しています。また「狛江」駅の2つ隣は、都内でも高級住宅地として知られる「成城学園前」。都内でも教育熱の高いエリアのひとつであり、その影響を大きく受けているエリアだと考えられます。

続いて2位は「三鷹市」で、1,514人の児童が小学校を卒業し、そのうち306人が都内私立中学校に進学しました。その割合は19.84%です。三鷹市杉並区世田谷区に隣接するほか、「三鷹」から「新宿」は電車で20分弱。区部の私立中学への進学も検討しやすい距離感です。市内には「法政大学中学校」「明星学園中学校」の2つの私立中学校があるほか、中央線沿線には、「早稲田実業学校」など、中学受験でも人気の学校も点在。さらに「国際基督教大学」など、多数の教育機関が立地することから、東京市部の中でも教育熱の高いエリアになっています。

そして東京市部等で私立中学進学率が圧倒的に高いのが「武蔵野市」。都内中学校進学者985人のうち、271人が私立中学に進学。その割合は27.32%と、小学校卒業生4人に1人以上が都内私立中学に進学しています。また区部を合わせたランキングでも「武蔵野市」は「江東区」に次いで14位にランクイン。東京62の区市町村のなかでも中学受験熱の高いエリアだといえるでしょう。市の中心となるのは「人気の街ランキング」の常連である「吉祥寺」。駅周辺には大手進学塾が集積し、中学受験に向けた環境は都内でもピカイチだといえます。また中央線で「新宿」にアクセスできるほか、京王線で「渋谷」方面にアクセスできることも、進学の幅を広げているひとつの要因だと考えられます。

さらに自治体ごとに会社員の平均給与を比較してみても、「三鷹市」は東京62区市町村のなかで14位、「武蔵野市」は堂々の9位。都内でも高所得世帯の多いエリアです。やはり私立中学への進学において、重要なのは「親の収入」。東京市部の私立中学進学率のランキングも、納得の結果です。

(※写真はイメージです/PIXTA)